第九話 『遠雷』の伝承
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『遠雷の森』。それは遠くより響く雷鳴より名付けられた場所。しかし、音に惹かれて向かうことなかれ。雷鳴響く中心には、森を支配する『王』が座す。その怒りに触れれば、全ては灰塵に帰す。大いなる光に包まれて、全ては世界より消失す。彼を呼び覚ます事なかれ。それは滅びを齎す王である。
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「と、まぁこんな事が書いてある石板があったぞ」
あの実験の後、俺達は遠雷の森に来ていた。あのレーザーを防げるのか調べるためだ。装備の耐久値は減らないように出来ると分かったが、だからといってあれを防げるかは分からないからな。今はダモンがピンを刺した場所に向かっているんだが……途中で廃墟のような場所があったから探索していたんだ。どうやらダモンが逃げた道とは違ったようで、廃墟があったなら何か情報があるかもと探してみたがビンゴだ。どうみてもおかしいほど目立つ石板が鎮座していて、伝承らしき事が書かれていた。やっぱりボスがレーザーを撃っていたらしい。いや、ギルマスから聞きはしたがどうも信じられなくてな……
「『王』とはこれまた…………偉そうですねぇ」
「え、そこ……?ボクとしては『音に惹かれて向かうことなかれ』って所が気になるなぁ。絶対居場所のヒントじゃない?」
「あぁ、それは俺も思った」
フィールド内でここまで頻繁に音が鳴ってるなら、それはギミックの一部の可能性もある。昔のゲームに似たような物があったしな。某巣から奪ってきたモンスターの卵を孵化させてそれに乗って戦うゲーム。あれに雷がなってる方に行かないと延々ループし続けるステージがあったはず。ん?そうなるとパクリか?まぁ面白ければ良いだろ。
「じゃ、とりあえず音が大きくなる方に向かって歩くか。あのレーザー弾けるか調べたいし」
「ホントに出来るのぉ?いや、カイト君が強いのは模擬戦で分かってるけどさぁ……?」
「ま、無理だったら死に戻りしてから笑えば良いだろ。そうしなきゃずっと前に進めないからな」
「…………急に良いこと言い出すね」
そうか……?まぁ良い、さっさと確かめに行こう。
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さて、ダモンがピンを刺した場所まで来たが………何も無いな?
「本当にここなのか?何もないし何も起こらないぞ?」
「おかしいなぁ…ここでナオちゃんが吹き飛ばされたんですがねぇ…………だよね?」
「あぁ、あってるはずだ。見覚えがあるしな」
いや………見覚えがあるも何もほとんど景色変わらんだろうに…………ま、こいつらが言うならそうなんだろう。ひとまず雷の鳴る方に進んでみよう。
「とりあえず進んでみるぞ。いろいろ確かめないと一向に終わらん」
「「「おー!」」」
「良い返事だ、気合い十分ってな」
さて、雷鳴は…………こっちか。何があるのかねぇ。
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そうしてしばらく進んだ後、突然地面が固くなった。これは………
「道、か?」
3つに分かれている道が現れていた。さてはここからが本番ってか?お、石碑があるな。見てみるか。
「『鳴神ノ竜伝説』……?ずいぶん大きく出たな」
鳴神か、雷の神の事だしそこまでおかしくは無いな。でもそうすると『雷神の竜』って事にならないか?……………細かいことは気にしないでも良いか。ハゲちまう。
「鳴神ノ竜ね………ボクも雷を操るようになったんだし、殴り込みしに行った方が良いよね!」
相変わらず物騒なこと言うよなぁ……殴り込みに行くのはその通りだが。さて、内容は………
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彼の竜、翼を持ちて天に君臨す。
彼の竜、爪牙を持ちて世に覇道を唱える。
彼の竜、雷の吐息を持ちて全てを焦がす。
我ら、それを受け入れるのみ。
彼の者、剣を持ちて彼の竜に立ち向かう。
彼の者、盾鎧を持ちて彼の竜の覇道を妨げる。
彼の者、無双の覇気を持ちて雷を防ぐ。
我ら、彼の者に光を見いだす。
一体と一人、日と月が7度入れ替わるまで剣牙を交える。
竜は地に墜ち、人は天へ昇る。
一体は潰え、一人は去る。
我らは伝える者。この物語を語る者なり。
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「…………………………ムズくね?」
「…………………………うん」
「そうですね」
「さっぱりだな」
とりあえずレーザーを撃ってきたのが竜……ドラゴンって事は分かったがな?あと人は天へ去るって…アオイが倒したのは…………いや、まさかな。
「分からんって事が分かったし、雷の音を目標に進むぞ」
それしか道標は無いしな。




