第6話 木から落ちた雛
ちゅんちゅん……
小鳥が悲しくなく声に、二つの卵は気づいた。
その悲痛さにただ事ではないと二つの卵は察し、すぐに近づいてみることにした。
「生まれたての雛の声だ……」
「どうしたんだろう」
二人が木の根元に行ってみると、雛が巣から落ちていた。
鳴き声をたどたどしく発しながら、ジタバタと羽でもがいている。
「大変だ……」
ピヨは生まれたての雛が母親がいないと巣立てないことを知っていた。
自身の兄弟達が、すくすくと母親に世話されて巣から出ていったのを知っていたからだ。
ピヨが雛の声を聞きながら悲しみに暮れていると、ひゅおうと強い風が吹いた。
「ピヨ、風が強くなってきた」
ルヴナンは雛が飛ばされないように、風よけとなって卵で雛を囲った。
ピヨもルヴナンに続いて雛を囲う。
強い風が吹き付け、二つの卵の殻を揺らす。
「どうするの!? ルヴナン!」
「母親の帰りを待つしかない!」
びゅうびゅうと吹き付ける風に耐えながら、二つの卵達は雛の母親を待った。
辛い時間が刻々と過ぎていく、ピヨはこの時間が永遠に続くような恐怖に襲われた。
「ルヴナン…もう……!」
「いや、来たぞ……母鳥だ!」
ピヨが弱音を吐きそうになった時、雛の声に母鳥が風の中を突っ切ってきた。
ルヴナンとピヨはその気配に希望を見た。
母鳥は二つの卵と雛の前で大きく羽を広げ、包むように風よけとなった。
ルヴナンとピヨはその羽の暖かさに、はじめて母親の安心感を覚えた。
しばらくして、暴風は去っていった。
母鳥は一度二つの卵に礼をいうと、我が子を乗せて巣へと帰っていった。
「良かったね。ルヴナン」
「ああ、とても暖かかった……」
二人は暴風が去った、健やかな風の音を聞きながら。
雛が無事に母鳥の巣に帰れたことを喜んだのであった。