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月世界の願いごと~奇跡の花は煌めく三日月の夜に咲いて~  作者: 菜乃ひめ可
第二・五章 文化交流会(魔法勝負後)
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75‐3 文化交流会2日目~舞踏会~(後編)

お読みいただきありがとうございます(*ノωノ)

♪こちらのお話は、読了時間:約6分です♪


(Wordcount2520)


カスミソウの意味を知った私の心は、なぜかドキドキしていた。


「星様……それってもしかして?」


 もしも本当に、太陽君のカスミソウの意味が、『無垢の愛』を表しているのだとしたら……。


――考えていた事が、本当に?!


 もしも本当に、二人に恋の花が咲いたら。あの時ふと勝手に想像を膨らませて、心配していた事になったら……!!


(あぁ! 一体?! 二人はどうなっちゃうの?)

 考えれば考えるほど、私の方がそわそわしてきてしまって。

『おせっかい月ちゃん』にスイッチが入る。そんな事を考えている私の姿を見て、星様は吹き出して笑い始めた。


「んっフフッ。本当に月は、表情豊かだね」


「んにゃ……そ、そんなぁ~」


 もぉっ! と言いながら、私はほっぺたをぷぅーっと膨らまし、彼を見つめる。すると、そういうところも可愛い♪ と、またサラッと恥ずかしい台詞を言って、揶揄うように笑った。


「あはは……はぁ。こんなに笑ったのはいつぶりかな? 本当に今日は楽しいよ。幸せな時間をありがとう」


「エッ、あぁいえ、私もで、ありがとなのです」


 急に、また! そんな真面目なお顔で!!

 そういう雰囲気も言葉も、言われ慣れていない私はまだ普通ではいられなくて。緊張でしゃべり方がおかしくなり、恥ずかしさが倍増した。


 しかし、星様はというと……「よかった」と、落ち着いた表情で、にっこり笑顔に戻っている。


 いつも、私ばかり恥ずかしくなってしまう。


 舞踏会の音楽一曲目の“ワルツ”が終わる頃に、星様はお話を切り出した。


「さて、月。もしかして? の話……太陽とユキトナ様の事だけれど」


「あ、はいっ!」

 ぽわーっとしていた私は、星様の声で、慌ててお話を聞く姿勢に戻る。


「知っての通り此処、ルナガディア王国とイレクトルム王国は【友好国】として、これまで長い歴史の中で平和的、そして協力的な関係を築いてきた。もしかしたら王妃様は、その事も考慮し、何かしら先のお考えがあっての……舞踏会参加を許可したのかな? と、僕は考えているよ」


 今の彼は、先程の険しい表情と厳しい口調とは、全くの別人のように柔らかい顔でお話してくれる。


「先のお考え……ぇ~?」

 私は、少し疑問形になりながらも、なるほど~と納得をしていた。


「まぁ、他にも理由がありそうだけれど」

 そう言うと彼は、クスッと笑う。


「星様ぁ。意味深です~!! その他の理由って、すっごく気になります」

(私の心はもう、わくわくが止まらないのです!!)


「はは、月のその好奇心旺盛な表情には弱い。しかし……想像の域を出ないから、これ以上は」


 彼は少し、困り顔で私を見ていた。


「はぁ……そうですよねぇ」


 今ここで、星と月が話している事は、全て不確定な内容。本当の事を知るには、太陽とユキトナ、二人に気持ちを聞いてみるしか方法はない。


(でも、そう簡単に聞けるはずもない……)。


「あれっ?」


 でも考えてみると、不思議だ。最初にユキトナ様が太陽君を、舞踏会にお誘いになった時に太陽君は、あの日の『うさぎちゃん』だという事に、全然気付いていなかった。ユキトナ様のお名前を聞いて王女様だって分かってからも、まいったなぁーって、いつものお決まりポーズで気抜けしていた。


 月は、また謎が増えてしまったーと、考え込みそうになる。が、ふと。ある事に気付く。そして、心の中で一人頷いた。

(あ、そっか! 王妃様がいらしてから、状況が変わったんだ)


 すると、様子を見ていた星が、()()()を、話し始める。


「もう一つ。独り言を言うのであれば、『王妃様の計らいに、太陽が答えた』と、いう事ではないだろうか?」


「なーるほどー!!」

(だけど、そうなると。ますます二人は……)


「ねぇ、星様」


「うん? どうしたの?」


「『異国のふたり』が結ばれて、幸せになる事は、できるのでしょうか……」


「あぁ……」


 星様の反応を見て、ハッ! 私は何を質問しているのだろう?! と、言ってしまった事を後悔した。


「あぁぁ、星様いいのです! 気になさらないで下さい」


 いいのですーと、手を顔の前でぶんぶんと振った。しかし彼は、その私の姿と言葉を聞いて、笑って答えてくれた。


「できない事はないと思う。しかし、問題は多い。まず、二人は王女様と王子様。ユキトナ様は、このルナガディアにとって、なくてはならない存在のお方。一方、太陽は、イレクトルム王国をゆくゆくは背負って、国王になるお方だ。“普通”に、とはいかないだろうね」


「そうですよね……」


 分かっていた。そう、やっぱり現実は厳しい。今回の舞踏会は偶然から始まり、王妃様のお考え? で上手くいったけれど。


――もし本当に、お二人に恋の花が咲いたら?


 あの時はただ、お似合いだなんて簡単に考えていた事が、今はとても難しくて、深刻な事に思える。

(でも、もし本当に二人が想い合ったとしたら……)


「月、そんなに悲しい顔しないで」


「ほえっ? あぁ、えへへ……」


 いつの間にか、顔をしかめていた私。星様は心配して優しく声をかけてくれる。


「月は、二人に幸せになってほしいの?」


 そう聞かれて私は「はい」と、お返事をして……自分の考えをお話した。


「もしも、二人の想いが同じだとしたら。私は全力で応援したいのです!!」


 気持ちが入り過ぎて、私の胸がきゅーっとなった。そして瞳は少しウルウルと、涙が浮かんでしまっていた。そんな私を星様は、心の中に沁み入ってくるような、いつもの穏やかな声で、落ち着かせてくれる。


「優しい三日月、泣かないで。もしも、二人が想い合うようになって、同じ未来を願ったとしたら。きっと二人なら乗り越えていけるだろう。……そう、幸せになれるはずだし、なってほしい」


「うん、星様。ありがとう……」


 舞踏会の会場では、次の曲が流れ始めていた。

 広場に視線を向けると、気のせいか? 太陽とユキトナの距離が、さっきよりも近付いているように見えた。


「太陽君とユキトナ様。まるでずーっと前から、一緒に過ごされて居るような……そんな風に見えますね」


「あぁ、そうだね」



――ユキトナ様、綺麗だなぁ……。


 見惚れてしまうくらい、素敵な二人のダンス。会場にいる皆の視線を、釘づけにしていた。



 この日から私と星様は。


 太陽君とユキトナ様、二人の行く末を……。

 幸せを祈りながら、見守る事にしたのだった。


次話もおたのしみにい~(*‘ω‘ *)

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