第十四話 雷翼竜戦:第三部
全滅するかと思ったぞ…………あぁ、視点は戻って俺だ。って、誰に話しかけてるんだ?まぁいい。
「生きてるか~?」
「なんとか………」
「まーた消し飛びされるかと思ったぞ」
「生きてまーす…………」
よし、全員無事だな。さて………まだ大暴れしてるあのバカトカゲを全員で殴るか。
「おっし、恨みを込めて総攻撃だ!!」
「「「おー!!」」」
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アオイの砲撃に翼膜を破かれ、ナオキの刺突とダモンの斬撃に鱗を貫かれてもなお暴れることを優先しているライトニングワイバーン。地を這うしかない下等な生物と思っていた者に二度も大地に墜とされ、片目さえも奪われたその翼竜は、己のプライドを傷つけられ、その屈辱から暴れていた。しかし、恐ろしく冷たい殺気に、ただでさえ傷ついた翼膜が破れるのも構わずに反射的に飛び退いた。そしてその判断は正解だったのだろう。
「【悉くを焼き尽くす終炎】」
カッ!………ズッドガァァァォァン!!
美しくも禍々しい、黒き火炎の柱が、数瞬前まで己のいた場所から立ち上っている。
あれはなんなのか、何故恐ろしいのか、何故自分は怯えているのか、何故ヒトごときがあれを放てるのか。今まで感じたことの無い感情に慄き、その感情を己に与えた存在に対して感じたことは、
消さなければ。奴を。我が使命のために。
それは咆哮する。竜の落とし子として、最後まで戦い抜くために。親たる鳴神ノ竜より与えられた使命を果たすために。
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「くっそ、外したか……」
まぁそんな簡単に決着とは行かないよな。
「なにしてんの~?」
「せっかくのチャンスだったんだぞ………?」
やーかましい!当たると思ったんだよ!なんで片目潰れてるのに感知出来るんだ!!殺気まで感知してくるのか!?
「仕切り直しかぁ……カイト君のせいだよ?」
「悪かったな!!」
「あはは……まぁ体力もそろそろ半分ですし、ここを越えれば負けないかと!行きましょう!ナオちゃんも!!」
「よっし、じゃあ気を取り直して行くとしますか、ダモン!!」
「次は当てる!んで、ここまで来たら正面から殴りあってやらぁ!!」
『オオォォォオォォォォ!!』
互いに殺る気は十分。このターンで終わらせる!翼も破れてるから空には逃げられないはずだ!!叩き切ってやる!
「『スラッシュ』!」
ギャリィィン!
『ガァ!』
うおっ!あっぶねぇ、噛みついて来やがった!!
「チッ!弱ってるとは言えやっぱり初期スキルじゃ抜けないか!」
「なにやってんの、『弾種:蒼雷徹甲弾』、『雷爆射』!」
ドン!ドゴォォォォォン!!
『オ゛ァァァ゛ァ゛ァァ!?』
おぉ、あれは邪神の残輝を消し飛ばしたスキルじゃないか。あの時は黒かったが、今は蒼いんだな?と、言うかこいつ邪神の残輝より強いのか。いや、属性の問題か?まぁ良い、俺も属性攻撃するか!
「『邪炎』、『獄炎剣』!」
ザン!ボボウ!!
『ギァァァァァァアァアァァ!!?!?』
「一回攻撃が効かなかったからって、あんまりなめてッと今みたいに痛い目を見るぞ!」
「ではワタクシも……『徹甲突』!」
ガツン!バギィン!
『ギッッッ!?』
「あんまり効いてない……まだまだ届かん………」
「凹んでる場合じゃないよナオちゃん!なんで敵の前でガックリしてんの!?」
「はっ!」
『ギエェェェェ!!』
ビュン!スパァァァァン!!!
「グッハァ!?」
「嶋ちゃん!?嶋ちゃぁぁぁぁぁん!!」
「田嶋くん!?」
「なにしてんだお前ぇぇぇぇ!?」
あの野郎、敵の前で棒立ちして吹っ飛ばされやがった!?いくら効いてないのがショックとはいえそれはアホだろ!死んでないだろうな!?
「んんーー『脱皮』!復☆活!!」
「「黙れ変態!!」」
「嶋ちゃぁぁん!!」
『ギェッ!?』
竜さえ唖然とさせるとか変態過ぎんだろ…………まぁ生きてるなら良いか………?
「とりあえずアホな事はやめて回復しろ!それで死んだらぶっ飛ばすぞ!!」
「グビッ……マッッズ!?」
「田嶋くんが悪いと思うよ………」
「嶋ちゃぁぁぁん!!」
「うっせぇ!そして惚けてるところ悪いが食らえ!【悉くを焼き尽くす終炎】!!」
『ッッ!!?』
カッ!ドッゴォォォォォォォン!!
『エオァァ゛ァァア゛ァォォォオォ゛ォァァァ!!?』
「よっしゃあ!クリーンヒットだぜ!!」
「「「えぇぇぇえぇぇ!?」」」
「なんでお前らが驚いてんだ!?」
「いや、だって!そこは向こうが立ち直るまで待つ所だろ!?お前に情けは無いのか!!?」
「情けをかけて負けたら元も子もねぇだろ!」
「流石に可哀想じゃないですか!!」
「あの子ボーーッとしてたよ!?」
「うるせぇぇぇ!!これでも殺れて無いんだからあれぐらいしないとだろ!…………お?」
『グヴゥ゛ゥ゛ゥゥゥ……………』
やっぱ生きてるか。HPは……赤くなったな。ん?なんだあれは?……………赤いオーラ、か?
『グルルゥ…………ォオ゛ォォォ゛ォ゛ォオォオォォォ゛オォォォォォ!!』
「なんだ!?」
「ピンチになったら覚醒するって……定番だけどさぁ!?」
「今は止めて欲しいって言うか………」
「いつでもしないでくれぇ!?」
《ヘルプが追加されました》
《発狂状態:ボスクラスのモンスターのHPが一定値を下回ると発動します》
《効果は『パッシブスキル追加』『攻撃力増強』『防御力増強』『行動速度強化』です》
「「「「ふざけんなぁぁぁぁ!!」」」」
『グォォオ゛ォォオォ゛ォォ゛オォォ!!!』
シュッ!ドガァァァン!!
畜生!本当に攻撃力も行動速度も上がってやがる!!って!?
『オォォオォォ…………グォォォォォォォ!!』
ピシャッ!バチバチバチバチバチバチバチバチィ!!
「「「「うわぁぁぁぁぁぁ!」」」」
ふざっ、ふざけんなぁぁぁぁ!!!!なんでブレスまでヤバくなってんだ!雷の奔流って感じだったぞ!!
「そういや出来るんだよな、『鑑定』」
たしかプレイヤーの共通スキルだったはずだ。まぁ初期プレイヤーだけかも知れんが。………………は?
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モンスター:竜種:鳴神ノ眷属:雷翼竜
個体名:ヴォルド
性別:♀
説明:鳴神ノ竜の仔の一体。最も血が薄いため、翼竜となってしまった。扱いも悪く、仔として扱われたことがほとんど無い。しかしそれでも、彼の竜を親として敬愛し、与えられた使命を全うし続けている。
スキル:パッシブ
浮遊・飛行・飛翔・雷の竜・鱗強化・爪強化・牙強化
発狂状態:筋力爆発・鱗超強化・高速機動・ブレス強化
スキル:アクティブ
サンダーボール・|サンダーブレス・ライトニングボール・ライトニングブレス・ライトニングプレッシャー
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うっそだろ。流石に発狂状態のスキル追加がヤバすぎるだろ。というかメスだったのかよ!?
「こいつ『ブレス強化』ってスキル生えてきてるぞ!次あの荷電粒子砲モドキ撃ってくる前に仕留めないと、一人は殺られる可能性がある!!」
「えぇ!?」
「発狂状態………定番とはいえ厄介だなぁ………」
「なら早く仕留めてしまいましょう!」
「じゃあボクは頭を撃ってみるよ!ダメージ上がるだろうし!」
「俺ももっと攻撃ペースをあげるか………MP持つよな?」
「ワタクシも次は吹っ飛ばされないようにしよう!」
「私は………切りまくりますか」
作戦なんてねぇ!フルボッコだ!!
「そういや使ったこと無かったな?『暗黒召喚』!」
『グオッ?オォオォォォォオォオ!?』
うお、気持ち悪っ!?本当に暗黒だな?黒いナニカがペチペチしてやがる………見た目の割にダメージ通ってるな?
「ドンドン撃つよーー!」
ガン!ガンガンガン!!
『オォォオォォォォォ……』
おっ、声が変わった。そろそろ決着つくか?
『ギィェェエェェェェェェ!!!』
「ってそんな訳無いよなー!!」
突っ込んで来やがった!
「『凍ル絶命ノ乱斬界』!」
「『徹甲突』!」
「「って、止まらねー(りません)!」」
「くそがァ!」
俺だけは殺すってか!?残った目も血走ってるじゃねぇか!ナオキもダモンも置いてかれて届かねぇし、アオイはなんか止まってるし!……………いや?あれは…………なるほど。
「考えがあるなら………俺に任せろ」
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《解放》
《スキル《???》が解放されました》
《使用可能です》
「これって………もしかして………!」
やったぁ!念願の必殺技(?)だよー!
『ギィェェエェェェェェェ!!!』
うわっ!?なに!?
「「止まらねー(りません)!」」
「くそがァ!」
わぁ!カイトくん、そんなにヘイト取ってたの!?……………よし。ちょうど使えるようになったし、ここで使っていこうか。しっかり狙って、外れないように……カイトくんに向かってきてるから、狙うのは楽だけど…間に合わない……………カイトくんが耐えてくれれば………こっち見た!あっ、サムズアップした!そして………
「燼宮流鏖剣術・八の型・業塵壁!」
『ッ!?オォォオォォ!!?』
止まった!絶対に当てる!!覚醒したスキルの名前、それは………!
「【終極の蒼き雷光】!!」
…………カッ!ピシャッ…………ドォォォォォォン!!
『オォォオォォォオォォ!?…………………ォォ』
そして、一筋の蒼い稲妻が空を切り裂いた。
誇り高き一体の竜と共に。
《遠雷の森ボス、鳴神ノ眷属:雷翼竜『ヴォルド』》
《討伐完了》
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