表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私から全てを奪っていく義妹から逃れたい  作者: しののめ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/39

12-1 舞踏会への誘い

 王立学園というものは学業に専念するための場所だ。とは言っても、王侯貴族のための学園でもあるため、社交や礼儀作法にも力を入れている。

 その一環として、学内舞踏会なんかが定期的に開催されていたりする。


 その舞踏会は一年に四回、開催されている。そのうちの三回は、マナーの授業の一環として行われるため、全員参加が基本だ。別にドレスを着るわけでもなく制服を着てダンスをし、立食パーティーでの振る舞いを学ぶ場だ。


 でも、近く行われる舞踏会は特別で、規模も最も大きいものだ。


 これは他の舞踏会と違って誰でも参加できるわけではない。外部のやんごとない来賓も呼ぶ、選ばれた者だけが参加できる格式高い舞踏会……らしい。


(つまり王族や貴族と招待客だけってことね)


 学園は優秀な一般市民も積極的に受け入れているんだけど、どうしても、そういう区別は無くせないようだ。


 まあ、でも私も基本、一般市民枠みたいなものだから、この舞踏会には参加する必要もなさそうだ。ありがたい。


(ほんと、舞踏会って気を遣うことしかないものね)


 私も一応貴族の娘だから、舞踏会の経験がないわけではないし、礼儀作法も叩き込まれてはいるけれど、苦手なものは苦手だ。


 ……と、そんなお気楽なことを考えていた時が私にもありました。


「お姉様、少しよろしくて?」


 麗らかな昼下がり。昼食に行こうと席を立った私の元に、アメリとその取り巻きたちが立ちはだかった。

 心底うんざりしたけれど、だからといって無視することもできない。


「何か御用ですか?」


 私は儀礼的に口を開いた。その表情が気に入らなかったのか、アメリは口に手を当てて、


「まあ、不細工なお顔。そんなことでは、殿方に相手されませんわよ」


と言って笑った。取り巻きも、


「本当に、そのとおりですわ」


と相槌を打つ。

 余計なお世話だわー。……って心の中では思っているけれど、実際は穏やかな表情を作って相手の出方を待つ。

 アメリも、そう時間がないらしく、反応に鈍い私の手に何かを押し付けた。

 

「私は貴女みたいに暇ではありませんし、要件は手短に済ませましょう。実は、これをお姉様にお渡ししようと思いまして」


 それは白い封筒だった。

 この学園の校章の透かしが入ったもので、学園の催しの際にしか使用されないものだ。表面にはお洒落な書体で「招待状」と書かれてあった。


 招待状。……不吉な響きだ。


「これは……」

「学園で開催される舞踏会への招待状ですわ」


 言ってアメリがくすりと嗤った。


「畑を耕すような貧しい暮らしをしていらしたお姉様に、華やかな舞踏会を経験していただきたいのです」


 なんて、善意のような理由をくっつけてきて、取り巻きの子たちから「流石アメリ様、このような下賎な者にもお優しい」なんてお追従を受けているけど……何を企んでいるのやら。


 だいたい、この子はどうして私に、こんなに絡んでくるのだろう。家から追い出した、で満足してくれませんかね?


 それにしても。


(舞踏会か……)


 舞踏会は、基本的に参加者はパートナーと一緒に参加するものなんだけど、アメリが、


「でも、貴女のパートナーになってくれる殿方なんているのかしら」


と意地悪く微笑んだから、魂胆は分かった。


 ……私のパートナーにならないよう、ご丁寧に各方面へ根回ししているのだろう。


「まあ、パートナーがいなくても舞踏会に参加できないわけじゃないから、大丈夫よ」


 パートナーがいなくても、こうして大々的に精霊の愛し子のご招待を受けているのだ、出席しないわけにはいかない。


(気が重いなぁ……)


 何でも手に入れているはずのこの子は、どうしてこうも私を目の敵にするのだろうか。自慢じゃないけど、私って何の脅威にもならないと思うの。


 しかし、舞踏会に一人で参加か。好奇の目に晒されるから、さすがにちょっと居心地悪いし、悪目立ちしそうだ。


(恥をかきに行くようなものだよね)


 もちろん、アメリはそれを狙って、私を招待したわけだけだろうけど。


 憂鬱な気分の私とは正反対に、言うことを言ったアメリたちは、


「では、ごきげんよう」


と、満足そうな様子で去って行ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ