表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生まれることも飛ぶこともできない殻の中の僕たち  作者: はるかず
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/40

第39話 星に手が届くように

 レアール、ポポ、アデリーの三匹が寝て、ピヨとルヴナンが残って星空の下で話していた。

 「ピヨ、君もお母さんにつらい思いをしているね」

 自分の心を見透かされた言葉に、ピヨは悲しくなった。ルヴナンはピヨと出会った時のことを知っている。たった一人、巣に残され寂しい思いをしながら震えていたことを。

「君も、お母さんとのつらい思い出がある。それは、きっと……君の勇気と、仲間たちとの冒険で癒していける」

 ピヨもそんな気がしていた。みんなといる時間が楽しく、心が楽になることに。

「でもきっと、みんなの力だけでは辛い経験を乗り越えられない。ピヨ、もう一度だけでいい。お母さんを見つけるんだ」

 その言葉にピヨはびっくりした。

 自分は捨てられた存在で、母からいらないものだと思っていた。だから、そんな自分を母がどう思うかなんて想像がつかない。

「きっと、お母さんは僕を迎えいれないと思う」

 ピヨは、震える声で言った。考えれば考えるほど、悲しくなる。もう考えたくないと思う。ピヨは自分の辛さから逃げたかった。

 だから、ルヴナンに聞いた。

「ルヴナンは、お母さんのこと、どうするの?」

 ピヨはルヴナンだって苦しいことを、伝えたかった。同じ気持ちだろうと、訴えかけたかった。

 ルヴナンは、怒りでもない、強い眼光で、握った翼を胸に当てていった。

「僕は、この呪いを止める。僕自身がこの世界に美しいものを発見して行くたびに、僕は僕以外の美しさに気づける。そうして、僕より下の子供や、君のような小さな弟のような存在に、呪いを引き継がないようにする」

 そして、優しい表情をピヨに向けた。慈しみの表情だった。

「その時、僕はお母さんから飛び立っていけるんだ」

 それは遠い、遠い旅路になりそうだった。ピヨが思うよりもっと、遠い。

 ピヨはその途方もない夢を聞いて、星空のようにきれいな願いに感じられた。


「そのために、僕たちも自由の谷を目指そう」

 ルヴナンは凛々しく言う。ピヨはどうして、自由の谷に行けばいいのかわからなかった。

「どうして? どうして、ルヴナン。僕たちが?」

「そこには、僕たちのような子がたくさんいるはずだ。彼らの悩みや生き方から、きっとヒントになることがある。そして、君のお母さんがどこにいるかも、きっと……わかると思っている」

 そして、ルヴナンがずっと悩んでいたことに気付いた。ピヨに気付かれず、ずっと考えていたこと。ピヨ以上にピヨのことを考えていたのだ。

「僕は助けられた。次は、君が」

 ピヨはルヴナンの翼の上に翼を重ねた。

 助かりたい。ピヨの小さな、小さな過去の置いて行かれた頃の自分を。

「うん……僕も、助かりたい……」

 ピヨはめそめそと泣いた。

 ルヴナンは片翼を更にピヨの翼の上に重ね、暖めてくれた。

 ピヨの心も、重ねられた翼のように暖かくなった。

次話で、第一部「たまごの章」を完結にします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ