第24話 生まれなければいいじゃない
草むらが広がる大地の柔らかい草原。
朝日が上に上がってくるのを感じながら、二つのたまごが草むらの上で見合っていた。 レアールは突然のたまごの同房の出現に驚いたが、気を取り直してイライラしながら名前と事情を聞いてみることにした。
「君は?」
「僕? 僕はポポだよ」
「へぇ? 僕はレアール。なんで泣いてたの?」
少ししおれた声で、ポポはレアールに話す。
「お父さんが今日中には生まれろって言って来たんだ」
「生まれなければいいよ」
「え!?」
突然の回答にポポと名乗るたまごは驚く。
それはレアールの当てつけと、自分への生まれたくない願いが籠った言葉だった。続けてとどめを刺すように、レアールは言う。
「生まれなければずっと、現実を知らなくていい」
「そうか! そうなんだ! 生まれなければ、知らなくていいもんね!」
何かを分かったように、明るい声でポポは言った。
「そのお父さんってヤツに言ってやりなよ。生まれたくありませんってさ」
「うん……でも、僕は蛇の巣に攫われて来たから、お父さんは今いないんだ」
それを聞いてレアールはたまごの背がぞわっとした。
「それを早く言いなよ!! ここ、蛇がいるんだね!?」
「うん、僕を巣に置いて出て行っちゃったけど、いるよ」
レアールは会ったばかりのたまごの背を押した。
「すぐ逃げるよ」
それに対して、のんびりとした声が帰ってくる。
「どうして? 生まれたくないのに? 死ぬのは怖いの?」
「そうだよ、馬鹿! 転がって!」
叱咤するレアール。この暢気なたまごを置いて去ってやろうか?と憎らし気な気持ちになったが、もう押し出してしまったからには押すしかない。
「僕、転がったことないんだよぉ~~」
情けない声を無視して、レアールは大きいポポのたまごを草むらから押し出した。
ゴロゴロと転がっていくのを確認すると、自分も後ろから追って逃げた。