表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/33

第25話 持てる力をもって

 西の湖にいた白鳥のお母さんに聞いても、レアールは帰っていなかった。

 森の北にいたモグラのおじさんに聞いても、レアールは見られていない。

 南は川にふさがれていたので、東山から流れる川の上流に向かってピヨとルヴナンはレアールを探しに出かけた。目撃情報から、東に行ったと判断したのだ。


 常緑樹の森を抜けて、東の方向を見失わないように川沿いにピヨとルヴナンは歩いていく。途中で落ちたドングリを物珍しそうに取ったり、流れる大きな川からのぞく亀に手を振ってみたりしていた。

 先頭をずんずんと歩いていくピヨに、すこしルヴナンは心配になっていった。

「ピヨ、疲れたなら言うんだよ」

「うん、でもレアールが待ってるから」

 頑固そうにピヨはルヴナンに頷き返す。

 ピヨの中でレアールは寂しそうにしていると思っていた

 そのきっかけが、ピヨが見た朝日をレアールが見れなかったことを悲しんだのなら、ピヨにとっても辛かった。

「(レアールは今頃、一人っきりで転がっているんだ)」

 からかってくるレアール、ちょっかいを掛けてくるレアール、悲しい過去を持ちながらも気丈なレアールが辛そうにしている。ピヨは悲しかった。

 だからこそ、ピヨはやる気満々だった。

 前のめりになりすぎて、こけそうになるくらい勇気と熱意に燃えていた。

 ルヴナンを助けた勇気をもって、直ぐ探しに行くことを決断できた。

「(きっと迎えに行く――)」

 そんな決意を新たにして、ピヨは川の縁を歩いていた。


とぽん、とぽん、ざぶん


 なにか、川から流れてくる音がする。

 小さなたまごが、東の山の上流からピヨたちの方へ流れてるのが見えた。

「ルヴナン! たまごが!」

「ああ、助けよう」

 ピヨは直ぐ飛び込んだ。ルヴナンが草むらを引っこ抜く作業を始めるのを他所にだ。ピヨは泳いだ。懸命に手足をバタバタさせながら、自分で泳いでいこうと無理をする。


がば、がぼ、がばば


「ピヨ! 捕まるんだ!」

 ピヨが溺れそうになったので、ルヴナンはピヨに草のロープを投げた。ピヨはロープにつかまって、岸に引き上げられた。ピヨは自身の勇敢さがどこかに行ってしまったようにがっくりと肩を落とした。やっぱり、ピヨはピヨだった。こんなピヨはピヨでしかないのか?

――ピヨがあの時発揮した勇敢さはどこへ行ってしまったのだろう……?

 ピヨは泣き出しそうになるのを、ううッと我慢した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ