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生まれることも飛ぶこともできない殻の中の僕たち  作者: はるかず
第一章 お誕生日おめでとう
8/33

第8話 だって死ぬのは悲しいから

ピヨは巣において行かれた時、死をただ待つばかりの存在だった

それはさみしくて、かなしくて、どうしようもなくて……

とても心が辛くなるのに、まだ名前を知らない卵はそんな辛い事を考えていたのだ

ピヨは死のうとしていた卵の辛さを考えると、ぎゅっと殻が縮まるような気がした


「良かった。生きていて」


ルヴナンの優しい美声が、死のうとしていた卵に投げかけられる


「放っておいてくれればよかったのに」


憎々し気な声でその卵は言った

あの葉っぱの下でずっと死を待っていた卵

葉っぱが降り積もるほどずっと、ずっと、死を待っていたのだ

放っておけば、本当に死んでしまう危機感があった


止めなきゃ……ピヨは願うように死を止める言葉を探す


死を待っていた卵は、死ぬのを邪魔されたことを怒っていた

呪詛のように卵をカタカタいわせて、威嚇さえしていた


どうせ

と、その卵は言う。

どうせ僕たちは……

そう言葉を続けて卵は言った


「僕たちは卵のまま生まれずに死ぬんだ」


生まれずに死ぬ

それは今のピヨとルヴナン、そして死を願う卵の運命の全てを表していた

ピヨはどうしようもない気持ちになった

それは本当の事なのだ。ルヴナンも傍にいる卵も、そして自分も……

このままだと卵のまま死んでしまうのだろう


「でも、死ぬのは悲しい……」


ピヨの絞り出すような声

誰かがこの世界からいなくなる。しかも知っている誰かが

旅の間で雛を助けた時。ピヨは生きて雛が母鳥の元に帰ったことに喜びを覚えた

雛は嬉しそうだった。母鳥に出会えて、もう一度世界に戻ることが出来て

もし雛が死んでいたら……そう思うとピヨは泣きそうになる


ピヨの言葉に他の二人の卵は静寂になる

同じく悲しく思ったのか、それとも怒っているのか、ピヨには分からない


突如、今まで積みあがっていた草が強風で巻き上がった

同時に、何者かのガサガサ這う音が周囲の草木からした。

ピヨはその見知らぬ気配にゾッとした

その音は明らかに自分たちを狙っている

何者かが、こちらに差し迫っているのが分かった

動かない と 動けないが、ピヨの卵に緊張を走らせた


ルヴナンがピヨを守るようにして傍に寄った

名前を知らない卵は、その気配にカタカタと震えて動けなくなっていた

今、3つの卵が何者かによって生命を脅かされていた

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