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From Abyss  作者: バルト
第二章 天に煌めく黒雷
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第七話 訓練(リアルで)、そしてあの日の記憶

 さて、ボスの存在が明らかになって、そいつがやべぇ奴らしいので、俺本体が戦うための訓練をしておかないとだな。ゲームだとしても、反応速度や受け身の取り方等は使える。

 だから、あのあとログアウトして寝た次の日、つまり今日俺は()()()()()()()()()()


『燼宮流転剣術道場』


 俺がいつも奢る羽目になる理由、それがここだ。俺の家、つまり燼宮家は、一応武道の名家らしく、道場を開いており、門下生もかなりいる。だからこそ小遣いも貰えたが、本当の理由はそこじゃない。


「こっ、これは()()()()!?」

「どっどうしてここに!?」

「あぁ、下らない理由だ。友人とゲームを始めたんだが、どうやらとてつもなく強い敵が出るらしい。だからこっちでお前達に教えるついでに自分の訓練をしようと思ってな」


 そう、俺はここで特別師範をしている。小遣いは貰えなくなったが、名前が給料となってさらに増額されただけだ。ん?俺も転剣術なのかって?違う、俺の剣術は………って、なんでこいつらこんなに絶望したような顔をしているんだ?


「そんな顔をしてどうしたんだ?」

「ははは……いえ、今日は碧殿も来ているのですか?」

「いや、あいつは予定があると言っていたな」

「………しゃっ!」

「しゃっ?」

「いえなんでもありません!!」

「そうか?まぁ良い。入って早々出会ったんだ、訓練に付き合え」

「「……ワカリマシタ」」


 うーん、なんでこんなに辛そうなのか。付き合わせるがな。

________________________

「じゃ、二人ともかかってこい。遠慮はいらんぞ」

「「よろしくお願いします!」」

「あぁ」

「燼宮流転剣術・四の型・『閃突竜尾(せんとつりゅうび)』!」

「燼宮流転剣術・二の型・『突輝閃(とつきせん)』!」


 ほう、突進系の技だな。様子見をするようなら十以上の型を使ってさっさと沈めようと思ったが、割と考えているようだ。ま、()()()なんだからこれくらい考えてくれないと困る。


「燼宮流()剣術・一の型・『研閃(けんせん)』」

「「!!?」」


 研閃は真剣なら敵の武器を破損させつつ、こちらにその力を移し、次の技に繋げるための初動の剣技だ。

 木剣でやるとただ相手の腕を痺れさせるだけだが、こいつら相手なら腕を使いづらくすれば俺への勝ちの目は無くなるだろう。この状態でこいつらはどこまでやれるかな?


「ぐっ………」

「やっぱり特別師範はレベルが違う……だが、どこまで迫れるか、試させて貰いますよ!」

「あぁ、かかってこい。俺の訓練でもあるんだからな」


 そう自分の弟子達に言いながら、俺はあの日の事を思い出していた。


……………………………………………………………………………


「この巻物は…?随分古いなぁ」


 俺は、先祖代々住んでいたらしい家の蔵で、何か面白い物は無いかと色々漁っていた。そして、たまたま見つけたやけに古い巻物。それを開いたことにより、俺はこの剣を覚えたんだ。


「開いてみよう………うわっ!?」


カッ!


________________________

「こっ、ここは……?」

「……おぉ!ついに、ついにわたしの剣を継承し得る才能を持ったものが現れたか!これでようやくわたしも未練無く眠ることが出来る!」

「あ…あなたは?」

「わたしか!わたしは燼宮 奏!お前の先祖で、燼宮流鏖剣術の開祖だ!!」

「え?…………えぇぇぇ!?」


 俺は、自分の先祖である女性に、幻想の中で出会ったのだ。そして、その剣術を教え込まれたのだった。

________________________

「うむ!やはり才能があるものは飲み込みが早いな!」

「そりゃどうも………」


 この人に出会ってから、体感時間で()()。そんなに長い時間、自らの先祖と切り結び、疲れたら何故かある風呂に何故か先祖の女性と入り、寝て起きたらまた切り結んで…………それを十年も繰り返していれば流石に大抵の物は覚えるだろう。が、そう言うと……


「わたしは自分の息子に教えたが、あの子は覚えられなかったぞ?」


 と返され、もうどう返せば良いのか分からなくなってしまった。


「もうわたしと同等に戦えるようになったのだ、そろそろお別れの時間だな」

「え?………そっか、もう死んじゃってるんだっけ」

「あぁ、わたしは過去の亡霊でしかなく、わたしの未練が消えれば同時にわたしも消える。だからな?」

「うん?」

「最後にお前を甘やかさせてくれ」

「…………分かったよ、好きにして」

________________________

 そうして、あの後彼女は消えていった。笑顔で、手を振りながら。それと同時に俺はあの空間から追い出され、気がついたら巻物を見つけた場所に寝転がっていたんだ。

 そして、あの巻物の中身の文字は無くなっていた。彼女と共に役割を終え、消えてしまったのだろう。だから、俺は彼女の剣を後世へ残すため、両親の道場から何人かに対して稽古をつけているんだ。…………少し感傷的になってしまったな。そろそろ彼らの稽古を終わりにしよう。


「さて、そろそろ終わりにするぞ。奥義を見せるから、受けてみろ。失敗しても構わん」

「ハァ、ゼェ………もうギリギリですよ……?」

「ゲホッゲホ、やるしかないだろ……」

「その通り。準備が出来てなくても問答無用で斬りかかるから、さっさと構えたほうが良いぞ?」

「相変わらず鬼畜ですね……燼宮流転剣術・五の型・『灰風壁』」

「燼宮流転剣術・八の型・『塵壁』………ふぅ」



「行くぞ。燼宮流鏖剣術・奥義」








「『天神・紅閃乱麻』」



…………カァン!バン!!





 そして、俺の木剣は二人の構えていた木剣を破壊し、二人を同時に、そして盛大に吹き飛ばした。




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