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第21話 僕は君たちにはなれない

 常緑樹の森の木の下で、ピヨは生まれて初めて早起きをした。

 横に羽を伸ばしたルヴナンが寝ていた。しかし、たまごのレアールがいない。

 見回すと、レアールは森から出て、突き出した断崖の上に転がっていた。

 遠くには連なる山々が見え、白んだ空と光る雲で絶景だ。

「レアール。眠れないの?」

 ピヨが後ろから、転がっているレアールに声をかける。

 レアールはむくりとたまごを起きさせると、たまごを俯かせて頷いた。

「うん。眠れないんだ」

 不安そうな声を出すレアール。

 ピヨはレアールの横に座って、黄色い脚を放り出した。

 3本立った、まだ柔らかい爪先は、あの大蛇を倒した立派な脚だ。

「ねえ? ピヨは、生まれるのは怖かった?」

「うん、生まれるのって勇気がいる」

「そうか。僕は……怖いんだ。現実が、怖いんだ……」

 頭を抱えるように殻が震えるレアール。

 ピヨが突如、感嘆の声を上げた。

「わあ! 朝日だよレアール。初めて見る!」

「朝日……?」

 感動に打ち震えるピヨ。生まれて初めて見る朝日だった。

「たまごが割れたときの光みたいだ……!」

 キラキラと山の上で光る白い朝日は、ピヨの誕生を歓迎したように光っていた。

 空は白と青が混ざったキャンバスのように、朝日に照らされていた。

「(僕は、ピヨと同じ物を見れない。感じれない)」

 レアールは思った。2人とは同じ物をもう感じれない。たまごが割れて、見える高さが違ってしまったのだ。

 木の後ろから、ピヨの声を聞いてやってくるものがいた。

「ピヨ。寒いから、もう一度、寝よう。まだ朝早い」

 ピヨを自身のまだ生えたばかりの羽のうちに入れたのは、ルヴナンだった。そんな二人が去る気配を見せたのを感じて、レアールは邪魔しないように言った。

「僕は、まだ朝焼けを見てるよ」

 ピヨは立ち上がってレアールに羽を振った。

 ルヴナンが落ち着いた声でレアールに言う。

「うん、来るのを待ってるよ」

 去り際に、二人は朝日を見た感動を共有しあって話していた。

 レアールは初めて仲間の中で孤独を感じた。

 孤独の中、日差しがする方へ、レアールはたまごを傾けたのだった。

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