16.(参考)プロットと詳細プロット
以下は、第12話「レイディ・マーガレット,ザ・カウンテス・オブ・クインシー」の「プロット」と「詳細プロット」です。
前回の話だけではこの2つの違いがわかりにくかったと思うので、例として挙げておきます。
なお、詳細プロットは本文で上書きしていくため残ることがあまりありません。この例でも、公開中の第12話①〜⑥のエピソードのうち、①⑤⑥に相当する部分のみがたまたま残っており、②③④は失われています。
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プロット(2022/9/12)
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アーノルドはフィニークのお土産が効いて、そこそこの役どころに就任できた。
遊学の成果か、国王も満足するほどの豊かな知識や交渉力、臨機応変なスタイルの戦い方などを身に着け、精悍な雰囲気になっていた。
社交界にも顔を出すのは仕事の一環となる。有能な後継者として期待を一身に集めている。
この調子なら最早放っておいても相手に困らないので、依頼はもう継続する必要がない。
終了しようと言うべきだが何となく先延ばしにしてしまう。
復帰した従者Aにも言われたため、シェヘラザードを尋ねる。
当たり障りのない近況報告をしつつ、切り出しかねている。
シェヘラザードの方から、依頼を継続しますか?と水を向ける。
アーノルドは少し言いよどみつつ、君に心当たりがあるなら、と承諾してしまう。
少し時間がかかる、とシェヘラザードは言う。
アーノルドは夜会でうら若い令嬢?に出会う。
定番パターンのように感じて名を確認すると伯爵夫人=人妻であることが判明する。
「シェ・ヘ・ラ・ザー・ド〜〜〜〜!!」
内心、とうとう人妻か!と怒りを感じるアーノルドだが、立ち去れない雰囲気のためしばらく話を聞いてやる。
夫は非常に嫉妬深くて恐ろしいとの噂だが、夫人によれば実際は毛嫌いしており指一本触れないとのこと。
通常は屋敷に閉じ込め社交させない。
今夜はどうしても出席しないといけない場のため、しぶしぶエスコートしてきたそうだ。
夫人の経歴に問題があってのことだと彼女は考えている。
最近、白い結婚だからと離縁を言い渡されているという。
そういった話をしているうちに、件の嫉妬深い伯爵が現れ、アーノルドに苦言を呈する。
そんなに大事ならもっとましに扱え、とアーノルドは忠告する。
帰る手配をするために伯爵がいったん立ち去ったとき、アーノルドは夫人に伯爵は噂通りに嫉妬深いのだと言う。
苛烈な経歴があるため自分が夫人に手を触れていい存在ではない、できればもっとふさわしい相手に出会い直してほしいと考えているのではないかと解説する。
しっかり話し合ってみる、と言って夫人は去っていく。
アーノルドは深いため息をついてベンチに座り込む。
シェヘラザードが現れ、夫人は相手ではないと告げる。
アーノルドにはそんなことどうでもよく、ただいつもいつも自分がお呼びでないことに傷ついていた。
勘違いされたり、やってることが場違いだったりしたときの気まずさ、いたたまれなさ
見下されたり体よくあしらわれたり、愛想が良いと思ったらスペックしか見られていなかったり。
それはお互い様なのかもしれないが、できれば自分を愛してくれる人を愛したい。
そう望むのは馬鹿げているだろうか。
うちしおれるアーノルドを見て、シェヘラザードは励ますことにする。
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詳細プロット(2022/10/29〜11/1)
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※注
・12話②「私は訪問者に苛立った」③「土産話は父上と」④「世間話は旧知の仲と」の詳細プロットは失われています。
・途中で壁打ちが入っています。書き方に台詞やアーノルドの独白との区別がないのでご注意ください。
・後半の夜会は、公営事業で大きな橋の落成式典とかがあってそれに続くパーティーという建て付けでした。
・本文に書きくだす際に、さらに変更した箇所もあります。
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■前半
フィニークの商船に乗り込んでくる二人の若者
それが二年前に消息を絶ったガレンドールの王太子とフィニーク総督の息子だった
彼らは二年前、フィニークより手前にある諸島が快速線と交易を求めてきたのに関心を持ち、交流のために船を降りた。
貴人のわがままを聞いて二日だけ停泊していると、諸島の交易代表者が書簡を持って来た。
諸島に別途停泊していた探検船に乗り換え、南洋探検に着いていくと言い出したのだ。
総督に挨拶する前に予定を変えて申し訳ないとの詫びが添えられていた。
彼らは、探検船と言いつつ半ば海賊のような者たちとともに南洋から西方大陸南部の沿岸や島を回る冒険をしてきたのだ。
最終的に船を失ったが何とか諸島に戻り、そこから二人は帰還したということだ。
という顛末を聞いてアーノルドは頭を抱えた。
それ、本当に丸く収まるのか? 俺は単身で外交もまともにできないボンクラだと間違いなく思われているよな…
父上に廃嫡されたりしてないよな…?
そもそもこの話、辻褄が合うのか?
海賊と一緒に秘宝を取りに行くクエストがあっただろ
あのネタを使えってことだよな?
アーノルドはあのとき魔法の相性が悪くてあまり使わなかったから、魔法の話はしなくていい
魔物や怪物も法螺話として聞いてもらえばいい
とりあえずそれでフィニークへやっとたどり着き、アーノルドも無精ひげを片付けてやっとさっぱりした
もともとの端正さはそのままに、より精悍になった顔つきで総督の前に現れた。
アーノルドは、二年前に彼を迎える準備をしていたことでやんわり苦言を言われ、時ならず現れたことでまた苦言を言われていた。もともと預かるのも迷惑だったので二年分の滞在費が浮いたことと、生還してくれたことでガレンドールにも申し訳が立つことで、それらは相殺された。
形ばかりの歓待を受け、これ以上迷惑になるわけにはいかないと言ってアーノルドはガレンドールへ引き返すことにした。
が、フィニークに到着したことを伝える書簡とその返信を待って二、三週間ほどは滞在せざるを得なかった。
滞在中にユーシェッド家を訪問したが、私と会うことはなかった。
面識がないことになっていたし、未婚の女性が男性客ましてや外国人に会うのは憚られた
会えるのは女主人だけだ
代わりに彼は私の二人の兄、ハーフェズとシャヤールと面識を持った。
この辺の経緯全部カットして、もうガレンドールの店にいて落ち着いていて、しれっと過去話として触れるくらいでもよくない?
経緯書いてるとフィニークの観光案内になってしまう
針の筵は元から決まってたことだ
俺が受け流せるメンタルになればいいだけだ
→少年マンガキャラっぽくなるからNGで
途中下船したら、総督は「知らんわ」って思うだろうし
帰ってきたら「今更か」って思うわな
とっとと祖国に帰ってほしいけど義理として一報入れてからがいいよな
やっぱ上記の流れは正しい
異世界の体験を話していいのか?
実際に探検船が行ってたら矛盾が出るだろう
行って帰ってきた実績がないから、あなたが話せばそのようにこの箱庭の地勢も作るわ
魔法は精霊魔法に置き換えるとして、魔物や怪物はどうなる?この大地にそんなもの置きたくない
「私の気まぐれでご迷惑をおかけしましたが、稀有な体験をすることができました。ご子息サイード殿と二人ながら無事に生還できたのは偏に天上の主の思し召しに尽きます」
ガレンドールへ帰ったら、陛下と第二ラウンドだな
あなたが他の箱庭に行っているうちに、ヴィンセントには少し事情を話しておいたわ
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※ここから後半までの部分は本文で上書きされたため欠落
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■後半
夜会に出た
もとから一人で出る予定だった
式典のメイン部分は終え、ダンスが始まるまでの間歓談する
さすがに今日は中座しない方がいい
橋の両岸の領主である伯爵たちのほか、物資や人足などの世話に貢献した伯爵も出るらしい
歓談で囲んでくるのは伯爵夫人たちだがゴシップが多い
件の伯爵は非常に嫉妬深くて妻を閉じ込め、公の場には出すことがほとんどない
妻を巡って刃傷沙汰になったほどとか
あら、あの傷は以前戦場で付けたものと聞きました
戦争なんか大きなものはこの二十年は起きてない。ご夫人方の話はいい加減なものだ
領地間の小競り合いならたまにあるのでそういう話か
今日は主役の一人だからさすがに連れているはずよ
夫人の顔は誰も見たことがないけど
おすすめの令嬢を紹介してくる
フィニークにはお世話になったから今後も繋がりを強めるのでは?
あちらの女性はエキゾチックな魅力がありそうね
でも所詮は商人の国ですよ 由緒あるガレンドールにお迎えするのはちょっとねえ
曲が始まり、ホストの伯爵夫妻が最初のダンスを披露している。
一緒にと頼まれていたが辞退していた
気を遣ってアシュレーの妻が申し出てくれ、その後は流れで三人位相手した。
ホールを離れてビュッフェで一休みしにきた
↓
舞踏会までのあれこれは全部省略して、マギーを見つけるところからでもいいのでは
夜会はダンスの時間の合間、数人のご令嬢の相手をしてホールから抜けてきた
サロンでは男性たちがたむろする部屋があり、そこも少し覗いた
カードを少しやって抜けてきた
葉巻の臭いは冒険者たちのパイプの臭いを思い出すので嫌いではないが、服に臭いが移ってしまう
ホールには戻れないな、とホワイエで過ごす
夫人たちに囲まれた
相手はいないのか、フィニークではどうだった、あちらのご令嬢は、でも商人の国ですよね など
私の親友もその商人ですが何か、などちょっと気を悪くする
テラスに近寄ると茂みから女性の話す声がする
何かショックを受けている女性をもう一人が慰めているようだ
マギーはこの夜会に無理に押しかけ、エスコートを望む相手に叱られたらしい
ブレンダはマギーの義理の姪 相手は想定外だから驚いただけで、そこまで嫌ってはいないのではとなだめている
茂みを覗くと二人の少女だった
今日は地方から来ている貴族も多い
俺の顔を知らないらしいし、マナーも鷹揚だ
ブレンダは、相手をとりなしてくるから待っていて!と立ち去ろうとする
彼女を一人にする気か?と言うと
あなたは紳士ですか?と逆に言われて面食らう
誰より紳士的でなくちゃいけないんだ、当然だ
じゃあお願い!とブレンダは去る
残されたマギーは、あまり人目に付きたくないからいいんです、と言う
うちしおれている雰囲気
何だか強引なシチュエーションなのでシェヘラザードの差し金を感じるが、確証がないので様子見
寒そうなのでマントを掛けてやる
しかし暗がりに二人で潜んでいるわけにも行きませんよ
近くにガセボがあり、キャンドルが用意されている テラスの明かりもぎりぎり届く
あちらで休まれては、と示す
ガセボに向かいながら名前を聞く
クインシー伯爵夫人です、と彼女は名乗り、思わず足が止まる
…人妻!? 言うに事欠いて、人妻?
婚約破棄直前の令嬢より質が悪い
俺に臣下の面子を潰させる気か
意趣返しであたふたさせようと言うのか
いや、落ち着け
本当に差し金とは限らない
ここはガレンドールだ、世界まるごと差し金だった異世界とは違うのだ
マギーは立ち止まった理由を勘違いした
クインシー伯爵は嫉妬深いと世間で噂になっている 先程夫人たちも噂していた
あなたの身も危ないですよね、何なら一人にしていただいて結構です
マントは後でお返ししますので
そんな危険はない
いくら嫉妬深いと言っても俺に刃を向ける命知らずがいるものか
国に反逆したいなら別だが
え、それでは
アーノルドと言います
お見知りおきを、マダム
アーノルド殿下! ご無礼をお許しください!
とりあえずガセボに落ち着く
あなたが伯爵夫人なら、どうして今夜はクインシー伯と共にいらっしゃらないのですか?
伯爵は、今日も一人で来ようとしました いつものことなのです
私、嫌われているんです
私を疎んじていて他人に紹介するのも嫌なんです
屋敷からも出してもらえない
結婚してからこのかた、指一本触れることはありません
嫉妬深いかどうかわかりませんが、きっとプライドが高いと思います
言葉を交わした男性の使用人はすぐに辞めさせられますし
出入りの商人に男性が紛れ込んでいた時は厳しく叱責されていました
結婚が遅いと見合いで相手を決められ、疎んじている間に浮気されたら醜聞ですから
彼が私と離縁しようとしているという噂を使用人から聞いた
直談判しようと彼の部屋に入ると留守で、今日の夜会を知った
夫人同伴でなければいけないのにすでに一人で出てしまっていた
だから急いで追いかけたら、なぜ来たんだ、と凄い形相で言われて…
男たちのサロンで聞いた話と少し食い違う
嫉妬深いとは聞かなかったが、自分には勿体ない、若いのに気の毒だと話していたと聞く。
また、秘書官室の同僚たちの噂では、教会に結婚の無効を申し立てるため書類を整えたいと相談があったという。
事情通の秘書官の噂が最も正確なはずだ。
あなた自身は、伯のことをどうお考えですか?
それは…縁があって妻になったのですから、しっかりお支えしたいと思っています
女主人として役割を果たしたいのに、社交の機会を奪われては力が付きません
クインシー伯がやって来る
俺の姿を認めていったん臣下の礼をする
私の妻が何か失礼を…?
失礼と言うなら、君のほうじゃないのかね
これは…邪魔をいたしまして…
そうじゃない、彼女を妻だと思うなら、あなたはなぜ彼女をないがしろにするのです?
ないがしろになど…しておりません。大切に扱っていたつもりです
それは彼女の望みとは違う。本人から望みをちゃんと聞いたのか?
伯爵様、わたしはあなたを心からお支えしたいのです
クインシー、なぜ結婚の無効を申し立てようとした?
…ご存知でしたか。離縁ではなく無効ならば、彼女の経歴に傷をつけずに済みます。
私のような苛烈な経歴を持つものよりも、何一つ後ろ暗いところのない若者と幸せになった方がよいのです
伯爵様、どうしてそんなことを仰るのです!? わたしを愛しては下さらないのですか?
マ、マギー…そうではない、これが私の愛の形なんだ
納得いきません! ああもう、お気持ちを正直に話していただけていれば、こんなにすれ違わなかったのに!
さあさあ、二人とも後は帰って気が済むまでやってくれ
二人を追い払う
クインシーは自分のマントをマギーに与え、俺のマントを返した
やれやれとガセボに腰を下ろす
本音を言わないせいでこんなにこじれるとは、男のプライドは下らない
異世界で必死に守ったプライドとは質が違う。ただの保身だ。
本音を打ち明け合わず、相手の意思も確認しない
彼は、嫉妬深いと噂されるのだけは満更じゃなかったかもしれないな
けれど素直になれないせいで大事な宝石を失おうとしてるんだから世話はない
…俺も、本音を言わないとか変な意地を張るとかしてるだろうか。
未熟な頃ならいざ知らず。
それとも、今でも俺は未熟なんだろうか。
俺は仰向いて両手で顔をごしごしとこすった。
「…素直になったところで…」
人の身では手に入らない宝石もある。
この星空のように。
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こうしてみると詳細プロットはマジでかなーり詳細に書いてますが、最近は慣れてきたのかもう少し簡単めに書いているかも。
それと、完成した本文では締めの部分が変更になってます。ただ「愛されたいのにぃ」とか言ってるだけでは柔弱で共感しづらく、それよりからくりに気づいて「騙されていた!」となる方がドラマチック。そして怒るのでなくがっかりするのがお人好しのアーノルドらしい。
意気消沈したところで終わるのは同じだけれど、内実が違います。これで次の13話で、シェヘラザードが彼を一層無碍にしづらくなりました。
公開した12話はこちらからどうぞ。
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