69 文化交流会2日目~心の距離~
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星様は、この“しゅわしゅわソーダ”に……。
なんと、あの!【星の輝き】を入れたのです!
『ぽちゃ……っちゃん……フワフワァ~』
何だろう。これは魔法かなぁ?
私は、期待に胸を膨らませながら、静かに、じーっと瓶を見つめて、どうなるのかなぁと待っていた。
すると、
(( しゅ~……キラキラッ! ))
私の心は期待と喜び。そして、浮かれに浮かれて気分が高揚していくのが、自分でもよく分かった。
『こんなに素敵なお菓子、見た事ない!!!』
三日月型の硝子瓶に入ったソーダ水。中では、色とりどり可愛い金平糖が仲良く合わさって、“しゅわしゅわぁ~”と、楽しげな音がする。その音は、私の好奇心をくすぐり、“ウキウキ”な気分にさせてくれた。
ソーダ水の泡に耳を澄ましていると、まるで美しい【和音】のようにも聞こえ、心地良くなってくる。
「七夕の日にだけ出会える、この“三日月型の瓶”はね……」
“瓶”に出会える!!
はぅ~。星様らしい表現ですねぇ……。
そう、言いながら星様は、【星の輝き】がソーダ水に、溶け込み始めたのを確認すると、三日月型の瓶を、アンティーク調のハート枠に付けたまま、そっ……と、丸テーブルの真ん中に置いた。
この時、可愛いフリルレースのテーブルクロスが、なぜ“ラメ・キラ黒色”だったのかを、理解した。
「あっ! ……星空みたい」
黒色のテーブルクロスに刺繍された、ラメの入ったキラキラ金色の糸が、硝子瓶の中身、シュワシュワソーダと重なり、輝いている。たぶん、今日の美しく大きな満月が、光の効果を増しているのだと思う。それはまるで、星空のように見えた。
彼は、私の頬が、嬉しさで紅潮していく様子を見て、クスクスと微かに笑うと、同じように嬉しそうな顔で、続きを話してくれる。なんだか二人で、秘密を共有し合うかのように、少しだけ……囁くような声で言った。
「これはね……【月の雫】と名付けられた、“特別なソーダ”なんだ」
「ほわぁ~♡ お名前も素敵ですねぇ」
私は、両手のひらを組み、願うような気持ちで、その“特別”が何なのかを、見逃さぬように見ていた。
【月の雫】ソーダの中で、【星の輝き】金平糖が、しゅわぁ~と浮かんだり、踊るように回ったり、溶けたりしている。様々な色の美しい金平糖が、各々のお役目を終えて、最後にソーダの泡と重なり合い、一緒になっていく――。
そして……。
【ふたつ】が、仲良く溶け合ったのを見て、私は、驚きと歓喜の気持ちで、思わずはしゃいでしまった。
「えぇー!! なんて、不思議なの?!」
「何色に……なったかな?」
星様は、落ち着いた声で、興奮気味の私に、聞いてきた。
「き、きいろ~? ……いえ、これはっ!! 輝く金色の……【お月様】の色に、変化しましたッ!!」
とても、とっても感動した。
「そうか、良かったよ。上手くいったみたいで、安心したよ」
彼は、お月様のソーダが成功した事に、ホッと胸をなでおろして、安心した様子だった。
「こんな事ってあるの?! というくらいに、スゴイです!!」
私は、初めての経験に、驚きと感動……そう、色んな感情が入り混じり、嬉しさのあまり、瞳がウルウルしてきてしまった。
「あははっ。月が、そこまで喜んでくれるとは。予想もしていなかったよ」
「え、えへへ……」
「では、せっかくなので♪ “しゅわしゅわ”三日月ソーダを、乾杯しようか」
「うんっ!! あっ……そういえば」
シュワシュワって、『大人の人たち』が飲むもの?
「どうしたの? 月」
「ソーダって、十六歳でも飲めるのですか??」
私が、心配な顔でそう聞くと、彼はクスッと笑った。そして、
「あ~そうだね、飲めないかもなぁ」
「ふぇ~残念……シュン」
「……ふっふふ。月、冗談だよ」
私の“シュン顔”を見て満足したのか、すぐに訂正の言葉が伝えられた。
「あぁー!! 星様、ひどーい」
この時、揶揄われた事に気付いて「もぉぉー」っと、頬を目一杯! ぷくーっと膨らました。
彼は、その姿を笑いながら「ごめんね~」と、いつものように見ている。
それから……。
とても嬉しそうに話しながら、星様はベンチに腰掛けた。
今度は“間”をあけずに、自然と私のすぐ横に。
いつもなら、恥ずかしすぎて頭の中が真っ白になっていただろう。
でも、今はなぜか? 私の気持ちは穏やかで、落ち着いている。(もちろん! お月様色に変化したソーダの感動は、興奮冷めやらぬ状態で、ウキウキが止まりませんが!!)
「さぁ、どうぞ……」
どこから出てきたの? 通常よりも少し小さめの、ソーダグラスを手渡された。丸みのあるボウルに三日月型のステム、そしてプレートの部分は可愛らしいハートの形で……♡ 星様の魔法だろうか? オリジナルと思われるキュートなグラスは、細部までこだわっているのが伝わってくる。
“『トットッシュワ……』”
三日月型の瓶から、月色に輝く【ソーダ】が、静かに、ゆっくりと、丁寧に……まるで、プロ級の技術を披露する星様は、月の光を受け入れながら、美しく注いでくれる。
「綺麗……あっ、星様のは」
「注いで下さるのですか? お姫様」
にっこりと、優しく微笑んでくれる星様から、瓶を受け取った。
「ふ、不慣れで申し訳ありませんが……」
私も、教わったマナー通りに、彼のグラスにソーダを注ぐ。
緊張で、手が少し震えながら!! はぁ、これは恥ずかしいです。
「ありがとう、こんなに幸せな事は、もう……一生無いかもしれないな」
ボソッと、小さな声で。星様が呟いた。
――どうして?
「そんな事ないです!! えーっとぉ、あまり上手には出来ませんが! ですが、私でよろしければ、また、一緒に!!」
その言葉を聞いた星様は、おめめまんまるで少し驚きつつも、頬を赤らめながら「そっか。うん、ありがとう」と、笑ってくれた。
「では、月の特別な日に……『乾杯』♪」
グラスを少しだけくっつけて、微笑み合った。
そして、二人で『最高の一口』を味わう。
「はぁうッ♡ おーいしぃ~」
「本当だ、美味しい」
美味しいねぇ~と、言って二人……瞳が合った。
私達は、言葉は交わさずに、笑顔で答え合った。
私は。
最初に逢った日の階段での“記憶”を、ふと想い出していた。
――あの日よりも……。
今日は、心の距離が、近づいている気がした。
次話もおたのしみにぃ♪




