73 文化交流会2日目~夜会の始まり~
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“彼は星空を見つめて、語りかけるように、何かを呟く。”
『……星たちに願う。どうか三日月に【星の守護】を』
――――キラッ……――。
◇◆
「舞踏会かぁ、だいぶ人が集まってきたね」
何かを呟いた後、彼の視線は夜空から真下にある中央広場の方へ移り、これから始まる舞踏会の話をし始めた。
「ほぇっ? あっ、う、うん」
(さっきの星様は、夜空を仰ぎながら、何と言っていたのだろう?)
なぁんてね、気になりながらお返事をした。私は気持ちを落ち着かせるように、月色のしゅわしゅわソーダが残るグラスに、口を付けようとした、その瞬間……。ふと、ある事が映像のように、はっきりと頭の中を過ぎる。
んっ? エッ?? ちょっと待って。
私はもう一度、お星さまたちが“キラキラ”と輝く夜空と月を見て、困惑した。
――あれ? 何かが……おかしい……?
「星様!! あの、ちょっと。おかしな事を聞いても良いですか?!」
「えっ? うん、いいけれど。どうしたの?」
動揺を隠せずにいる私の姿に、心配そうにこちらを見ている星様。
(え? 見間違い? そんなまさか……?)
そう思いながら私は、おかしな事を、星様に聞いてみた。
「今日の……今宵の月は…………ずっと、“満月”でしたか?!」
すると彼は、迷う事なく答えてくれる。
「うん? ずっと変わらず、美しい満月だよ」
そんなはずは、と。私の頭の中は、何が起こっているのか理解が出来なかった。
「そう、ですか。ですよねぇ……はっはは」
私は、だんだん引き攣った表情で、力なく無理して笑うと、星様に返事をした。しかし、どうしよう? どういう事だろう? と、信じられない出来事に、心の中は恐怖にも似た感情で、いっぱいになっていったのだ。
「どうしたの? 大丈夫?」
少し青ざめた私の顔色を見て、星様は心配そうに聞いてきた。
(あっ、いけない。心配かけちゃう。平常心、平常心だよ、月!!)
「だ、だぁいじょぶですよ~、えっへへ♪ ありがとうございます、星様! 変な事を聞いてしまってすみませんでした」
私は、おかしな不安感を抱いている事を悟られぬように。「あは~」と、明るく笑って誤魔化した。
「そう? 月、何でも言ってね。僕で良ければ力になるよ」
その時、広く大きな“オーラ”が、光った。彼の心を表すかのような、温かな光。でも……精霊ではない? 彼の【力】なのか?
そんな星様は、いつも無理に聞こうとはしない。相手を思いやる言葉と優しさ、頼りになる包容力に。私は救われていた。
――なんて落ち着く“光”……。
「はい、ありがとうございます」
(でも、この問題は……)。
この不思議な出来事。解決するには頼るべきではないと。自分で何とかしないといけない気がする、と直感した。
◇◆
夜空に花火が上がり……程なくして。
“夜会”の始まりを知らせるアナウンスが流れた。
『「皆様へ、ご案内でございます。夜会の開始をお知らせ致します」』
「綺麗な声……」
私は聞こえてきた“声”に、一瞬で虜になった。
『「昨日に引き続きまして、本日も大変な盛り上がりを見せている文化交流会は、いよいよ佳境を迎えております。これも偏に、ご来場頂いたお客様方、また大会にご参加下さる生徒様方のお陰と、心より感謝申し上げます。そして、これより開催される最後の大会、舞踏会は、メインイベントと言っても過言ではありません」』
じーっと、静かな星様。てっきり私と同じように、声に聴き入っていると思っていた。しかし彼は突然、難しい表情になり、ボソッと呟く。
「うーーーん。この声は……」
――えっ? 「この声は」って……。
『「舞踏会へ参加する生徒様は、これまでの成果を発揮できるようお祈りしますと共に、ご歓談の皆様におきましては、ぜひとも静かに温かく見守り、“応援の光”を送っていただければ幸いでございます。それではごゆっくりと、本日最後の“特別なひととき”を、ご堪能下さいませ……」』
アナウンスが終わると、慌ただしかった空気は一気に静まり、ゆっくりとした時間が流れ始めた。
「始まったね」
そう言うと星様は、外していた眼鏡を再度かけた。
「……え、うん」
余計な事を、言ってしまっていないかな? とか。そもそも私が、彼にとっての“希望の光”というのは? とか。今夜の月の“謎”も心に引っかかったまま、様々な気になる事が残る中で。私は、彼の言葉に返事をして頷く。
あっ! あと……アナウンスの“声”も。星様が知っているかように、含みのある言い方をするので、とても気になっている。
「月、心配ないよ」
星様は、またまた私の考えを察したのか? はたまた悩んだ表情の私が隠しきれていなかったのか? いつもと同じ、優しく穏やかな声で、安心させるようにお話してくれた。
「先にも言ったが近々、僕の父に必ず会う事になる。お話の続きは、恐らくその時に……全てが語られるだろう」
「全て……ですか?」
(星様の? 秘密とか? なのかな)。
すると、中央広場を眺めていた星様が突然『エッ?!』と聞いた事のないような声を出した。
「星様? どうかしましたか?」
私も、足元に気を付けながら、屋上から中央広場を見てみる。
「いや……。意外だなぁと、思ってね」
「うにゃあ~??」
意外? 何の事だろう?
「太陽が……あそこにいるの、太陽だよね?」
少し困ったようにも見える表情で、聞いてきた。
「あっ! なるほどぉ~そういう事ですね!」
私は、そうですよぉ~♪ と答えた。
「あぁ……そして驚いた、というより信じられない」
星様は、子供のように身を乗り出し見ている。
「あわわ~! 星様!! 危ないですよぉ」
私はびっくりして、慌てて声をかけた。
「あっ、ごめんね。ありがとう」
そう言って、また中央広場に目をやる。そして……。
「まさか……いや、間違いない。あのお方は、第二王女の【雪兎名】様では?」
「あぁ~、ハイ。そうなのですよぉ」
それはそれは。普通は、驚きますよねぇ。
「あれっ?」
「エッ!! はい?」
私のお顔をじーっと見て、星様が言う。
「なぜ、月がユキトナ様の事を?」
「あぁ~それはですねぇ」
(このお話ながぁーっくなりますが……)。
「月が、どこまで知っているのか分からないけれど。恐らく此処にいる人の中で、ユキトナ様のお姿を知る者は極めて少ないだろう。いや、いないかもしれない」
彼は、大きな蒼い瞳をまん丸くし、とても驚いた様子で、中央広場を見ていた。
それに、どういう経緯で太陽と? と、独り言のように言いながら、彼は珍しく動揺し、考え込んでいたのだった。
「ユキトナ様って。それは……どういう事なのでしょうか?」
この時は、私も様々な情報が交錯し、クエスチョンマーク? がたくさん頭の中を飛んでいて。少し混乱してしまっていた。
◇◆
〔三日月の心の声〕
今日は、どういう事? という出来事や、他にも色々と……たくさんの事があり過ぎて!! 一生分のイベントを、もう全て経験してしまったのではないか? と思ってしまう程だった。
そして、やっぱり一番は!
――今宵の“お月様”が気になって、気になって。
思い返してみれば……【最高位紋章】の記章を付けた理事様も、間違いなく! おっしゃっていた。
――『綺麗な“三日月”だそうだよ』
あれは確かに『意味深な言葉』ではあったけれど。
今、目の前に浮かぶ“満月”ではなくて……。
今宵の夜空に、浮かんでいた“三日月”を。
きっと!
私と同じ月を見た方は、いるはずだから!!
「……探そう」
でも一体、どういう事なのか?
今は、本当に分からなぁーい!!
またぜひ、読みに来てくださいネ(*´▽`*)




