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87 護るから

お読みいただきありがとうございます( ꈍᴗꈍ)

♪こちらのお話は、読了時間:約4分です♪


(Wordcount2000)


 とぽとぽ……トト……。


「どうぞ……」

 月は、新しくいれた紅茶を星のカップに注ぎ、声をかける。その姿を見て、心なしか元気のない様子に星は気付いた。


「あぁ、ありがとう」

 気になりながらも星は、月にお礼を言うと、ダージリンの香りを心から楽しむ。そして自然と、その顔には小さな笑みと言葉が溢れた。


「うん、月のいれる紅茶は、味も香りも最高だ」


「ほぇっ?!」


 落ち込み気味になっていた気持ちが上昇する。自分の得意とする事が褒められ、戸惑う月。その視線を、深い蒼の美しい瞳へ向けると、その心を見透かしたように微笑み答えた星。


「えっとぉ、そうそう! 今年は良質な茶葉が手に入ったそうですので」


「そうなんだね、うん――ファーストフラッシュ、かな?」


「そ、そうです!! 星様よくお分かりになりましたね! あっ、もしかして苦手でしたか?」


 月は、さっきまでの重くなっていた気分が嘘のように楽しくなり、ウキウキと話していた。


「月、君は本当に珈琲や紅茶が好きなんだね」

 それを見ていた星が、ふふっと笑う。


「あっ……うぅ。えっへへ」


 月は思わず、キャッキャとなってしまっていた自分が恥ずかしくなる。その顔が熱くなっていくのが自分でも分かり、そして、いつものように両頬を手で押さえ、赤くなった顔を隠す。


「ふふふっ。お顔、真っ赤だね。りんごさんだ」


 星はいたずらな表情で話した。しかし、その奥には優しさの心が見えてくる。


 それから、

――「でも……」と話を続けた。


「月にはやはり、笑顔が似合う。何か心配事があるのなら話すといい。僕が支えになる。だから君には“笑っていてほしい”、そう思うよ」


――ドキッ……。


「ほ、星様……」

(またぁ! そのような言葉を涼しいお顔でサラッと言うのぉ!!)


 月の心は、いつも星の言葉に助けられ、支えられ、時にはこうしてドキドキさせられたり。いつの間にか、星が大きな存在となっている事に、この時の月はまだ、気付けていなかった。


「星様、いつも……ありがとう、ございます」


 その緊張したような、そして恥ずかしそうで、しかし、明るくなった月の声に、星は安堵すると、優しく笑いかけながら話しを始めた。


「さて……月は今、メルティの事が気になっているのかな?」


 その言葉で、ハッとする。けれど、さっきまでの暗く重たい不安は、月の心から消え去っていた。


「はい、ずーっとお外の観察を……あまり見た事のない表情だったので」


 軽くなった気持ち。心配事として考えていたメルルとティルの事も、笑いながら話せている。


「なるほど、そう……きっと二人なりに、君の事を心配して『護ろうとしている』のだと思うよ。今は警備中、とでも言っておこう」


 爽やかな表情で、とても重要な事を話した星。さすがの月も今の話を、サラッと流すわけにはいかなかった。


――二人が、私の事を『護る』って?


「どういう事……なのでしょうか?」


「…………」


(えっ? 星様黙ってしまって――)


「「だぁぁぁぁぁッ!!」」


「うっわぁーっ!!」


「きゃっはーん♪」「つっきぃー♪」


 可愛い双子ちゃん登場。いつものイタズラ好きなメルルとティルに戻っていた。月の心にある疑問は、解決していない。しかし二人が戻ってきただけで、部屋中の雰囲気は、一気に明るく変化した。


「もぉ~また、メル・ティルったら!!」


「ふ、フフ……二人とも、すごいねぇ」


 星は、メル・ティルが月に近づくのを知っていて、突然、黙っていたのだった。あまりにも上手に驚かせる事が出来た二人を褒め、今後の話を月にし始める。


「そう、さっき話していたメルティの言葉、あれは嘘ではない」


「えっ? さっき……ですか?」


 月は、何の事なのか? さっぱり分からなかった。

 そしていつものように、うーんうーんと考えていると、背中をツンツン。

 振り返ると、可愛い双子ちゃんから思わぬ提案をされる。


「つっきぃ~」「ほらほらぁ~」


 さっきのだよぉ~と言いながら、もう一度、綺麗な言葉のハーモニーを聴かせてくれた。


 せ~のっ!!


「「今日から一緒に寝てあげるぅ♪」」


――エッ?


「あ、あーあれって? 冗談ではなくて……」


 双子ちゃんは「えっへへ~♪」と、嬉しそうに笑っている。しかし、星は真剣な顔で、答えた。


「月、よく聞いて。君が大会で発動した魔法によって、命が救われた事は、周知の事実。そして、見ていた全ての人に、君の【力】が証明された」


「そ、そんな大きな事では……」

 そう言いかけて、星の瞳が放つ視線の強さに、月は言葉をのんだ。


「間違いなく危険が迫っている。そして、力を【施錠】している()()月では、太刀打ちできないだろう」


「あっ……」


「そうなんだ。だから月、僕らがしばらくは警護する」

――『絶対に護る。君には、仲間以外は指一本触れさせない』


 強い決意の言葉とともに、夕方の涼しい風が心の中に吹いてきた。


(メル・ティルが、閉め忘れたのだろうか?)


 彼の、変わらない端正な顔立ちと、艶のある黒髪が、美しくなびいていた。


いつもお読みいただきありがとうございます♪

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