跳躍の積み重ねが実を結んだ物語
雨が降ると思って持って行った傘をぶらぶらさせてたら、ふと思いつきました。
お気軽にお楽しみください。
ある日突然異界の門が開き、現代日本と異世界が一つとなった。
そこここに現れる幻想世界の魔物達。
混乱の中、異世界の魔王が空に現れ、高らかに宣言した。
「ふはははは! この世界は想像が力となる世界に変わった! 力なき貴様らに勝ち目はない! 我らに従うが良い!」
宣言を終えた魔王に、参謀が心配そうな声をかける。
「この方法で本当によろしかったのですか? 確かにこうしなければ我々もこちらの世界で『力』を使えませんが、この世界の者達も使えるようになると……」
「案ずる事はない! 『想像を現実化する力』は訓練を積み重ねなければ使いこなせん!」
「そ、そうですね!」
「まぁ即座に理解して使いこなせる、天才と呼ばれる者も数人はいるやもしれぬので、油断はしないに越した事はないがな」
余裕の笑みを浮かべる魔王。
しかし次の瞬間、伝令の報告に凍り付く。
「申し上げます! ゴブリン部隊が雨具を持った人間に襲われて潰走しております!」
「何!? どういう事だ!?」
「報告が混乱して要を得ないのですが、その人間が逆手に持った雨具を振り抜いた瞬間、凄まじいエネルギーが部隊を襲ったと……!」
「何!? まさか早々に『力』を使いこなす者がいたとは……! まぁ一人くらいそのようなイレギュラーも存在するだろう。他の部隊を向かわせて対応せよ!」
動揺はしたものの、想定の範囲内だと頷く魔王。
しかし現実は魔王の想定を遥かに超えていた。
「大変です魔王様! 動く鎧部隊が、掃除用具を持つ男に半壊させられています!」
「何ぃ!? 鋼鉄の身体を持つ動く鎧が掃除用具でどうやって!?」
「何やら回転させながら放たれた突きで、鋼鉄の鎧がまるで紙のように突き破られたと……!」
「どうなっている……!?」
動揺が治まる隙もなく、続けて被害報告が舞い込んでくる。
「魔王様! オーク部隊が雨具を左手に構えた男に押されています!」
「また雨具か! ゴブリン部隊の配置とは距離があるから別の奴のようだが、どんな奴だ!」
「とにかく『敵前逃亡はシドウフカクゴ』?と言って突撃を繰り返しております! その左手からの突きの威力は壁を突き破るほどで……!」
「雨具だよな!? 雨具でその威力って何なのだ!?」
魔王がパニックに陥っている間にも伝令は次々に絶望的な状況を報告していった。
「報告します魔王様! 主力部隊の正面に、腰だめに構えた両手の掌から光る波動を放つ者が多数現れて、凄まじい被害が出ています!」
「申し上げます! 別働隊、人差し指から光の弾を放つ人間に攻撃され、混乱! 部隊の維持もままなりません!」
「大変です! 最大戦力のギガントゴーレムの脚部が拳で粉砕されました! 岩の身体がまるで砂のように粉々になり、行動不能です!」
「馬鹿な! 馬鹿な馬鹿な! この短時間で想像を現実化できる使い手がこんなに現れるなんて……! どうなっておるのだこの世界は!」
魔王は頭を抱えた後、絞り出すようにこう言った。
「……撤退だ」
「え?」
「撤退と申したのだ! 何故かは知らぬが、この世界の者達は想像を現実化する訓練を重ねておる! となれば数の劣る我らに勝ち目はない!」
「わ、わかりました! すぐさま撤退いたします!」
こうして異世界からの侵攻は食い止められた。
人々は戻った平穏に安堵しながらも、うっすら(また来ないかなぁ……)と思いつつ日常へと戻っていくのだった。
読了ありがとうございます。
全部やった事ある人! 僕と握手!
腰だめに構えて手のひらから放つあの技は、未だに時々子どもの前でやります。
ジ◯ンガやってる横で放つふりをしたらたまたま倒れて、遊んでた子ども達から怒られたんですけど、これ私が悪いんですかね?
懐かしい思い出に触れられましたら幸いです。