ミリオンブレイズオンライン
ミリオンブレイズオンライン。
このゲームはVR技術が一般家庭にも普及するほど一般化された2038年発売のゲームである。
専用のバイザーを被り、電源ボタンをオンにすればたちまち、ゲームの世界が映し出されるのだ。
操作は極めてシンプルで、両手にボタン数個ほどのリモコン式コントローラを握ってそれを軽く振る操作を主にプレイできる。
そんなゲーム--発売して11周年にもなるゲームをいつものようにどこにでもいるような25歳の普通の日本人男性、巽隆太は立ち上げる。
そんな何気ない所作が、誰もが想像できないような事態に巻き込まれることに繋がるとも知らずに--
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初めに電流がスパークするような音がした。
「---ん」
ふと気がつくと暗転している視界。
どうやらゲームを起動してプレイしようとした矢先、ついうたた寝をしてしまったのだろうか。
(参ったな…まぁこうしていても仕方ないし、とりあえず--)
目を開ければ見知らぬ白い部屋。部屋の中央には杖にもたれかかり息を吐いている巫女装束の少女、辺りには紋章の様なものが描かれていて、それが交差して描かれた上に自分自身が立っているのを巽隆太は認める。
(?……こんなゾーンゲームにあったか…?いや、とにかくにもコントローラを探さないとな)
そう思い、頭に手を伸ばしバイザーを外してコントローラを探そうと--バイザーを被っている状態でコントローラを地面に置くと右腕左腕を描くテクスチャで上書きされてわかりにくい--
手を伸ばす。バイザーの位置には何もない。
(???……??)
良くわからないまましばらく周囲を探していると、息を整えた巫女が話しかけてきた。
「……何をしているのだ」
「いや、コントローラを探してるんだけど…」
「コントローラ?」
「ああ。操作ができないと困る--」そのように何気なく応答をすると、異様な事に思いあたる。
能動的な応答をするのはムービー内だけのはずのNPCが、応答をしている。
バイザーが無いのはもちろんだが、コントローラ無しでも視点が自分の動きに従ってついてくる。
(………)
「……」
お互いに暫くフリーズし沈黙の時間が流れる。
もしかしてあれか。これはと思いあたると同時に巫女から決定的な言葉が投げかけられる。
「……私の名前はフラクタヌス=エクセルチア。改めて問う。貴方が、異郷よりの来訪者か」