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生まれることも飛ぶこともできない殻の中の僕たち  作者: はるかず
第二章

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33/40

第33話 悲鳴

 森へ入ったピヨとルヴナン、そして卵のアデリー。

 木陰の上をコロコロ転がるアデリーを後ろに、ルヴナンとピヨが前方をトコトコ歩く。突如、上の方からキー!と、いう鳴き声が森中に響いた。

「この音、聞いたことがある……」

 アデリーが転がるのを止め、全神経を越え集中させた。

「カモメだわ! 私を巣から攫ったやつと同じ!」

 そして気付くと、パニックになって転がりだした。

 ルヴナンとピヨは置いていかれ、後ろから走ってついていく。

 小動物たちが草むらへ逃げ、鳥たちが群れとなって飛んでいく、


 追いかける内に、森に響いていた声は消え、木のざわめきも消えていた。

 2匹と1個が立ち止まる。

「……静かになった。ね」

 ルヴナンが言った、その時だった。


 フクロウとは違う音のない羽音、それが飛び掛かってきたのだ。

 スッと卵のアデリーを目の前で捕まえ、フワッと高く飛ぼうとする。

 ピヨは間髪入れず、果敢に飛び掛かった。

「ピヨ!!」

 ルヴナンの声が下へ下へと遠くなる。

 羽にしがみつき、低空飛行を続けるカモメにピヨは言う。

「アデリーを降ろせ!」

 しかし、カモメはピヨを無視して振り落とそうと揺らす。

 木の下を飛ぶカモメの後ろを、必死に下でルヴナンがついていく。

「アデリー、生まれるんだ!」

 ピヨはアデリーに訴え掛ける。震えながら足に捕まえられているアデリーは動けない。怖がりながら、祈るような声だけがする。

「無理よ! 私! 頑張っても……! 無理だったの!」

 自分を信じられない怖さを、戦う勇気を持てないアデリー

「生まれるんだ! 生まれなきゃ……! アデリー!」

 ピヨの必死の訴え掛け、辛い思いと汗が同時ににじみでる。

「死んじゃうよ……!!!!」


 死。それは、ピヨにとって身近でありながら、果敢に飛び掛かった対象でもあった。それは母親と兄弟に捨てられ、ずっと巣の中にいるなかじわじわと迫る恐怖のようなものだった。時に蛇、時にフクロウの形をしながら襲い掛かってきた。

 でも、今、その形が鳥となって友人に襲い掛かってきている。

 ピヨは負けられなかった。


 羽から瞬間的に手を放すと、一気に飛んで体の方へしがみついた。

 不意を打ったタックル。体重がかかり、カモメはバランスを崩した。

 気づけば低空飛行していたカモメが、川の中へ突撃する。


 バシャン!


 落ちる時。見えたのは、岸から飛び込もうとするルヴナンの姿。

 美しく弧を描き、水鳥らしい翼を広げて、その青い身体を川に潜らせる瞬間。


 水の境界がぼやけて沈む。

 落ちる。落ちる。でも、離すものか。

 この手だけは。

 ピヨは死の恐怖と戦うアデリーを守るために、水に飲まれても、手を離さなかった。

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