65 文化交流会2日目~夜空~
お読みいただきありがとうございます(*'▽')
♪こちらのお話は、読了時間:約4分です♪
(Wordcount1850)
強く吹いた風を感じてから、二人の間に、沈黙が流れていた。
目の前に現れた、ルナガディア王国全体の大事な“地図”である『魔法展開図』は、うっすらと、少しずつ、消え始めている。
――能力……閉じてないのに、なぁ。
私の能力が弱まっていて、見れなくなってきているのかな? それとも、大事な地図だし、時間が経つと“消える”のかな? とか、色々と考えていた。
地図の消えゆく姿は、私の瞳にぽわぁっと映り込んだ。そして、物寂しい気持ちで見つめる。すると急に彼は、ベンチから立ち上がり、風のように沈黙を破った。
「あっ!!」
「エッ……?!」
星様の、高めで明るい声は、ちょっと暗くなっていた空気を、一瞬で忘れさせてくれた。
その、彼のたったひと声で、私の心身は、“ポカポカ”してくる。
「忘れていたよ」
ニコニコしながら、持ってきていた鞄を、開け始めた。
「忘れ物、ですか?」
星様が、屋上扉前に来る時、ランチバッグ以外の鞄を持って来るのは、とっても珍しい。しかも、ちょっと大きめのトートバッグ。
何が……入っているのかな?
ちょっぴり、気になってしまう。
「今夜、僕がこの場所に来た、一番の目的を忘れるところだったよ」
そう言うと、爽やかな表情で『案内』するように、右手を空へ向けた。彼の手が差す方向を見上げると、月の光はいつもより明るくて、星は夜空で“キラキラ”と、光り輝いていた。
「月のために……奏でるよ」
「わたし?」
((( ぽちゃん )))
――水の……“音”?
『…………【流星】』
「え、はぁうあー!!」
さっきまで『魔法展開図』が、美しく線引かれていた屋上。
その足元の地図が消えると、いつの間にか、穏やかな海のように。“水”のように変化していった。そして、その水の音は“音楽”を奏でる。
屋上の海。水面に降り注ぐ、光の粒は……まるで、海に映る『星屑』のようで。
私は、無意識に両手を広げていた。その美しい星空を、流れ星を。心身全てで、受け止めるかのように。
「うわあぁー……きれーい」
すっかり、見とれてしまって。しばらく“ぽわぁっ”と、心地良い気分になって。静かな時間、自然と瞼を閉じる。それでも感じる、明るい星屑の光。
――星様の魔法は。
どうしていつも、こんなに温かいのかな?
「……き、……かづき?」
あれ? 星様の声。
「三日月、ごらん……」
その言葉で瞳を開き、驚いた。
「こ、これって?!」
「ラフィール先生のように、上手には出来ないけれど」
な、なんと、そこには!
可愛らしい♪ ガーデンテーブルセットが準備されていた。私が、瞳を閉じて、見ていない間と言っても、ほんの少しの時間。お茶会の時、ラフィール先生が展開した魔法の発動よりも、早かったのでは? と、本当に驚いた。
思い出したのは噴水の側、私が眠ってしまっていた、アンティーク調のベンチ。でも、彼の魔法でセッティングされた、ガーデンテーブルとベンチの方が!
「か……可愛いよぉ♡」
私の反応を見た星様は、嬉しそうな顔をした。
「良かった! 喜んでくれて」
彼は、ベンチへどうぞ~と、案内してくれた。
「ハイ♪ とーっても素敵です!」
ありがとうございます、と、ルンルン♪ 気分で座る。すると、また私の鼓動を高鳴らせる言葉を、“サラッ”と、星様は言うのです。
「創造した事のない魔法でね。少し不安だった。でも、“プリンセス”……つまり、今日の【三日月】をイメージして、セットしてみたよ。気に入ってもらえて本当に良かった。お姫様♪」
「ま、また揶揄ったー!!」
やめてよぉーと、少し頬を膨らましながら、私の顔は、また火照り始めた。
「揶揄っていないよ」
スッと、表情が引き締まる。そして、真面目な表情で、星様は言葉を続けた。
「ずっと『お姫様』でも、良いと思うよ」
にっこり笑顔で見つめられ、目が合った。
「ぃぇ…………」
は、恥ずかしすぎて。何も言えなくなってしまった。
両手で頬を隠して、火照っている自分の体温を、確認すると……た、大変です! 熱すぎて、きっと今、私の頬は、“真っ赤っかのりんごちゃん”だと思います!!
「さて、仕上げにいきましょう」
そして、星様が軽くフィンガースナップをすると、あら? 不思議。
可愛くて丸いガーデンテーブルに、フリルレース付きの黒いクロスが、ふんわりと敷かれた。よく見ると、少しラメが入っているみたい。
「わお! 綺麗ですねぇ」
でも“黒”って、ちょっと変わってる。
「まだまだ。お楽しみはこれからだよ」
ふふっと笑う、嬉しそうなお顔は、ちょっと可愛く見えてしまう。
そして、どうやら星様には。
何だか『楽しい』考えが、あるようです。
お読みいただきありがとうございます☆




