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生まれることも飛ぶこともできない殻の中の僕たち  作者: はるかず
第二章

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35/40

第35話 助かった雛

 ピヨが目を覚ましたのは、河原の岸だった。

 全身はずぶぬれで、先ほどまで水を吸っておぼれていたことが分かる。そしてピヨを、心配そうにのぞき込む一匹の雛の女の子がいた。

 その水にぬれた姿の雛を見てピヨは分かった。

 自分を水から引き揚げてくれた子だ。

「アデリー!」

 ピヨは叫んで、その子に抱き着いた。柔らかい産毛がピヨの嘴をくすぐった。

「私が、分かるの? ピヨ」

 ピヨはすすり泣きながら、アデリーの首元をぎゅっと抱きしめた。

「わかるよ。わかる。アデリーが助けてくれたんだね」

 アデリーはそっとピヨの小さな翼の上に短い羽をかぶせた。

 二人はしばらく抱きしめあっていた。


「いいガッツだったね。ルヴナン。その細さからは考えられないよ」

 二匹の仲を見守りながら、ニヤッと皮肉っぽくレアールがルヴナンの翼に突っついた。

 ルヴナンも返して、バシッとレアールを叩く。

「君も、良いのしかかりだったよ」

 ルヴナンはレアールくらいにしか見せないような、厄介そうな顔で返事をする。



 川原は丸石で覆われていて、川のせせらぎが聞こえてくる。

 ピヨの心の籠った泣き声が、窪みになったこの谷に響いていた。


「ピヨ。苦しいわ」

 恥ずかしそうにアデリーがピヨに言うと、あっとなって離れ、ピヨは赤くした目をこすった。

「よし、これでみんな揃ったかな」

 ルヴナンが周りを見渡して、安全を確認しつつ、全員の頭数を確認した。


「あああーー!!」


 突然、レアールが大きな声を出す。

 全員がその大声に驚き、レアールの方を振り向く。

「ポポが! ポポがいない!!」

 動揺し、羽を逆立てながらレアールは今にも走り出そうとしていた。

 それを、ルヴナンが静止する。

「まて、いったい誰なんだい? それは」

 ピヨが察したように、レアールの顔を見た。

「友達なの?」

 レアールは涙目になりながら、頷いた。慌てながら、早口で説明する。

「ここに来るときに、丘から谷へと転がって来たんだ。その時、ピヨの戦う声が聞こえて、僕たちは転がって間に合うように岩に突撃したんだ」

 そのことを聞いて、全員が真っ青になった。

「はやく、いこう」

 ルヴナンが言い、アデリーがうなずく。

 ピヨは慌てるレアールを落ち着かせるため、ぎゅっと彼の翼を握りながら、一番の先頭を切って走り出した。

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