75‐3 文化交流会2日目~舞踏会~(後編)
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カスミソウの意味を知った私の心は、なぜかドキドキしていた。
「星様……それってもしかして?」
もしも本当に、太陽君のカスミソウの意味が、『無垢の愛』を表しているのだとしたら……。
――考えていた事が、本当に?!
もしも本当に、二人に恋の花が咲いたら。あの時ふと勝手に想像を膨らませて、心配していた事になったら……!!
(あぁ! 一体?! 二人はどうなっちゃうの?)
考えれば考えるほど、私の方がそわそわしてきてしまって。
『おせっかい月ちゃん』にスイッチが入る。そんな事を考えている私の姿を見て、星様は吹き出して笑い始めた。
「んっフフッ。本当に月は、表情豊かだね」
「んにゃ……そ、そんなぁ~」
もぉっ! と言いながら、私はほっぺたをぷぅーっと膨らまし、彼を見つめる。すると、そういうところも可愛い♪ と、またサラッと恥ずかしい台詞を言って、揶揄うように笑った。
「あはは……はぁ。こんなに笑ったのはいつぶりかな? 本当に今日は楽しいよ。幸せな時間をありがとう」
「エッ、あぁいえ、私もで、ありがとなのです」
急に、また! そんな真面目なお顔で!!
そういう雰囲気も言葉も、言われ慣れていない私はまだ普通ではいられなくて。緊張でしゃべり方がおかしくなり、恥ずかしさが倍増した。
しかし、星様はというと……「よかった」と、落ち着いた表情で、にっこり笑顔に戻っている。
いつも、私ばかり恥ずかしくなってしまう。
舞踏会の音楽一曲目の“ワルツ”が終わる頃に、星様はお話を切り出した。
「さて、月。もしかして? の話……太陽とユキトナ様の事だけれど」
「あ、はいっ!」
ぽわーっとしていた私は、星様の声で、慌ててお話を聞く姿勢に戻る。
「知っての通り此処、ルナガディア王国とイレクトルム王国は【友好国】として、これまで長い歴史の中で平和的、そして協力的な関係を築いてきた。もしかしたら王妃様は、その事も考慮し、何かしら先のお考えがあっての……舞踏会参加を許可したのかな? と、僕は考えているよ」
今の彼は、先程の険しい表情と厳しい口調とは、全くの別人のように柔らかい顔でお話してくれる。
「先のお考え……ぇ~?」
私は、少し疑問形になりながらも、なるほど~と納得をしていた。
「まぁ、他にも理由がありそうだけれど」
そう言うと彼は、クスッと笑う。
「星様ぁ。意味深です~!! その他の理由って、すっごく気になります」
(私の心はもう、わくわくが止まらないのです!!)
「はは、月のその好奇心旺盛な表情には弱い。しかし……想像の域を出ないから、これ以上は」
彼は少し、困り顔で私を見ていた。
「はぁ……そうですよねぇ」
今ここで、星と月が話している事は、全て不確定な内容。本当の事を知るには、太陽とユキトナ、二人に気持ちを聞いてみるしか方法はない。
(でも、そう簡単に聞けるはずもない……)。
「あれっ?」
でも考えてみると、不思議だ。最初にユキトナ様が太陽君を、舞踏会にお誘いになった時に太陽君は、あの日の『うさぎちゃん』だという事に、全然気付いていなかった。ユキトナ様のお名前を聞いて王女様だって分かってからも、まいったなぁーって、いつものお決まりポーズで気抜けしていた。
月は、また謎が増えてしまったーと、考え込みそうになる。が、ふと。ある事に気付く。そして、心の中で一人頷いた。
(あ、そっか! 王妃様がいらしてから、状況が変わったんだ)
すると、様子を見ていた星が、独り言を、話し始める。
「もう一つ。独り言を言うのであれば、『王妃様の計らいに、太陽が答えた』と、いう事ではないだろうか?」
「なーるほどー!!」
(だけど、そうなると。ますます二人は……)
「ねぇ、星様」
「うん? どうしたの?」
「『異国のふたり』が結ばれて、幸せになる事は、できるのでしょうか……」
「あぁ……」
星様の反応を見て、ハッ! 私は何を質問しているのだろう?! と、言ってしまった事を後悔した。
「あぁぁ、星様いいのです! 気になさらないで下さい」
いいのですーと、手を顔の前でぶんぶんと振った。しかし彼は、その私の姿と言葉を聞いて、笑って答えてくれた。
「できない事はないと思う。しかし、問題は多い。まず、二人は王女様と王子様。ユキトナ様は、このルナガディアにとって、なくてはならない存在のお方。一方、太陽は、イレクトルム王国をゆくゆくは背負って、国王になるお方だ。“普通”に、とはいかないだろうね」
「そうですよね……」
分かっていた。そう、やっぱり現実は厳しい。今回の舞踏会は偶然から始まり、王妃様のお考え? で上手くいったけれど。
――もし本当に、お二人に恋の花が咲いたら?
あの時はただ、お似合いだなんて簡単に考えていた事が、今はとても難しくて、深刻な事に思える。
(でも、もし本当に二人が想い合ったとしたら……)
「月、そんなに悲しい顔しないで」
「ほえっ? あぁ、えへへ……」
いつの間にか、顔をしかめていた私。星様は心配して優しく声をかけてくれる。
「月は、二人に幸せになってほしいの?」
そう聞かれて私は「はい」と、お返事をして……自分の考えをお話した。
「もしも、二人の想いが同じだとしたら。私は全力で応援したいのです!!」
気持ちが入り過ぎて、私の胸がきゅーっとなった。そして瞳は少しウルウルと、涙が浮かんでしまっていた。そんな私を星様は、心の中に沁み入ってくるような、いつもの穏やかな声で、落ち着かせてくれる。
「優しい三日月、泣かないで。もしも、二人が想い合うようになって、同じ未来を願ったとしたら。きっと二人なら乗り越えていけるだろう。……そう、幸せになれるはずだし、なってほしい」
「うん、星様。ありがとう……」
舞踏会の会場では、次の曲が流れ始めていた。
広場に視線を向けると、気のせいか? 太陽とユキトナの距離が、さっきよりも近付いているように見えた。
「太陽君とユキトナ様。まるでずーっと前から、一緒に過ごされて居るような……そんな風に見えますね」
「あぁ、そうだね」
――ユキトナ様、綺麗だなぁ……。
見惚れてしまうくらい、素敵な二人のダンス。会場にいる皆の視線を、釘づけにしていた。
この日から私と星様は。
太陽君とユキトナ様、二人の行く末を……。
幸せを祈りながら、見守る事にしたのだった。
次話もおたのしみにい~(*‘ω‘ *)




