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月世界の願いごと~奇跡の花は煌めく三日月の夜に咲いて~  作者: 菜乃ひめ可
第二・五章 文化交流会(魔法勝負後)
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83 文化交流会2日目~忘れられない誕生日~

お読みいただきありがとうございますヾ(≧▽≦)ノ

♪こちらのお話は、読了時間:約7分です♪


(Wordcount3100)


――――(アイスクリーム屋さん……いれくとるむ? ……ラウルド理事長様……親子……ルナ?? ……)。


「……もくろみ?? 私の、保護って……?」

(あぁ~意識が遠のいていくみたい)


 月はいつものようにうーんうーん、と頭を抱えていた。ワカラナイ事だらけだ。


「……っき……、三日月?! 怪我はない? 大丈夫かい?」


 聞き慣れた優しい声。私はふと、我に返った。


「あ、大丈夫です! こちらの……アイスクリーム屋さんが助けて下さいました」

 月は、あまりにも短い時間の中で、入ってくる情報と衝撃が多すぎて、混乱していたため、タイトの名前を覚えられずにいたのだ。


「アイスクリーム屋さん。あの、ありがとうございました」


「いえ、問題ありません。三日月様、(わたくし)の事は、ぜひタイトとお呼び下さい」


「え、あっと……タイちょ、しゃ、ま、ぁ……」


(うっはー! 恥ずかしいーぅぅぅ)

 名前を言うにも一苦労? 月の人見知りな癖が、ひょこっと顔を出してしまう。頑張ったが、やはり噛んでしまった。


 しかし、見るからにクールなタイト。月の言葉に、少しも反応する事も、笑う事もなく、そのまま話を進めていく。


「そして……黒髪の君は」


(えぇータイト様! 何か言って下さいィ……それはそれで私、もっと恥ずかしくなりますー!!)


 そう心の中でお願いする月だったが、聞こえるはずもなく。黙って、ゆっくりと顔を両手で隠し、タイトの深沈たる声に耳を傾けた。


 そして、星がタイトの質問に、同じく静かな声で答え始める。


「失礼致しました。(わたくし)、アスカリエス=星守空(セルク)と申します」

 星は、名乗りそびれた事を謝罪しながら、丁寧に挨拶の姿勢をとった。すると、タイトの口から思いもよらぬ答えが返ってきた。


「あぁ、君の事はよく知っている」


「――――!!!?」


 星の顔色がほんの少しだけ驚き曇った。なぜ、初対面の相手が自分の事を知っているのか? と、無意識に身構えてしまっているのが、星自身もよく分かった。


「冷静沈着さを身につけるよう訓練しているようだが、まだ修業が足りぬようだ」


「……おっしゃる通りです」


 タイトは、話している間も背を向けたまま、二人を護るように立っていた。その抜かりなき護身は、意味深な言葉を残し去っていった理事長の姿を、見えなくなるまで監視するためであった。


――――この人、視線は前を向いたままで、僕の表情を読み取る凄まじい能力。まるで、心が見えているかのようだ。


 この時、星の心の中には、どこか懐かしいような。しかし、ざわついた感覚と、逆にぬくもりを感じるような深情……。言葉で言い表せない程の、様々な気持ちが交錯していた。


 そして「礼儀だ」と、タイトは言うと、自分の身の上を二人に明かし始めた。


「名はジーヴル=汰維十(タイト)。イレクトルム王国に代々仕える騎士、ジーヴル=フェネ一族である。私は長年、太陽様の護衛として付き、旅をしている」


「ジーヴル……まさか! あのジーヴル=タイト様ですか?!」


(今日の星様は、何かが違うなぁ)。


 月は感じていた。屋上でもそうだったが、珍しく表情豊かで、星の感情や雰囲気などが、いつも以上に深く、強く、心に伝わってきていた。


「星様、このお方をご存知なのですか?」


「あぁ、存じ上げている所か、とても有名なお方だ。まさかお会い出来るなんて」


 星は驚きと同時に、感じた事のない高揚感に包まれた。それはジーヴル一族が、伝説にも残る騎士族であり、タイトは知る者の間では、憧れの存在だったからだ。


(星様の目が、キラキラしている!!)


 月は、星の嬉しそうな顔をみて、心の奥がきゅんっ、とした。その表情は初めて見る姿。素直にタイトへの憧れを表し、頬を赤らめた子供のような、喜びの気持ちが見えたからだ。



「私は、この王国の人間ではない、よって意見をする立場にはないが」


 タイトは、そう言うと顔だけ振り返り、後方に立つ星と月に横目を向けた。凍るようなアクアマリンの視線の先には、若い二人が映っている。そして、ゆっくりと諭すように話し始めた。


此度(こたび)の其事は、話が別だ。セルクと呼ばせてもらうが、このような不特定多数の()()()が集う場所で、三日月様を一人にしないよう、今後は重々注意する事だ」


「はい、承知しました。ご忠告感謝致します」

 星は、深くお辞儀をしながら答えた。


「三日月様、貴女(あなた)様の事は、王子より常々拝聴しておりますゆえ。私は、太陽様が世に生を受けた瞬間より仕える者。王子の周囲で起こる問題等は、私の守備護衛の対象となりうる」


 その深い言葉の中には、確固たる強い意志が伝わってくる。


「そう、それはご友人も(しか)り」


(ふわあっ?!)

 一瞬……その時、一瞬だけ。

 “水宝玉”のような瞳が、柔らかく、優しく感じた。


「しかしながら三日月様。貴女様の許可なく、私の独断で勝手な行動をとった事。どうかお許し願いたい」


 まさかの頭を下げる仕草を見せたタイトに、月は慌てて止めに入った。


「おおおお、おやめ下さいーッ!!! そんな許すだなんて、逆にご迷惑をお掛けしてしまったのは私の方です。本当に申し訳なくて」


 月の返事を聞き、「そう言って頂けると、私も救われます」とタイトは言うと、再び理事長が歩いて行った方向の監視を始めたのだった。


◇◆


「メル・ティルー!! ごめんねぇ、遅くなって……」


 その後……。私と星様は、タイト様の過剰なまでの警護を受けながら、メルルとティルの待つ噴水広場まで辿り着いた。


「「じぇんじぇん!! いいのぉーん」」


 時刻はすでに午後十時半。

 もうすぐ、噴水広場のライトアップも終わる。


「三日月、大変なお誕生日だったね」


 星様が、とても心配して私の顔を見ていた。そう、大変な一日……。でも、少しだけ。自分を知る事が出来たような、そんな一日だった。


「えっへへ、ありがとう、星様」

 そして今の私は、何故か? どこか晴れ晴れしい気持ちにも似た、明るい気分になっていたのだ。


「「ああーーーー!!」」


「わぁぁ?!」

 と、急に!! メル・ティルが大きな声を出し、私は驚いた。


「どうした? メルティ!!」

 星様もさすがに驚き、すぐ二人に駆け寄った。すると……?


 二人は、モジモジ恥ずかしそうに顔を見合わせた後、ある言葉を口にした。


「あ、アイス」「クリむ~しゃん」


(あ……ナルホドネ。でも、タイト様は……)。


「私の事ですか?」と、にっこり微笑んでいる。


 その声の聞こえる方を振り向く私。

「え、えー?!」

(ふやぁ~。な、なんと綺麗な接客スマイルだぁ……)。


 さっきまで警護をしてくれていたタイト様は、いつの間にか()()キャスケット帽を被り、アイスクリーム屋さんの姿に戻っていた。


「す、すごい」

(切り替えが……は、早いです)。


「「たべたぁっあーい♡♡」」

 二人は、星に買って買って~♪ と、お願いをしている。


「あっはは、うんうん、分かったから」


「では、お待ちしておりますね」


「あ~、ありがとう、ござい、ます」

 エッヘヘ。

(タイト様……店員さんに戻ると、笑顔が、印象が! 全然違います)。


 アイスクリーム屋さんに着いて、無事に氷菓を買ってもらったメル・ティルは、飛び上がって喜んでいる。


「さぁ~どうぞ。ごゆっくり」


(結局、私も小さいアイスを買ってしまいましたぁ)。


 アイスを手に受け取る時、タイト様は私に一言だけおっしゃった。


「三日月様。今後はくれぐれも、お気を付けください」

 私は、小さく返事をして、頷いた。



――四人で歩く帰り道。


「「アッイス~♪」」


 来る時と同じ。メルルとティルがご機嫌で歌う、アイスクリームの楽しいお歌。その二人の声はやっぱり可愛くて。私は、幸せな気持ちが心の奥から湧き上がってきた。


「今日は本当、色々あったけれど……」


 一生、忘れられない『十六歳のお誕生日』になった。


いつもありがとうございます(*uωu*)


こちらのお話で第二章、終わりデス(笑)

ここまでお読みいただき本当にありがとうございます!!


もしも、楽しいなぁ♪

これからもまだ読み続けたいなぁ~♪

そう思って頂けましたら、ブックマークして下さると嬉しいです。


これからも素敵な物語☆をお届けできるよう、頑張っていきたいと思います!

今後とも、よろしくお願い致しますニャ(・ω・)


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