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生まれることも飛ぶこともできない殻の中の僕たち  作者: はるかず
第二章

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34/40

第34話 生きたい光

「誰かが戦ってる……!」

 知らぬ羽音と、叫び声。丘の上からポポは、緊急事態に気付いた。

「この声、ピヨだ……!」

 レアールは動けない状態で声に集中し、方向を見定めると指示をした。

「向こうだ! あっちへ転がして!」

 その性急さに、一瞬ポポは驚く

「え?」

「早くしなよ!!」

 ポポの大きな卵を怒鳴りつけ、二匹は大きく転がりだす

 

 丘をどんどん転がるうちに、川岸が見えてきた。

 川に向かって更に転がるレアール。それにタックルして押すポポ。

 二人はガタゴトと揺られながら、川岸に突撃しそうな勢いだ。

「割れちゃうよぉ~~!!」

 ポポの弱音の声が聞こえる。

「うぁあああーー!!」

 指示を出したレアールも、止まらなさに恐怖する。


 しかし、森を抜け向こう岸から飛び込んできた存在がいた。

 カモメだ。

 キーッと声を上げ、一匹のひよこを体につけて、掴んだ卵と共に川へと突撃する。


「ピヨーーーー!!!!」

 ガンッ!

 ビシ…………ッ!


 レアールの卵にひびの音が鳴った。

 石にぶつかり、そのまま上へ飛んでいくレアールの卵。

「(死んだかな――)」

 恐怖さえない一瞬に、終わったと思うレアール。


 バリバリと砕ける身体を想うと同時に、ピヨの事を想った。

「そういえば、ピヨに何も言わずに、出て来ちゃったな。どうせなら、最期に謝りたい。何も言えなかった、僕が嫉妬したから」


 光が、見えた。

 割れた境目から、光が差している。

 生への光。

 レアールは自然と翼を光へ伸ばす。


 ハッとなって、気がつくと殻が飛び散る中、上空を飛んでいた。

 レアールは見つける。川の中に引きずり込もうとするルヴナンの健闘と、気絶してもしがみつくピヨの勇気を。

「ピヨ……!」

 久しぶりに会えた感動と、はじめてみる二匹の姿。

 灰色のレア鳥のレアールはそのまま急降下し、カモメへのしかかった。


 キァアー!!!


 カモメの鋭い悲鳴が響くと、川の中へずぶずぶと沈んでいく。

 3匹と1つの卵が、川に流されていった。



 真っ暗な水底の中。

 一つの卵が冷たい川の中に沈んでいく。

 みんな自分のために戦っているのを知っている。でも眺めるだけだった自分に何が出来るって言うのだろう。もうこれ以上傷つけたくないし、傷つけるのは終わろう。

 そう、諦めよう。


『がんばってできない時は、力を抜いてみるのも大切だから』


 おばさんの励ましの声が聞こえる。

 あたたかい。水底とはちがう、柔らかな光。


「アデリー!!」

 記憶から響く、ピヨの懸命な自分を呼ぶ声。今なら――今なら、きっと。

 アデリーは自然と体を伸ばした。ふわりと、水の上をすべるような感覚がし、殻をスッと抜け出す。


 また、会いたい。みんなと、冒険へ――!

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