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5.世界観〜文明の発展度と国家体制

スピンオフの1本目が完結したので、久々に執筆ノートの続きを投稿します。

 全体的なプロットをまとめた後、各エピソードの具体的なプロットを書き下していきますが、その時に世界観を詰めていきます。

 プロットと世界観とキャラクター設定を同時進行――あるいは行きつ戻りつ――しながら固めていきます。大まかな起承転結を考え、具体的なイベントや情景描写を作り出すために世界観を明確にし、「この世界観ならこういうイベントが起こせる」とか、「このイベントを起こすにはこういう世界観でないといけない」とか、「この世界観だとこういう組織機関があり、こういう役割の人物がいるはず」とか、世界観によって詳細が導き出されていきます。


 一番最初に設定を考えるのは世界そのもの、「箱庭」やそれを管理者やオーバーロードがなぜ管理しているのかといったところですが、この投稿ではさすがにちょっと割愛。


 その次に、主舞台となる箱庭の中の、国家体制や文明度をメモに考えながら書き出していきます。地名は後から考えることにし、この時点では「王都」「隣国」「遠国」といった役割的な仮称です。


■メモ抜粋


――――――――――


王制国家が複数あり、貴族社会でもある。

魔法や亜人種は実在しないがおとぎ話には登場する。

宗教や聖女信仰はある。

18〜19世紀?の西欧並の文明度。

王子がいる国は専制ではなく議会制に移行しつつある。


――――――――――


 文明の進み具合は、6話を書く頃には「19世紀前半」となりました。18世紀だと特にファッションが古すぎるし、19世紀末だと蒸気機関や電気が登場してしまい、進みすぎてしまうように思われたためです。


 この時代はもう中世ではなく近代です。


 現実社会とは少しずれますが、この世界にまだ登場していないものは

・電気

・蒸気機関

・ガス燈

・自転車

・新聞

などです。


 時代を決めると、書けるもの・書けないものの線引きができるので、街の風景や登場する道具などの情景描写をしやすくなります。

 蒸気機関がないので蒸気船もなく、すると最新鋭の船はクリッパー船です。(7話②)

 自転車はまだないので、逆にこれから開発する、というイベントを作れます。(14話⑧)

 新聞はまだありませんが、前身となるかわら版はあります(絹とオレンジ#16)


 婚姻についての考え方や国家体制についても、考えをまとめていきます。

 メモしながら自分自身とディスカッションする感じです。



■メモ抜粋


――――――――――


王子の国は、まだ王太子の婚姻が国家存続や勢力バランスにとって重要な意味を持つ。

配偶者は国内の貴族よりは近隣国の王族から選んだ方が安全保障になる。

他国の脅威が低く、地勢的に長く安定しているようなら国内から配偶者を選んでも大丈夫だろう。


立法については法案は王も出せるが議会の承認が必要

行政は王が最高責任者だがすべての決裁を行うわけではない

王の代理執行者が分野ごとに任命されている

結局、王が行うのは舵取りであり、だいたいの裁決は代理人(宰相など)が行う

そういう政治体制では、王太子の身分で政務に関わる機会はどれほどか?

王宮に出仕するよりは、どこかの領地経営で経験を積ませるのがいいのでは?

若年のうちは○○候として封禄を確保しつつ、18歳くらいから領地経営に本格的に関わるようにし、第一位の王位継承権を持ったまま領地を治め続けるのではどうか?


王は崩御するまではその地位にあり、存命中に譲位はしないだろう。

そうすると長生きされると王太子が王政に関わる機会はだいぶ遅くなるような。

適当な時期に王都王宮に出てきて、軍かどこかの省のトップにつけて仕事をさせるとか

そういう人生を歩ませるとすると、嫁探しに出かける暇はないのでは

王のほうが安定して治世しているなら、王太子がしばらく外遊してても(やらかさなければ)大丈夫かも。


――――――――――


 作中では、自国内の貴族との婚姻の方が当然という雰囲気なので、上記のメモを踏まえて「今は以前よりも平和なのだ」という情勢になります。ということは以前は平和ではない時代があったわけで、それが念頭にあると、国王陛下の昔話を聞くとき「父上の若い頃は、その前の時代の戦乱の空気がまだ残っており」(6話③)などと一言入れたりできるわけです。


 王子は国政にどの程度関わるか?も考察してます。

 コミカライズ作品でよく、王子が学園の生徒でありながらも執務室で書類に埋もれている姿を見かけますが、あれは何の仕事をしているんだろう?と不思議でした。実際ああいう仕事をするものなのかと考え、うちの世界では少なくとも学生のうちはやらないだろうと結論づけました。

 第三部に入る頃に、大人なので就職先を決めましたが、条件未達で領主にはなれないし国王の補佐も宰相がいるから席はないし、で宰相付秘書官という役職を作りました。官僚ではありますが、現代なら議員二世が先輩議員の秘書をやるようなものです。


 立太子すると叙爵され○○公と呼ばれる、という例が英国にあったので、それを元に「七歳で立太子しソロン公を賜った」という設定になりました。七歳では資産管理できないので、成人したら自分で管理できるようになることとし、そこから一人前とみなすまで=結婚するまで≒「結婚相手が見つかるまで、領地を引き渡さない」という、本作品の柱となる試練に王子が取り組まざるを得ない理由が成り立ちました。


 また、安定した治世という情勢は、王子が留学や異世界に出かける余裕がある根拠となり、プロットを実現させられる世界観をこうして用意できました。


 遠国トスギルは聖女信仰を中心に宗教と国家の距離感や精霊魔法について設定していきます。トスギルの設定についてはまた別稿で。

 隣国アルクアは、あまり細かい設定がありません。一夜だけのコンパクトな話ですし、細かく考えるよりも早く話を書いてしまいたかったんだと思います。今だに第一王子の名前さえ決まってません。余白がある分、後からうまく設定を付け足してストーリーを支えることができたのは良かったです。(6話③、9話②)


 あえて深入りしないようにした部分もあります。

 学園です。


 乙女ゲーム由来とされる悪役令嬢ものでは登場人物たちがティーンエイジャーということもあり、学園に通うのが当然です。その場合の学園は、コミカライズ作品で見かける限りでは、読者が想像しやすいように現代日本の高校の運営がそのまま取り入れられている様子です。


 本作では、「学園自治組織として生徒会があり、生徒会は王子や側近の有力貴族で固められている」というスタイルは採用しませんでした。学園は学びの場であるならば、有能な若者を多数育てて将来国の発展に寄与させるのが目的です。生徒会運営は、リーダーシップの経験を積む機会と言えますが、それを王子や側近が奪ってしまうことになるのはいただけません。学問の自由にも反する気がします。知識を追求するという営みは権力によって妨げられてはいけない。王族が学園の中で権勢を振るえる立場になってはいけないのです。


 そもそも、自治組織は存在するのでしょうか? 19世紀前半相当だとまず男女別学でしょうし、全寮制かもしれません。生徒会ではなく寮の自治組織が力を持つかもしれませんね。

 本作の学園では、通学生と寮生がいるようです。全寮制ではないので、寮の自治組織は全校生徒への影響を及ぼせません。学園を社交界と見た場合は、社交コミュニティ――フラタニティとソロリティ――が影響力を持つでしょうか。

 でも社交コミュニティの文化も今ひとつピンとこなくて、王子や悪役令嬢などがどう関わるかもあまりアイデアが湧きませんでした。


 深入りすると非常に面倒くさそうなので、学園を舞台にしたエピソードは敬遠し、3話以降は学園の外でヒロインと出会わせることにしました。


 なろう世界なので、あんまり現実的に考えなくてもいいんですが。


 そう言えば制服の有無は未設定でした。今改めて考えると、制服なしにしたいですね。産業革命以前で、既製服や大量生産はまだできない状態だと思います。デザインや素材が同一の服を支給することはできませんが、ドレスコードはあり、受講者の礼儀として男子はジャケット(時代的にフロックコート?)、女子はデコルテを出さないドレスとかを着てくるように、なんて決まりがあるかもしれません。

 そんな服装でビビアンが木登りしたり廊下をどたばた走るのは、だいぶお転婆ですね。

次回は、地名などの命名ルールの話でもしようかと思います。

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