75‐1 文化交流会2日目~舞踏会~(前編)
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「はぅ~♡ 皆さん本当に綺麗ですねぇ。見惚れてしまって。お花柄が可愛い……ドレスのお色もたくさんあってぇ」
思わず本音が零れた。私がこの学園を選んだ理由の一つ“女の子らしい服装”への憧れ。その気持ちが、たくさんの素敵なドレスを目の前にして言葉になって溢れてしまったのだった。
すると、星様が笑いながら私に話しかけてきた。
「ふっふふ。この夜空に輝く星ぐらいキラキラおめめだね? 月もお花のドレス、着てみたいのかな?」
突然の質問!! 我に返り慌てる私は、恥ずかしさのあまりあたふたあたふた。そして、手をぶんぶんと振り全力で否定をする。
「んにゃっ!! そ、そんな、そんな事はないですよ! き、着てみたいとか……ないない! えへ、えっへへ」
「そう? きっと似合うと思うけどなぁ」
本気なのか? はたまた揶揄われているのか?
星様からの意外な言葉に、また私はドキッとして、動揺してしまう。
「いやいやいや……えーぇぇ……ぅぅ」
頬が赤く染まっていくのが分かる。熱くなる顔を手で覆い隠しながら、さらに、改めて! 懸命に!! 否定をした。“女の子らしい服装”へ憧れる気持ちを、星様に悟られぬように、と……。
「あはは、そんな一生懸命に否定しなくてもいいよ。ところで月は、ルナガディア王国の中心の都は“お花が有名”っていうのは知っているかな?」
爽やかな笑顔で話す星様に、心の中では「もぉーー!」と思いつつ。私は、まだ恥ずかしさの残った火照る顔を、手でパタパタしながら答えた。
「はい、し、知っています!」
そう此処ルナガディア王国、中心の都は〔花の街〕とも呼ばれる程、気温に関係なく様々なお花が一年中見られる。咲く花の種類も豊富で、道を歩けば美しい花にいつでも出会える! と、他国からも旅行客が多く来る場所として有名なのだ(と、ここまでは多くの国民が知っている事なのですが……)。
「あっ! キラリの森にも、珍しいお花が多く咲いていて♪ 見ているだけで人の心を和ませてくれるお花さんたちが……とても、好きで……」
――ふと、寂しさが過ぎる。
【キラリの森】にいるみんなの事や、いつも一緒に遊んでくれていた〔星域〕の中で暮らす動物たち。大きな木やお花……ひとりの時間……と色々な風景を思い出していた。ちょっぴり望郷の念に駆られ、自分の意識が別の場所にいってしまいそうになっていると、ふわっと。星様の優しい声が、私を楽しいこちらの時間……“現実”に引き戻してくれた。
「ふふ、僕も花はとても好きでね、今回の文化交流会で作ったフラワーガーデンも、実は僕の企画だよ…………」
彼は嬉しそうに、でも少し恥ずかしそうに花園について話してくれた。
「そうだったのですか?!」
(えぇぇ……才能って、スゴイ!!)
そして『楽しいお花の話』で盛り上がり、たくさん笑いあってから、星様は本題に戻った。きっと、私が寂しそうに故郷を思い出してしまった事に気付いて、元気づけてくれたのかな? と、後になって思った。
「それで今日みたいな舞踏会など、大切な社交の場に参加する時には、各々が好む花をモチーフにしたドレスを身に纏う事が多い。宝飾も花を意識して着飾ったりして……まぁそれが、ルナガディアの古い歴史上の掟? のようなものかな?」
「花をイメージして着飾るのは、男性も同じだよ」と、星様は笑いながら、様々な知識を教えてくれた。
「そうなのですねぇ……勉強になります」
(知らない事がたくさん、そんなに決まり事があるなんて)。
上流階級の方々は、華やかで憧れるって思っていたけれど……色々と決まり事も多くて大変で。知らなかった努力と苦労があるのだなぁと、私は深く感じた。
「それも踏まえて、ひとつ気になった事があって」
「……?」
星様は微笑しながら、少し楽しそうに話し始めた。
「太陽の衣装と、ユキトナ様のドレスだ。特にドレスが気になった。白い生地に、少し淡いピンク色の入ったふんわりとした可愛らしいお召し物に見えるのだけど、どうかな?」
「はい! 綺麗なシルク素材? のドレスです。ユキトナ様にとてもお似合いで、上品なふんわりとした可愛いお花のチュールレースが……ぁ……」
――あっ!!!!!!
私は、身を乗り出すくらいの勢いで、舞踏会会場で華麗に踊る二人を見つめ、今自分の頭の中に浮かんだ思いが、間違いないかを確認した。
「三日月! 乗り出したら危ないよ?!」
心配して、星様が声をかけてくれる。
「あっ、すみません。つい」
(これは……うん! 絶対そうだよ!!)
「うーんと。ドレス、違ったかな?」
魔法の眼鏡を掛けていても、お色については自信がない様子の星様は、真面目な表情の私を見て不安そうに話す。
「あっ! 安心してください。星様の言う通りで、白い生地に少し淡いピンク色のお召し物で合っています!!」
「そっか! いや、とても上品なドレスだけれど、とても珍しいドレスでもある。ユキトナ様にとっては、初めて外で参加される舞踏会だろうから……」
星様は笑いながら、また楽しそうに話していた。
私は、上流階級で掟となる『お花のドレス』の種類が、どういう意味を持つのかは分からないけれど……。
――これは、間違いない!!
「それであの、星様? 実は私……すごい事に気付いてしまったのですが」
「うん、どうしたの?」
「ハイ! それはですね♪」
私は、またひとつ『謎を解決!!』したのです。




