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私から全てを奪っていく義妹から逃れたい  作者: しののめ


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12-2

 学園には、本格的な舞踏会を開催できる大広間を備えた施設がある。受付のための広いロビー。中央の階段には、ふかふかの赤い絨毯。会場は二階になっており、豪奢なシャンデリアが広々とした広間を照らす。


(さすが、王室御用達しの学校だなぁ)


 会場に到着した私は、感嘆の溜息を漏らす。


 さて、舞踏会には、生徒たちだけではなく、その親……つまりお偉方ね……なんかも参加しているようだ。親たちにとっても、絶好の社交場ということだろう。

 美しい花々で華やかに飾り付けられた会場。そして色とりどりのドレスに身を包んだ女性たち。何から何まで豪華絢爛である。


 そんな中、チラチラと私を見る興味本位の視線を感じる。


 ステラが用意してくれたドレスを身につけた私は、パートナーもいないため、一人、壁の花だ。誰一人、話しかけてくる人もいない。


(予想どおりね)


 舞踏会に参加しなければならなくなったことは、ルイーゼにも伝えておいた。ルイーゼはアメリたちの陰謀に大いに憤って、


「私も行きます」


と息を巻いていたけれど、そもそも招待状がなければ入れないので、断念してもらった。


 ……暇を持て余し、何気なく周囲を見渡すと、会場の中心にいて忙しそうにしているアメリの姿が視界に入った。色んな人からダンスを申し込まれ、様々な役職の人たちからの挨拶や歓談に応じている。まさに舞踏会の主役だ。

 そんな彼女は、ちらちらと私の様子を横目で見つつ、愉快そうな顔をしているけれど、私の方に近づいたりはしない。


 アメリ様のお姉様ですか、なんて言われて、うっかり私と人と関わらせたくないのだろう。


 何にせよ。


(いつになったら帰れるんだろう)


 手持ち無沙汰すぎて、既に舞踏会の終わりの時間を待ち望む心持ちだ。


(一応、顔は出したんだから、途中で帰ったら駄目かな……)


 尻尾巻いて逃げた、と思ってくれてもいいから。

 と、そんなことを考えているところ、誰かが私の方に向かって来ていることに気付いた。

 

 その人物は女性で、なんというか……名前は知らないけれど、顔は何となく見覚えがある。いつもアメリを取り巻いている御令嬢の中の一人だ。

 わざわざ私の姿を見つけて近付いて来た彼女は、


「ごきげんよう、アイリーン様」


と、ドレスを指で優雅に摘んで挨拶してくる。無視するわけにもいかないので、


「ごきげんよう」


と無難に返す。それに対し彼女は、


「お一人ですか?」


と重ねて問いかけて来た。


 私の側に誰もいない……否、アメリが私のパートナー探しの妨害していることを知ったうえでの言葉だ。その頬に浮かぶ笑みは、人の悪い、にやにや笑いだった。


 やな感じ。


 でも、それにいちいち反応するには、アメリの嫌がらせに慣れすぎていた。

 私は言葉で答えず、にこりと微笑んだ。曖昧さも嫌味を躱す社交術の一つだからね。


 私の動揺を誘うつもりが、全く私が堪えていないので、御令嬢はちょっと苛立ちを覚えたようだ。


「貴女も大変ですわね」


 言葉だけ聞くと、私を労っているように聞こえるけど、歪んだ表情がそれを裏切っている。


「妹が優秀すぎて、お姉様の立つ背がありませんわね。あまりに平凡すぎて、お可哀想そう」


 うーん。すごく煽ってきたなぁ。


 それで妹って誰ですかね。ルイーゼですか、それともアメリ? ……妹運が悪いなぁ。

 でも、どちらの妹にせよ彼女の言葉は事実なので、私はぐうの音も出ない。ただ、こうも思うのだ。


(いや、平凡って、結構尊いことなのよ?)


 普通、最高。


 まあ、アメリの取り巻きに、そんな感情は理解できないだろう。彼女たちはアメリの「特別さ」に重きを置いているのだから。


 と、その時。


 ふと私の隣に影が差す。同時に、するりと腰に手を回された。

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