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第13話 白乃

青海夜海です。

ここから白乃の視点がメインかな?

 それからの日々は比較的穏やかだった。

 日中、私が眠り彼――夜霧よぎりくんが起きている時、交代の際に一時間ほどのインターバル、空白の間に共有された情報によれば、虚界人きょかいじんとなるべく遭遇しないように避けながら都市中心へと進んでいるようだった。事細かいことはイチルと時凪ときなから訊くがなにぶん、私が活動できるのは夜でみんなは一日中歩き回った疲れで直ぐに眠ってしまう。

 イチルの〝異能〟は【情報思考】らしく、数少ない情報から何十パターンもの可能性を俯瞰し、幾つもの情報をパズルのように組み立て取り除きを繰り返して最適解……限りなく真実に近い答えを導き出せる力のようだ。イチルの導きで夕霧ゆりは都市中心――敵の占拠地――東京湾軍装都市にいると判明した。

 だから、私は夜な夜な二人が眠った後、警備をノルンに任せて都市付近をくまなく捜索しては敵の数を間引いていた。もしも都市に侵入する際にいくつもの抜け穴を用意しておく必要がある。とは言えやり過ぎれば警戒を与え過ぎてしまい本末転倒だ。間引く際には死体ごと排除し、私たちの世界の人の死体と混ぜて誤魔化す。そうやって暗躍を続ける日々は一週間ほど続いたその日、私はその人に出逢った。



 波打つ防波堤の上。奇しくも夜霧くんと出逢い彼を殺したところと似た夜の海の傍で、切れかかりの外灯がちかちかと彼女の接近を知らせる。雪のような静寂と冬のような波の騒めき。私はナイフを瞬時に取り出せるように右手を腰に、そして眼に映ったのはどうしようもない運命の悪戯だった。

 雪のようなきめ細やかな白い肌にそれよりもなお白い髪。私と同じ空色の瞳が大きく見開く。オフシェルダーの白のシャツの首元には青い石の装飾品から三つのリボン。紺色のスカート。思わず見惚れてしまうほど、その女性は儚かった。そして、彼女の相貌はよく知っている顔だった。


「…………」

「…………」


 互いに沈黙に溺れ、カチカチと今にも消えそうな外灯が眼を覚まさせる。

「「あの」」と声が揃い、「「い、いえ」」とまた声が揃った。

 恥ずかしい、気まずい。風が間をすり抜けていき、ようやく彼女が私に話しかけた。


「あなた……名前はなんですか?」


 柔らかな声に、答えなんてわかってるはずなのに他人に思えてしまった。


「……白乃しろの、です」


 彼女は微笑んで「やっぱり!私も白乃です」と軽く頭を下げた。私も慌てて下げる。

 彼女の顔は見覚えがあった。鏡を見ればわかってしまうほどに、顔の形、パーツ、瞳、輪郭、声、体格、その他諸々、間違いなく『彼女』は〝私〟だった。


「まさか〝私〟に逢えるだなんて思ってなかったな。あはは、髪の色とか着ているものの色は正反対だけど」


 親しみの笑顔を向けてくれる彼女はどこまでも私とは正反対だった。髪の色、服の色、性格、声のトーン、きっとその手の汚れも……。だから、腰に当てた右手を離せない。


「貴女は……どうしてこんなところにいるの?見る限り一人のようだけれど」

「そう、ね。えっと、一人になりたかったから?」

「…………」

「……。そう言ったら、貴女はわかるのかな?」


 手を後ろで組んで上目遣いに「どう?」と楽し気な彼女。やっぱり、〝私〟だ。


「わかるわ。……この世界で、この時間だけが唯一の居場所。夜と波と風だけが、私を許してくれる。貴女は私とは根本的に違うようだけれど……」

「あなたの正解。一緒だね。居場所がなくて、私じゃいられなくて、苦しいから一人になるの。夜は包み込んでくれる。海は流してくれる。風は寄り添ってくれる。星は希望をくれる。……痛みを和らげる方法を、私は他に知らない」

「…………貴女は、どっち?」

「私は――あなたの方……そう言ったら、私を助けてくれるの?」


 白乃――その名前はきっと彼女のために与えられた名前だ。

 私は彼女の偽物。彼女の世界に分岐で産まれたどうしようもない感情の塊。だから、彼女を救うことは、私の救いになると思った。どうしようもなく答えを見つけ出せない人生を歩んできて、どうしようもない過ちを繰り返して、それでも今だに彷徨い続ける私。彼女と私は光と影だった。


「…………その顔」

「え……」

「よく似てる」


 そう、彼女は私の頬に触れた。拒絶感がなくて、温もりがあった。


「迷ってわからなくなって泣きそうな〝私〟」

「――――――」

「貴女の人生を聞かせてくれない?」


 見つめ合う同じ瞳。どこまでも違うのに、どこまでも同じ瞳。

 揺れるか細い空色の瞳。私は静かに話し始めた。




 記憶が古いのは五歳の時。私の家族は全員殺された。

 それなりに裕福だった私の家に何者かが侵入して母と父を暗殺した。

 後から知ったことだけれど、父は麻薬の密売を、母は闇金の詐欺を行っていたらしい。何人もの人が被害にあい人生を壊された。数多の人の人生を破壊した父と母は有罪であり、故に暗殺された。それだけだった。

 それを知った私は当時、誰かの人生を踏み躙りながら生きていたのだと思うと胃液すらなくなるまで吐き続けた。どうしようもなく自分は罪に塗れているのだと、自分が嫌いになった。母も父も嫌いになった。それでも愛されていた事実に嫌いになりきれなかった。私は親の確かな愛包まれて生きていたのだ。

 それでも、今の私に疑念、違和感、不快感が押し潰して来た。正しさがわからなくなった。


 五歳の私は気づいた時には孤児に預けられていた。それまでの間は泣きじゃくっていたのだと思う。十歳になるまで、父と母の死は窃盗犯の仕業だと知らされていた。そんな泣きじゃくる私はすぐに拾われた。男の名はカイジと名乗り、悪を裁く影の勇者だと告げた。

 行き場も否定もできない私はカイジの下で生きることになった。


「いいか白餓鬼。今日からオマエはオレの方針に従って生きろ。文句は弱さと思え。逃げるは恥だ。独りになりたくなきゃオレについてこい。頑張る分にはそれ相応の幸せってもんを与えてやる」


 カイジのそれは独り善がりにも似た傲慢な言い草だった。けれど、五歳の私には何もわからなく、唯一わかったのがそれだった。


「ひ、ひとりには……なりたくない」


 カイジは嗤った。


「おう。立派な善人に育ててやる」と、私の頭を雑に撫でまわした。



 次に日から始まったのは過酷な日々だった。カイジはよく言った。


 ――悪人を裁く善人になりやがれ、と。


 そのために教えられたのが『暗殺術』だった。


 私はカイジの下でひたすらに人を殺す術を身に付けさせられた。人の情に流されない訓練は貧困者を見下すことだった。拷問は、死に逝く人を見てみぬ振りをすることだった。

 カイジはよく言った。


 ――奴等は悪人だ。それは相応ふさわしい最期なんだよ、と。


 その行為、最後、嘆きは正しさだと私に教えた。



 カイジは一切勉学には触れさせなかった。

 字の書き方と言葉だけが勉強だった。普段の生活は他人を見て覚える日々。カイジ曰く、観察力、洞察力を磨く訓練だったらしい。そのお陰か私は悪質な感情を読み取れるようになった。それを報告するとカイジは喜んだ。


「よくやったぞ!さすがオレが見込んだだけはありやがる!」


 私は初めて褒められてこれが正しさだと知った。それは紛れもない家族愛だった。私はそれだけでいつまでも頑張ることができた。

 その次の日、カイジは海へ連れて行ってくれた。私へのご褒美だった。最初で最後の私が私でいれた瞬間だった。


 それから『暗殺者』として任務を受け、人を殺す日々が始まった。

 八歳から始めた暗殺業は言ったらあれだけど、私によく合っていた。淡々とターゲットを殺すだけの仕事は自己表現があまりできない私にはピッタリだった。正しさを知らない私にはお誂え向きだった。

 しかし、続けるうちに違和感を覚えていった。


「このっ悪魔めッ!人殺しがァ‼」


 ターゲットの強盗犯が私を指差しまるで悪者だというように吠えた。

 最初、男の言っている意味がわからなかった。

 だって――


「お兄さんの方が悪でしょ。その悪を裁く私は正義よ」


 絶句する強盗犯を私は殺した。


「よくもっ!よくもッ!私の子供を殺したわねッ!薄汚い暗殺者ァア!アンタも死ねェエエエ‼」


 数多の女性を猟奇的に殺した息子を制裁し終えた私に、息子の母親が包丁を持って私に駆け出してきた。ひょろりと避ける私に女は何度も何度も仇の眼差しで私に包丁を振るった。

 女の思考がわからなかった。だって――


「どうして怒ってるの?貴女の息子さんは殺人犯よ。排除するのは当たり前じゃない」

「ふざけるなァアアアアアアアアア‼」


 襲い掛かってきた女は立派な殺人未遂罪。カイジの『悪の肩を持つ奴は全員悪だ。構わず殺せ』との訓えを思い出し、私は女を殺した。

 女の眼は最後まで私を恨み咎める瞳だった。

 それが強く印象に残った。


「カイジ、悪を殺すことって善行なのよね?」


 教えてもらったものをもう一度確認したくてそう訊ねると、カイジは頬杖を突きながら煙草をふかし。


「ああそうさ。悪人を裁くオレらは善人だァ」

「……そう、ありがとう」

「他の奴らの言葉なんざ耳を貸すな。どいつもこいつも助かりたくて戯言を吐いているただの頭がくるくるパーのクソ野郎だァ」

「ええ、わかったわ」


 私にはカイジしかいなかった。捨てられた私に生きることを与えてくれたカイジが私の親だった。だから、カイジの訓えを信じた。

 でも、ずっと引っかかる殺す人々の眼差し。その家族の嘆き。多くの人が弔う涙と花束を。


「ねぇ、人を殺すことは悪い事?」


 そう、ふと店の店主に尋ねると店主は言った。


「当り前だろ。人殺しは倫理に反してるからな」


 ある老婆は言った。


「人殺しは悪魔よ!どんな理由でも人殺しは悪魔よ!」


 とある青年は言った。


「人を殺す、それはその人の人生を奪うことだ。いいかい、どんな理由があれ人それぞれの人生がある。それを奪うにはそれ相応の覚悟と責任が伴うんだ。だからこの世界には法があり、倫理があり、道徳がある。人は人を尊重し思いやることこそが美徳さ。だから人殺しは大罪なんだよ」



 この仕事を『善行』と信じながら十三歳まで続け、母と父の真相、そして『暗殺』とは何か。倫理、道徳、普通、社会、ルール、法律、人としての在り方と生き方を学び知り得て――私は逃げ出した。


 私のしてきたことは善行などではなかったと知った。


 ――私こそが〝悪人〟だったのだ。



「でも、今もその生き方を変えられない。もう殺さないって誓ったはずなのにっ……私に敵意を向けてくると、殺しにかかられると、条件反射で攻撃してしまうの。……もう何人も、貴女の世界の人を殺したわ」

「…………」

「貴女の友達だって、殺したかもしれない」


 始めて人には話したのは違う世界線の〝私〟。それでも、この夜だけは私の醜態を許してくれる。罪を包み隠して涙なんて拭ってくれる。しこりも隠してくれる。痛みは海があるから大丈夫。悪人の、殺人者の私の本当の居場所はここしかない。


「ひとり……たったひとりだけ、私を助けてくれた人がいたわ。カイジから追われる日々で私はしくじったの。その時、彼は私を助けてくれた。もう命を手放そうと生きることを諦めていた私の、手を掴んでくれた。……あの日、出逢った彼だけが……今もずっと私のすべてなの」


 逃げ出した私をカイジは許さなかった。カイジの手で私は殺されるのだと悟り、必死に逃げた。けれど、何十年ものベテラン暗殺者から逃れられることはなく、しくじった私は追い詰められた。

 脚を負傷し、腹部から血を流し、コツコツと物陰から足音と影を迫る森の廃虚の庭の中。


「悪人を裁く、それがオレたち『暗殺者』だ」


 カイジは声を張って言った。


「その使命から逃げ出すオマエの口は塞がないとならねー。わかってるだろうな白餓鬼ィ。その口も手ももう悪の手だってことをなァ」


 わかっている。だから逃げ出した。でも、逃げ出してどこに向かえばいいのか、私はどうすればいいのか何一つわからなかった。

 ただ、自分が怖くなった。悪魔のような悪の私が怖くなって。

 がたがたと震える私にカイジの影が迫り、そん時だった。


「立てるか!」


 はっと横を振り向けばいつの間にいたのか、暗がりでよく見えないけれど少し年上の男の人がいた。

 彼はわかるように口角を上げて。


「君を助けるよ!」


 伸ばされた手に恐る恐る伸ばし、彼は私の中途半端な手を掴んだ。彼に引っ張られるように私はもう一度逃げた。

 彼の背中を見つめ、その手の向かうどこまでも。


 いくつもの車やバスを経由し、どこかも知らない町に連れてこられた私に彼は言った。


「生きてるね」


 その言葉がずっとずっと私の胸に残っている。

 私より三つ年上の彼はこんな私に優しくしてくれた。本当のことを話しても嫌悪や畏怖、忌避の眼で見ずに最後まで私の心を聞いてくれた。

 初めて涙する私の頭に彼の大きな掌が置かれ。


「もう大丈夫だ。君は一人じゃない」

「――――っ」

「ここからまた頑張ればいい」


 その時、嗚呼、馬鹿なほどに私は彼に惹かれた。

 名前も知らない三つ上の男の人に。

 私は彼の胸の中で泣きじゃくり、そして意識を手放した。


 眼を覚ました時には既に彼はおらず、残された手紙には孤独な子供を探しにいく旨が書かれていた。彼こそが善人なんだと、昨日の感触と醜態を思い出しながら思い浮かべた。

 差し伸ばしてくれた手と、駆ける背中を。

 そんな彼を想いだして、私は決意する。


「ちゃんと向き合わないと」


 その町のみんなを私を受け入れてくれた。その町は様々な事情で心に傷を負った人たちが暮らす町だった。私は村の用心棒をしながら、多くを学んでだ。

 どうしても抜けきらない埋め込まれた暗殺者としての常識と常に葛藤しながら、一つだけ私の意志で決めた。

 私はもう一度カイジに立ち向かった。逃げるじゃない、認めてもらうために。


「もう暗殺者にならないわ!」


 カイジの胸を突き刺し、親を殺し、私は叫んだ。

 これが、私の親不孝な親孝行だと。

 カイジは嗤った。いつものように嗤った。


「クソガキだァ。いっちょ前に吠えやがって……勝手にしろぉ」


 そして私は今もずっと彼を探している。

 まだ何も答えを見つけられないまま、誰も殺さないように気を付けながら。

 それでも、暗殺者の業から逃げられないまま、彼を探している。



 防波堤に腰掛けて海を眺める私と彼女。

 彼女は膝を抱えて背中を曲げて丸まる。波の音と共に流れた私の声に「そっか」と呟いた。どういう感情なのかわからなく、少し怖くなる。そして同時に思う。違う世界の〝私〟だとしても、この世界に私を受け入れてくれるかは全然別なんだと。むしろ同じ人生を歩んでいないのなら、吐かれた息は同情、もしくは理解不能のため息だ。話してしまった自分を嫌う。


「それがこの世界の私なんだね……」


 思ったより柔らかな声音に「幻滅した?」と訊ねてしまう。わかりきっているのに。


「幻滅……違うよ。私の人生も一つ、選択が違っていたらきっと貴女のような人生を送っていたと思うの」


 思っていた感想と違って固まってしまう。「私もね」と指先を捏ねる彼女。


「お父さんとお母さん、殺されたの」

「え……?それって……」

「うん、同じ。暗殺者に殺されたの。でも、私はその日、友達の家に遊びに行ってて、夜遅くなってもまだ遊び足りなくて、おばさんにごねてたんだ」

「じゃあ、家にいなかったの?」

「そう、警察が友達の家に来て驚いたっけ」


 と、苦笑した。無理矢理笑みを作った痛みと安堵のそれ。そう言えば、と思い出す。私は人との関わり方がわからなくて、ずっと気にかけてくれていた子を拒んでしまった。


「貴女は……勇気を出したの?」


 彼女は私を見て目を瞑って、開いた。


「うん、勇気、出したよ」

「そっか……そう、なのね」


 あの日、勇気を出していたかどうか。たったそれだけの違い。けれど、その勇気一つで私は人殺しになって、〝私〟は女の子になった。彼女は言う。


「お母さんとお父さんの犯した罪を訊いて、私もあなたと同じ心地だった。罪人の血を引く私はどうなんだろうって。学校でいじめられたりもした。引き取ってくれた叔母さんは私を許して受け入れてくれたけど、私は生きていていいのかわからなくなる。……親友……あの日の友達なんだけど、みどりって名前で、今もずっと私の親友でいてくれている。あの子にはなるべく嘘をつきたくないんだけど、どこかで引け目を感じちゃうの。私は翠の友達でいていいのかな?……てね」


 言葉の出てこない話しだった。

 私の罪も〝私〟の罪も同じで、けれど環境が違うから異なって、でもここに集まった。

 私は道徳、倫理に押しつぶされた。〝私〟は人間関係、環境に足場を崩した。

 罪悪感……たった一言で済ませることができればどれだけいいか。恐らく、私たちにはできない。


「…………。今は、大丈夫なの?」


 不明瞭な私の問いに彼女は海を見ながら「……うん」と、間を開けて頷く。


「大丈夫だよ。翠もちゃんと生きてる」

「そう……。ねぇ?」

「なに?」


 世界はもう既に終わりを迎えている。この夜、私たちだけしかいなかった。


「こっちに来ない?」

「……………………」

「私たちはとある人を探しているわ。話した彼ではないけれど、それは、もしかしたら貴女たちと戦うことになるかもしれない。いえ、きっと対立するわ」

「それは――あの人たちが求めているものを、あなたが持っているから?」

「…………そうよ、そう言ったら、言う?」

「言わない。言うはずないよ」


 〝私〟は首を横に振る。


「なら――」


 私の声を〝私〟が覆い消す。


「でも、そっちにはいけない」


 確かな覚悟があった。


「どうして……?」


 私の声に〝私〟は目を伏せた。


「置いていけないよ。……連れてもいけない。これ以上危険に晒せないよ」


 贖罪が、償いがあるから――と。


「それは……」

「でも、何かできることがあるなら手伝うよ。貴女の探しているものはなに?」


 彼女は立ち上がる。白い綺麗な髪が風に靡く。星の海で雪のように生きる彼女。

 私と正反対な〝私〟は、私に手を差し伸ばした。私は儚い彼女を見上げ、手を掴んで立ち上がる。


「夕霧――灰色の髪と藍色の眼の女の子。年齢は私たちより下。知らない?」


 彼女は大きく頷いて微笑んだ。――知ってるよ、と。


ありがとうございました。

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