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月世界の願いごと~奇跡の花は煌めく三日月の夜に咲いて~  作者: 菜乃ひめ可
第二・五章 文化交流会(魔法勝負後)
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73 文化交流会2日目~夜会の始まり~

お読みいただきありがとうございます(*'▽')

♪こちらのお話は、読了時間:約6分です♪


(Wordcount3000)


“彼は星空を見つめて、語りかけるように、何かを呟く。”

『……星たちに願う。どうか三日月に【星の()()】を』


――――キラッ……――。


 ◇◆


「舞踏会かぁ、だいぶ人が集まってきたね」

 何かを呟いた後、彼の視線は夜空から真下にある中央広場の方へ移り、これから始まる舞踏会の話をし始めた。


「ほぇっ? あっ、う、うん」

(さっきの星様は、夜空を仰ぎながら、何と言っていたのだろう?)


 なぁんてね、気になりながらお返事をした。私は気持ちを落ち着かせるように、月色のしゅわしゅわソーダが残るグラスに、口を付けようとした、その瞬間……。ふと、ある事が映像のように、はっきりと頭の中を過ぎる。


 んっ? エッ?? ちょっと待って。

 私はもう一度、お星さまたちが“キラキラ”と輝く夜空と月を見て、困惑した。


――あれ? 何かが……おかしい……?


「星様!! あの、ちょっと。()()()()()を聞いても良いですか?!」


「えっ? うん、いいけれど。どうしたの?」

 動揺を隠せずにいる私の姿に、心配そうにこちらを見ている星様。


(え? 見間違い? そんなまさか……?)

 そう思いながら私は、()()()()()を、星様に聞いてみた。


「今日の……今宵の月は…………()()()、“満月”でしたか?!」


 すると彼は、迷う事なく答えてくれる。

「うん? ずっと変わらず、美しい満月だよ」


 そんなはずは、と。私の頭の中は、何が起こっているのか理解が出来なかった。


「そう、ですか。ですよねぇ……はっはは」


 私は、だんだん引き攣った表情で、力なく無理して笑うと、星様に返事をした。しかし、どうしよう? どういう事だろう? と、信じられない出来事に、心の中は恐怖にも似た感情で、いっぱいになっていったのだ。


「どうしたの? 大丈夫?」

 少し青ざめた私の顔色を見て、星様は心配そうに聞いてきた。


(あっ、いけない。心配かけちゃう。平常心、平常心だよ、月!!)


「だ、だぁいじょぶですよ~、えっへへ♪ ありがとうございます、星様! 変な事を聞いてしまってすみませんでした」

 私は、()()()()()()()を抱いている事を悟られぬように。「あは~」と、明るく笑って誤魔化した。


「そう? 月、何でも言ってね。僕で良ければ力になるよ」


 その時、広く大きな“オーラ”が、光った。彼の心を表すかのような、温かな光。でも……精霊ではない? 彼の【力】なのか?

 

 そんな星様は、いつも無理に聞こうとはしない。相手を思いやる言葉と優しさ、頼りになる包容力に。私は救われていた。


――なんて落ち着く“光”……。


「はい、ありがとうございます」


(でも、この問題は……)。

 この不思議な出来事。解決するには頼るべきではないと。自分で何とかしないといけない気がする、と直感した。


 ◇◆


 夜空に花火が上がり……程なくして。

“夜会”の始まりを知らせるアナウンスが流れた。


『「皆様へ、ご案内でございます。夜会の開始をお知らせ致します」』



「綺麗な声……」

 私は聞こえてきた“声”に、一瞬で虜になった。



『「昨日に引き続きまして、本日も大変な盛り上がりを見せている文化交流会は、いよいよ佳境を迎えております。これも(ひとえ)に、ご来場頂いたお客様方、また大会にご参加下さる生徒様方のお陰と、心より感謝申し上げます。そして、これより開催される最後の大会、舞踏会は、メインイベントと言っても過言ではありません」』



 じーっと、静かな星様。てっきり私と同じように、声に聴き入っていると思っていた。しかし彼は突然、難しい表情になり、ボソッと呟く。


「うーーーん。この声は……」


――えっ? 「この声は」って……。



『「舞踏会へ参加する生徒様は、これまでの成果を発揮できるようお祈りしますと共に、ご歓談の皆様におきましては、ぜひとも静かに温かく見守り、“応援の光”を送っていただければ幸いでございます。それではごゆっくりと、本日最後の“特別なひととき”を、ご堪能下さいませ……」』


 アナウンスが終わると、慌ただしかった空気は一気に静まり、ゆっくりとした時間(トキ)が流れ始めた。


「始まったね」

 そう言うと星様は、外していた眼鏡を再度かけた。


「……え、うん」


 余計な事を、言ってしまっていないかな? とか。そもそも私が、彼にとっての“希望の光”というのは? とか。今夜の月の“謎”も心に引っかかったまま、様々な気になる事が残る中で。私は、彼の言葉に返事をして頷く。


 あっ! あと……アナウンスの“声”も。星様が知っているかように、含みのある言い方をするので、とても気になっている。


「月、心配ないよ」

 星様は、またまた私の考えを察したのか? はたまた悩んだ表情の私が隠しきれていなかったのか? いつもと同じ、優しく穏やかな声で、安心させるようにお話してくれた。


「先にも言ったが近々、僕の父に必ず会う事になる。お話の続きは、恐らくその時に……全てが語られるだろう」


「全て……ですか?」

(星様の? 秘密とか? なのかな)。


 すると、中央広場を眺めていた星様が突然『エッ?!』と聞いた事のないような声を出した。


「星様? どうかしましたか?」

 私も、足元に気を付けながら、屋上から中央広場を見てみる。


「いや……。意外だなぁと、思ってね」

「うにゃあ~??」

 意外? 何の事だろう?


「太陽が……あそこにいるの、太陽だよね?」

 少し困ったようにも見える表情で、聞いてきた。


「あっ! なるほどぉ~そういう事ですね!」

 私は、そうですよぉ~♪ と答えた。


「あぁ……そして驚いた、というより信じられない」

 星様は、子供のように身を乗り出し見ている。


「あわわ~! 星様!! 危ないですよぉ」

 私はびっくりして、慌てて声をかけた。


「あっ、ごめんね。ありがとう」

 そう言って、また中央広場に目をやる。そして……。


「まさか……いや、間違いない。あのお方は、第二王女の【雪兎名(ユキトナ)】様では?」


「あぁ~、ハイ。そうなのですよぉ」

 それはそれは。普通は、驚きますよねぇ。


「あれっ?」


「エッ!! はい?」


 私のお顔をじーっと見て、星様が言う。

「なぜ、月がユキトナ様の事を?」


「あぁ~それはですねぇ」

(このお話ながぁーっくなりますが……)。


「月が、どこまで知っているのか分からないけれど。恐らく此処にいる人の中で、ユキトナ様のお姿を知る者は極めて少ないだろう。いや、いないかもしれない」


 彼は、大きな蒼い瞳をまん丸くし、とても驚いた様子で、中央広場を見ていた。

 それに、どういう経緯で太陽と? と、独り言のように言いながら、彼は珍しく動揺し、考え込んでいたのだった。


「ユキトナ様って。それは……どういう事なのでしょうか?」


 この時は、私も様々な情報が交錯し、クエスチョンマーク? がたくさん頭の中を飛んでいて。少し混乱してしまっていた。


 ◇◆


〔三日月の心の声〕


 今日は、どういう事? という出来事や、他にも色々と……たくさんの事があり過ぎて!! 一生分のイベントを、もう全て経験してしまったのではないか? と思ってしまう程だった。


 そして、やっぱり一番は!

――今宵の“お月様”が気になって、気になって。


 思い返してみれば……【最高位紋章】の記章(バッジ)を付けた理事様も、間違いなく! おっしゃっていた。


――『綺麗な“()()()”だそうだよ』


 あれは確かに『意味深な言葉』ではあったけれど。


 今、目の前に浮かぶ“満月”ではなくて……。

 今宵の夜空に、()()()()()()“三日月”を。


 きっと!

 私と同じ月を見た方は、いるはずだから!!


「……探そう」


 でも一体、どういう事なのか?

 今は、本当に分からなぁーい!!


またぜひ、読みに来てくださいネ(*´▽`*)


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