第六話 ボスの存在
「ふぅ、やっと撒いたな。全く、これからはもう少し勘弁してくれよ?」
「ごめんごめん、つい楽しくてさぁ……」
俺とアオイは、やっとのことで追ってきたモンスターの群れを撒けていた。途中で食い合いになってる奴らもいたが、つまり捕食者、被捕食者関係無く追っかけてきてたのか?うるさかったとは言え、そんなに夢中になるほどだったのか??まぁ考えても分からんし、やめにするか。
「にしても、あいつらの方が遅いとは、なんかあったのか?」
「なんだろうね……もしかして、ボクみたいに邪神系のモンスターに会ったのかも!?」
「んな訳あるか、あいつ絶対レアモンスターだぞ。序盤でこんな進化するとか、普通絶対無いだろ」
とんでもない事を言い出したアオイに突っ込みを入れておく。あんなのがポンポン湧いたら堪らんわ。全く…………お?
「すみません、遅くなりました」
「おぉ、ホントに遅かったな。なんかあったのか?というかナオキはどうした?」
「ナオちゃんは多分デスペナ食らってます」
「え!?何があったの!?」
「後で説明します、今は町に帰りましょう!ここも危険かもしれません!!」
マジかよ!さっさと帰ることにしよう!!
「ワープでギルドに行くぞ!」
戦闘状態でなければ、プレイヤーはマップから町の中にワープ出来る。ダモンも戦闘状態では無さそうだし、さっさと帰るとしよう。そうして俺はギルドを選択し、ワープした。
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「よし、無事戻れたな。で、何があったんだ?」
「歩きながら説明します。ナオちゃんを迎えに行かなくては行けませんし」
「そういや、デスペナ食らうとどうなるんだ?」
「もう食らった検証班の話だと、ステータスが1時間大幅ダウンして、復活は病院のベッドだってさ。お金も落とすみたい」
「ステータス大幅ダウンってどれくらいだ?」
「………9割」
「えぇ……」
それはエグすぎんか?まともに戦えんだろ………
「で、ナオちゃんが殺られた理由なんですが…………実は……………」
「実は?」
「さっぱり分かりません!!」
「何でだよ!!すぐ側にいたんじゃないのか!?」
「いや、すぐ側にいたし、死んだ瞬間も見ていたんですが……なんかぶっといレーザーみたいなのに消滅させられてました」
なんだそりゃ……確かにさっぱり分からん。うーーむ、後で情報収集してみるか…………今はナオキを迎えに行かなくては。
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「おっ、お帰り。死なずに済んだか」
「おう。にしても酷い有り様だな……デスペナ食らってる間ずっとそれか?」
ナオキらしいそれは確かに病院にいた。……包帯ぐるぐる巻きのミイラ状態で。
「これが取れるまでステータスは減ったままらしいよ。どう見ても動きにくいし何も見えなそうだしね」
「息も出来なそうだがな……」
絶対普通の病院じゃやらんだろこんなの。………………やるのか?やらないよな?やらないと言ってくれ!
「どのみち今日はこれで終わりだな。そろそろ別行動しても良いと思うし」
「別行動?」
「あぁ、自分達でそれぞれやりたいことをやって、何か集まってやりたいことがあれば予定を揃える。夏休みとはいえ明日からは皆予定あるだろ?」
「確かに……ボクは明日集まるのはキツいかも」
「私も予定がありますね。これなら確かに別行動で良さそうです」
「ワタクシは明日も暇だから、一人で狩りでもしていよう」
「じゃ、今日はこれで解散だな。また今度やろう」
そうして俺達は別々に分かれた。
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さーて、情報収集のターンだ。『遠雷の森』で、深部からレーザーが飛んでくるなんてギルドの資料では見ていない。だが、書いていないだけの隠し情報の可能性もある。検証班も遠雷の森の深部まで入ったことは無いらしいしな。ホントかは知らんが。さて、ギルドに到着だ(ワープだが)。
「ようこそ、カイトさん。何かお探しですか?」
「あぁ、遠雷の森についての資料を探している。あるか?」
「もちろんありますが……この前見たばかりですよね?しかも長時間。何かしているんですか?」
受付嬢が胡乱な目で見てくる。なるほど、攻め立てるための切り口をありがとう。
「ほう?確かにこの前長く借りたが、どうもおかしくてな。ここの資料に欠落があって、何か起こったときに困るのはそちらだぞ?」
「………何が言いたいのでしょう」
「あの資料を書いた者に会わせろ。それかあれがなんなのか開示してもらおう」
「…………良いでしょう。こちらへどうぞ」
「助かる」
さて、ギルドの奥ね。普通はギルドマスターとかがいるが……こいつの反応を見るに、消すつもりか?プレイヤーなことに気づいてないのだろうか?まぁいい、なんとかなるだろう。
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「さて、お前はギルドの隠し情報を知ってしまった。ここで消えてもらおう」
予想通りの展開だな。全く面白味がない。
「消せるものなら消してみろ。お前が思うほど、俺は弱くない」
「ハッ!登録したてのひよっこが、十年間ギルドメンバーとして戦ってきた俺に何を言っているのか。お望み通り、さっさと死ね!『死剣』!」
「『スラッシュ』」
キン!ザク!!
「ぎゃぁぁぁ!?」
「仰々しいスキル名の割にはこの程度か。しかも痛みにも弱いとは。ガッカリだよ」
とんだ雑魚だ。さて……
「どうするんだ?なぁ、受付嬢さん?」
「ひぃ……ゆ、許して……」
「ここのトップを連れてこい。さもなければ………」
そこで言葉を切る。そうすると勝手に向こうが期待通りに動くと、あの人は言っていたな。………………不味いな。少し感情を高ぶらせ過ぎた。落ち着かないとな。
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「すまんな、うちの者が暴走してしまったようで」
あの後、俺はここのギルドマスターと会っていた。どう見てもただのじいさんだ。あの受付嬢は切り捨てられたようだ。いや、もしかしたら本当に暴走していたのかもしれないが。まぁ、あの森の事は知れそうだ。
「で、あの森の奥から飛んでくる光線だが………あれはな?」
「良いからさっさと言え」
「おぉ……前置きすら許してくれぬのか……まぁいい。あの光は端的にいえば」
「お前さんらの言葉で『ボス』と呼ばれる者。そのブレスじゃ」
ちなみにギルマスはもう出す予定はありません()




