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月世界の願いごと~奇跡の花は煌めく三日月の夜に咲いて~  作者: 菜乃ひめ可
第二・五章 文化交流会(魔法勝負後)
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69 文化交流会2日目~心の距離~

お読みいただきありがとうございます(≧▽≦)

♪こちらのお話は、読了時間:約5分です♪


(Wordcount2500)


 星様は、この“しゅわしゅわソーダ”に……。

 なんと、あの!【星の輝き】を入れたのです!


『ぽちゃ……っちゃん……フワフワァ~』

 何だろう。これは魔法かなぁ? 

 私は、期待に胸を膨らませながら、静かに、じーっと瓶を見つめて、どうなるのかなぁと待っていた。


 すると、

(( しゅ~……キラキラッ! ))


 私の心は期待と喜び。そして、浮かれに浮かれて気分が高揚していくのが、自分でもよく分かった。


『こんなに素敵なお菓子、見た事ない!!!』


 三日月型の硝子瓶に入ったソーダ水。中では、色とりどり可愛い金平糖が仲良く合わさって、“しゅわしゅわぁ~”と、楽しげな音がする。その音は、私の好奇心をくすぐり、“ウキウキ”な気分にさせてくれた。

 ソーダ水の泡に耳を澄ましていると、まるで美しい【和音】のようにも聞こえ、心地良くなってくる。


「七夕の日にだけ出会える、この“三日月型の瓶”はね……」


 “瓶”に()()()()!!

 はぅ~。星様らしい表現ですねぇ……。


 そう、言いながら星様は、【星の輝き】がソーダ水に、溶け込み始めたのを確認すると、三日月型の瓶を、アンティーク調のハート枠に付けたまま、そっ……と、丸テーブルの真ん中に置いた。


 この時、可愛いフリルレースのテーブルクロスが、なぜ“ラメ・キラ黒色”だったのかを、理解した。


「あっ! ……星空みたい」

 黒色のテーブルクロスに刺繍された、ラメの入ったキラキラ金色の糸が、硝子瓶の中身、シュワシュワソーダと重なり、輝いている。たぶん、今日の美しく大きな満月が、光の効果を増しているのだと思う。それはまるで、星空のように見えた。


 彼は、私の頬が、嬉しさで紅潮していく様子を見て、クスクスと微かに笑うと、同じように嬉しそうな顔で、続きを話してくれる。なんだか二人で、秘密を共有し合うかのように、少しだけ……囁くような声で言った。


「これはね……【月の雫】と名付けられた、“特別なソーダ”なんだ」

「ほわぁ~♡ お名前も素敵ですねぇ」

 私は、両手のひらを組み、願うような気持ちで、その“特別”が何なのかを、見逃さぬように見ていた。


【月の雫】ソーダの中で、【星の輝き】金平糖が、しゅわぁ~と浮かんだり、踊るように回ったり、溶けたりしている。様々な色の美しい金平糖が、各々(おのおの)のお役目を終えて、最後にソーダの泡と重なり合い、一緒になっていく――。


 そして……。


【ふたつ】が、仲良く溶け合ったのを見て、私は、驚きと歓喜の気持ちで、思わずはしゃいでしまった。


「えぇー!! なんて、不思議なの?!」


「何色に……なったかな?」

 星様は、落ち着いた声で、興奮気味の私に、聞いてきた。


「き、きいろ~? ……いえ、これはっ!! 輝く金色の……【お月様】の色に、変化しましたッ!!」


 とても、とっても感動した。


「そうか、良かったよ。上手くいったみたいで、安心したよ」

 彼は、お月様のソーダが成功した事に、ホッと胸をなでおろして、安心した様子だった。


「こんな事ってあるの?! というくらいに、スゴイです!!」

 私は、初めての経験に、驚きと感動……そう、色んな感情が入り混じり、嬉しさのあまり、瞳がウルウルしてきてしまった。


「あははっ。月が、そこまで喜んでくれるとは。予想もしていなかったよ」


「え、えへへ……」


「では、せっかくなので♪ “しゅわしゅわ”三日月ソーダを、乾杯しようか」


「うんっ!! あっ……そういえば」

 シュワシュワって、『大人の人たち』が飲むもの?


「どうしたの? 月」


「ソーダって、()()()でも飲めるのですか??」


 私が、心配な顔でそう聞くと、彼はクスッと笑った。そして、

「あ~そうだね、飲めないかもなぁ」


「ふぇ~残念……シュン」


「……ふっふふ。月、冗談だよ」

 私の“シュン顔”を見て満足したのか、すぐに訂正の言葉が伝えられた。


「あぁー!! 星様、ひどーい」

 この時、揶揄われた事に気付いて「もぉぉー」っと、頬を目一杯! ぷくーっと膨らました。


 彼は、その姿を笑いながら「ごめんね~」と、いつものように見ている。


 それから……。

 とても嬉しそうに話しながら、星様はベンチに腰掛けた。

 今度は“間”をあけずに、自然と私のすぐ横に。


 いつもなら、恥ずかしすぎて頭の中が真っ白になっていただろう。

 でも、今はなぜか? 私の気持ちは穏やかで、落ち着いている。(もちろん! お月様色に変化したソーダの感動は、興奮冷めやらぬ状態で、ウキウキが止まりませんが!!)


「さぁ、どうぞ……」


 どこから出てきたの? 通常よりも少し小さめの、ソーダグラスを手渡された。丸みのあるボウルに三日月型のステム、そしてプレートの部分は可愛らしいハートの形で……♡ 星様の魔法だろうか? オリジナルと思われるキュートなグラスは、細部までこだわっているのが伝わってくる。

 

“『トットッシュワ……』”


 三日月型の瓶から、月色に輝く【ソーダ】が、静かに、ゆっくりと、丁寧に……まるで、プロ級の技術を披露する星様は、月の光を受け入れながら、美しく注いでくれる。


「綺麗……あっ、星様のは」

「注いで下さるのですか? お姫様」


 にっこりと、優しく微笑んでくれる星様から、瓶を受け取った。


「ふ、不慣れで申し訳ありませんが……」

 私も、教わったマナー通りに、彼のグラスにソーダを注ぐ。


 緊張で、手が少し震えながら!! はぁ、これは恥ずかしいです。


「ありがとう、こんなに幸せな事は、もう……()()()()かもしれないな」

 ボソッと、小さな声で。星様が呟いた。


――どうして?


「そんな事ないです!! えーっとぉ、あまり上手には出来ませんが! ですが、私でよろしければ、また、一緒に!!」


 その言葉を聞いた星様は、おめめまんまるで少し驚きつつも、頬を赤らめながら「そっか。うん、ありがとう」と、笑ってくれた。


「では、月の特別な日に……『乾杯』♪」


 グラスを少しだけくっつけて、微笑み合った。


 そして、二人で『最高の一口』を味わう。


「はぁうッ♡ おーいしぃ~」

「本当だ、美味しい」


 美味しいねぇ~と、言って二人……瞳が合った。

 私達は、言葉は交わさずに、笑顔で答え合った。



 私は。

 最初に逢った日の階段での“記憶”を、ふと想い出していた。


――あの日よりも……。


 今日は、心の距離が、近づいている気がした。


次話もおたのしみにぃ♪

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