第25話 持てる力をもって
西の湖にいた白鳥のお母さんに聞いても、レアールは帰っていなかった。
森の北にいたモグラのおじさんに聞いても、レアールは見られていない。
南は川にふさがれていたので、東山から流れる川の上流に向かってピヨとルヴナンはレアールを探しに出かけた。目撃情報から、東に行ったと判断したのだ。
常緑樹の森を抜けて、東の方向を見失わないように川沿いにピヨとルヴナンは歩いていく。途中で落ちたドングリを物珍しそうに取ったり、流れる大きな川からのぞく亀に手を振ってみたりしていた。
先頭をずんずんと歩いていくピヨに、すこしルヴナンは心配になっていった。
「ピヨ、疲れたなら言うんだよ」
「うん、でもレアールが待ってるから」
頑固そうにピヨはルヴナンに頷き返す。
ピヨの中でレアールは寂しそうにしていると思っていた
そのきっかけが、ピヨが見た朝日をレアールが見れなかったことを悲しんだのなら、ピヨにとっても辛かった。
「(レアールは今頃、一人っきりで転がっているんだ)」
からかってくるレアール、ちょっかいを掛けてくるレアール、悲しい過去を持ちながらも気丈なレアールが辛そうにしている。ピヨは悲しかった。
だからこそ、ピヨはやる気満々だった。
前のめりになりすぎて、こけそうになるくらい勇気と熱意に燃えていた。
ルヴナンを助けた勇気をもって、直ぐ探しに行くことを決断できた。
「(きっと迎えに行く――)」
そんな決意を新たにして、ピヨは川の縁を歩いていた。
とぽん、とぽん、ざぶん
なにか、川から流れてくる音がする。
小さなたまごが、東の山の上流からピヨたちの方へ流れてるのが見えた。
「ルヴナン! たまごが!」
「ああ、助けよう」
ピヨは直ぐ飛び込んだ。ルヴナンが草むらを引っこ抜く作業を始めるのを他所にだ。ピヨは泳いだ。懸命に手足をバタバタさせながら、自分で泳いでいこうと無理をする。
がば、がぼ、がばば
「ピヨ! 捕まるんだ!」
ピヨが溺れそうになったので、ルヴナンはピヨに草のロープを投げた。ピヨはロープにつかまって、岸に引き上げられた。ピヨは自身の勇敢さがどこかに行ってしまったようにがっくりと肩を落とした。やっぱり、ピヨはピヨだった。こんなピヨはピヨでしかないのか?
――ピヨがあの時発揮した勇敢さはどこへ行ってしまったのだろう……?
ピヨは泣き出しそうになるのを、ううッと我慢した。