第34話 生きたい光
「誰かが戦ってる……!」
知らぬ羽音と、叫び声。丘の上からポポは、緊急事態に気付いた。
「この声、ピヨだ……!」
レアールは動けない状態で声に集中し、方向を見定めると指示をした。
「向こうだ! あっちへ転がして!」
その性急さに、一瞬ポポは驚く
「え?」
「早くしなよ!!」
ポポの大きな卵を怒鳴りつけ、二匹は大きく転がりだす
丘をどんどん転がるうちに、川岸が見えてきた。
川に向かって更に転がるレアール。それにタックルして押すポポ。
二人はガタゴトと揺られながら、川岸に突撃しそうな勢いだ。
「割れちゃうよぉ~~!!」
ポポの弱音の声が聞こえる。
「うぁあああーー!!」
指示を出したレアールも、止まらなさに恐怖する。
しかし、森を抜け向こう岸から飛び込んできた存在がいた。
カモメだ。
キーッと声を上げ、一匹のひよこを体につけて、掴んだ卵と共に川へと突撃する。
「ピヨーーーー!!!!」
ガンッ!
ビシ…………ッ!
レアールの卵にひびの音が鳴った。
石にぶつかり、そのまま上へ飛んでいくレアールの卵。
「(死んだかな――)」
恐怖さえない一瞬に、終わったと思うレアール。
バリバリと砕ける身体を想うと同時に、ピヨの事を想った。
「そういえば、ピヨに何も言わずに、出て来ちゃったな。どうせなら、最期に謝りたい。何も言えなかった、僕が嫉妬したから」
光が、見えた。
割れた境目から、光が差している。
生への光。
レアールは自然と翼を光へ伸ばす。
ハッとなって、気がつくと殻が飛び散る中、上空を飛んでいた。
レアールは見つける。川の中に引きずり込もうとするルヴナンの健闘と、気絶してもしがみつくピヨの勇気を。
「ピヨ……!」
久しぶりに会えた感動と、はじめてみる二匹の姿。
灰色のレア鳥のレアールはそのまま急降下し、カモメへのしかかった。
キァアー!!!
カモメの鋭い悲鳴が響くと、川の中へずぶずぶと沈んでいく。
3匹と1つの卵が、川に流されていった。
真っ暗な水底の中。
一つの卵が冷たい川の中に沈んでいく。
みんな自分のために戦っているのを知っている。でも眺めるだけだった自分に何が出来るって言うのだろう。もうこれ以上傷つけたくないし、傷つけるのは終わろう。
そう、諦めよう。
『がんばってできない時は、力を抜いてみるのも大切だから』
おばさんの励ましの声が聞こえる。
あたたかい。水底とはちがう、柔らかな光。
「アデリー!!」
記憶から響く、ピヨの懸命な自分を呼ぶ声。今なら――今なら、きっと。
アデリーは自然と体を伸ばした。ふわりと、水の上をすべるような感覚がし、殻をスッと抜け出す。
また、会いたい。みんなと、冒険へ――!




