83 文化交流会2日目~忘れられない誕生日~
お読みいただきありがとうございますヾ(≧▽≦)ノ
♪こちらのお話は、読了時間:約7分です♪
(Wordcount3100)
――――(アイスクリーム屋さん……いれくとるむ? ……ラウルド理事長様……親子……ルナ?? ……)。
「……もくろみ?? 私の、保護って……?」
(あぁ~意識が遠のいていくみたい)
月はいつものようにうーんうーん、と頭を抱えていた。ワカラナイ事だらけだ。
「……っき……、三日月?! 怪我はない? 大丈夫かい?」
聞き慣れた優しい声。私はふと、我に返った。
「あ、大丈夫です! こちらの……アイスクリーム屋さんが助けて下さいました」
月は、あまりにも短い時間の中で、入ってくる情報と衝撃が多すぎて、混乱していたため、タイトの名前を覚えられずにいたのだ。
「アイスクリーム屋さん。あの、ありがとうございました」
「いえ、問題ありません。三日月様、私の事は、ぜひタイトとお呼び下さい」
「え、あっと……タイちょ、しゃ、ま、ぁ……」
(うっはー! 恥ずかしいーぅぅぅ)
名前を言うにも一苦労? 月の人見知りな癖が、ひょこっと顔を出してしまう。頑張ったが、やはり噛んでしまった。
しかし、見るからにクールなタイト。月の言葉に、少しも反応する事も、笑う事もなく、そのまま話を進めていく。
「そして……黒髪の君は」
(えぇータイト様! 何か言って下さいィ……それはそれで私、もっと恥ずかしくなりますー!!)
そう心の中でお願いする月だったが、聞こえるはずもなく。黙って、ゆっくりと顔を両手で隠し、タイトの深沈たる声に耳を傾けた。
そして、星がタイトの質問に、同じく静かな声で答え始める。
「失礼致しました。私、アスカリエス=星守空と申します」
星は、名乗りそびれた事を謝罪しながら、丁寧に挨拶の姿勢をとった。すると、タイトの口から思いもよらぬ答えが返ってきた。
「あぁ、君の事はよく知っている」
「――――!!!?」
星の顔色がほんの少しだけ驚き曇った。なぜ、初対面の相手が自分の事を知っているのか? と、無意識に身構えてしまっているのが、星自身もよく分かった。
「冷静沈着さを身につけるよう訓練しているようだが、まだ修業が足りぬようだ」
「……おっしゃる通りです」
タイトは、話している間も背を向けたまま、二人を護るように立っていた。その抜かりなき護身は、意味深な言葉を残し去っていった理事長の姿を、見えなくなるまで監視するためであった。
――――この人、視線は前を向いたままで、僕の表情を読み取る凄まじい能力。まるで、心が見えているかのようだ。
この時、星の心の中には、どこか懐かしいような。しかし、ざわついた感覚と、逆にぬくもりを感じるような深情……。言葉で言い表せない程の、様々な気持ちが交錯していた。
そして「礼儀だ」と、タイトは言うと、自分の身の上を二人に明かし始めた。
「名はジーヴル=汰維十。イレクトルム王国に代々仕える騎士、ジーヴル=フェネ一族である。私は長年、太陽様の護衛として付き、旅をしている」
「ジーヴル……まさか! あのジーヴル=タイト様ですか?!」
(今日の星様は、何かが違うなぁ)。
月は感じていた。屋上でもそうだったが、珍しく表情豊かで、星の感情や雰囲気などが、いつも以上に深く、強く、心に伝わってきていた。
「星様、このお方をご存知なのですか?」
「あぁ、存じ上げている所か、とても有名なお方だ。まさかお会い出来るなんて」
星は驚きと同時に、感じた事のない高揚感に包まれた。それはジーヴル一族が、伝説にも残る騎士族であり、タイトは知る者の間では、憧れの存在だったからだ。
(星様の目が、キラキラしている!!)
月は、星の嬉しそうな顔をみて、心の奥がきゅんっ、とした。その表情は初めて見る姿。素直にタイトへの憧れを表し、頬を赤らめた子供のような、喜びの気持ちが見えたからだ。
「私は、この王国の人間ではない、よって意見をする立場にはないが」
タイトは、そう言うと顔だけ振り返り、後方に立つ星と月に横目を向けた。凍るようなアクアマリンの視線の先には、若い二人が映っている。そして、ゆっくりと諭すように話し始めた。
「此度の其事は、話が別だ。セルクと呼ばせてもらうが、このような不特定多数の生き物が集う場所で、三日月様を一人にしないよう、今後は重々注意する事だ」
「はい、承知しました。ご忠告感謝致します」
星は、深くお辞儀をしながら答えた。
「三日月様、貴女様の事は、王子より常々拝聴しておりますゆえ。私は、太陽様が世に生を受けた瞬間より仕える者。王子の周囲で起こる問題等は、私の守備護衛の対象となりうる」
その深い言葉の中には、確固たる強い意志が伝わってくる。
「そう、それはご友人も然り」
(ふわあっ?!)
一瞬……その時、一瞬だけ。
“水宝玉”のような瞳が、柔らかく、優しく感じた。
「しかしながら三日月様。貴女様の許可なく、私の独断で勝手な行動をとった事。どうかお許し願いたい」
まさかの頭を下げる仕草を見せたタイトに、月は慌てて止めに入った。
「おおおお、おやめ下さいーッ!!! そんな許すだなんて、逆にご迷惑をお掛けしてしまったのは私の方です。本当に申し訳なくて」
月の返事を聞き、「そう言って頂けると、私も救われます」とタイトは言うと、再び理事長が歩いて行った方向の監視を始めたのだった。
◇◆
「メル・ティルー!! ごめんねぇ、遅くなって……」
その後……。私と星様は、タイト様の過剰なまでの警護を受けながら、メルルとティルの待つ噴水広場まで辿り着いた。
「「じぇんじぇん!! いいのぉーん」」
時刻はすでに午後十時半。
もうすぐ、噴水広場のライトアップも終わる。
「三日月、大変なお誕生日だったね」
星様が、とても心配して私の顔を見ていた。そう、大変な一日……。でも、少しだけ。自分を知る事が出来たような、そんな一日だった。
「えっへへ、ありがとう、星様」
そして今の私は、何故か? どこか晴れ晴れしい気持ちにも似た、明るい気分になっていたのだ。
「「ああーーーー!!」」
「わぁぁ?!」
と、急に!! メル・ティルが大きな声を出し、私は驚いた。
「どうした? メルティ!!」
星様もさすがに驚き、すぐ二人に駆け寄った。すると……?
二人は、モジモジ恥ずかしそうに顔を見合わせた後、ある言葉を口にした。
「あ、アイス」「クリむ~しゃん」
(あ……ナルホドネ。でも、タイト様は……)。
「私の事ですか?」と、にっこり微笑んでいる。
その声の聞こえる方を振り向く私。
「え、えー?!」
(ふやぁ~。な、なんと綺麗な接客スマイルだぁ……)。
さっきまで警護をしてくれていたタイト様は、いつの間にかあのキャスケット帽を被り、アイスクリーム屋さんの姿に戻っていた。
「す、すごい」
(切り替えが……は、早いです)。
「「たべたぁっあーい♡♡」」
二人は、星に買って買って~♪ と、お願いをしている。
「あっはは、うんうん、分かったから」
「では、お待ちしておりますね」
「あ~、ありがとう、ござい、ます」
エッヘヘ。
(タイト様……店員さんに戻ると、笑顔が、印象が! 全然違います)。
アイスクリーム屋さんに着いて、無事に氷菓を買ってもらったメル・ティルは、飛び上がって喜んでいる。
「さぁ~どうぞ。ごゆっくり」
(結局、私も小さいアイスを買ってしまいましたぁ)。
アイスを手に受け取る時、タイト様は私に一言だけおっしゃった。
「三日月様。今後はくれぐれも、お気を付けください」
私は、小さく返事をして、頷いた。
――四人で歩く帰り道。
「「アッイス~♪」」
来る時と同じ。メルルとティルがご機嫌で歌う、アイスクリームの楽しいお歌。その二人の声はやっぱり可愛くて。私は、幸せな気持ちが心の奥から湧き上がってきた。
「今日は本当、色々あったけれど……」
一生、忘れられない『十六歳のお誕生日』になった。
いつもありがとうございます(*uωu*)
こちらのお話で第二章、終わりデス(笑)
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます!!
もしも、楽しいなぁ♪
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これからも素敵な物語☆をお届けできるよう、頑張っていきたいと思います!
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