64 文化交流会2日目~繋がり~
お読みいただきありがとうございます(/ω\)
♪こちらのお話は、読了時間:約6分です♪
(Wordcount2630)
――あと一つだけ、星様への質問がある。
それは、なんとなく気にしないようにしていた三日月。しかしどうしても気がかりで、ずっと頭の片隅に残ったままの疑問。
(やっぱり、気になるの!)
そして三日月は思い切ってセルクへ、ずっと気になっていたそれを聞くことにした。
「星様? 質問……聞いてもいいですか?」
なかなか聞きづらく、しかしずっと気になっていたこと。三日月は恥ずかしさなのか? 頬を少しピンク色に染めながらも、頑張って尋ねた。
「うん、いいよ。何なりと」
ふわっと笑い、三日月の顔を優しい眼差しで見つめている。
「ありがとうございます。えっと……メルルとティルのお話なのですが」
「【メルティ】のこと?」
彼は不思議そうに一瞬、目の色を変えた。
二人と三日月はスカイスクールに通い始めるまでの十四年間。ずっとセレネフォス家で一緒に暮らしてきた。もう家族同然。
(メルルとティルも、きっと思ってくれているはず)
「三日月が生まれた時から、いつもあなたの傍をくっついて、離れなくてねぇ」と、母からはそう聞いていた。
――私が、心許せる。
「はい」
◆
さてさて~、ここでッ!!
私の大好きなメルルとティルの、ご紹介をしたいと思いまぁす♪
〔メルルとティルの紹介コーナー〕
まずは特徴! 二人は、お顔そっくりな双子ちゃんで、本当に見分けがつかない程、よく似ている。
それ以上に、びっくりするほど動きも同じなのです。
背丈、髪の色、瞳の色、話し方や愛嬌のある声まで。そして、長年暮らしてきてすごい! と、感動するのは朝、目を覚ます瞬間や夜の眠りにつく時も同時。生活する中で、全ての仕草が二人はほぼ……というか、全く同じなのだ。
唯一どちらかを見分ける方法と言えば……。
――生まれつきある“痣”で、その位置に違いがある。
目を凝らしてよ~く見れば分かるくらい、白くて薄い“三日月形”のような、痣が。
【メルル】は、左目の下に。
【ティル】は、右手の甲に。
『この三日月の形、というのがぁ~』
(はぁ~、何とも……私との運命を感じますよねぇ)
その痣は、明るいうちはほとんど見えず、しかし、月の輝く夜になると、どうしてか? その光に反応して少し目立ち見えるようになります。
元々、強い【力】を持つメルルとティル。おそらく、二人の中にある、なにかしらの魔力が、関係しているのかな、と。勝手に思っていた。
年齢は私と同じで、お誕生日がまだなので、今は十五歳。小柄で、背は低くて。いつまでも子供みたいに、無邪気で可愛くて。
その二人がいつも「キャッキャッ」と、楽しそうに遊んでいたりするのを見ていると“ヨシヨシ~ギュ~ッ”って、抱きしめたくなる。
それはそれは!!
もぉ~可愛くて可愛くて、仕方がない。
遠くにいてもすぐに分かる天然パーマくるくる~の髪色は、ターコイズブルーに美しい海のようなグリーンメッシュ。そして、くりっくりーで大きくキラキラうるっとしたお目めは、明るく澄んだ、み空色だ。
「はぁう……まるで。空から舞い降りた、天使のようです」
と、まぁまぁ。私のひいき目な紹介でしたッ。
◆
そんな二人と、ずっと仲良く過ごしてきた三日月。そして最近ふと、思ったことがあった。
メルルとティルの生まれた場所の話や両親、親戚や親しい人はいるのか? 二人がどうしてセレネフォス家で一緒に暮らしていたのか? など、今まで聞いたことがなかった。ずっと家族のように過ごしてきたからか、今まで疑問に思うことなく、考えもしなかったのだ。
その二人が珍しく「お友達」と言って親しそうに連れてきた相手が、セルクだった。その互いに呼び合う名(愛称)。
――二人のことをメルティ、星様のことをセリィ、と。
その呼び方を聞いた瞬間、三日月は三人の間に特別な何かを感じた。
(あの時からずっと、不思議に思っていたの)
『そういえば、メルルとティルって……?』
――何処から来たのかなって。
改めて気になり始めると、どうしようもない。三日月の心と頭の中で新たに生まれたのは小さな不安と、考えても分からない疑問。
◇
ほんの数秒、顔色を変えたセルクはすぐにいつもの表情に戻った。
まだ何も質問の内容を話していないにも関わらず、三日月の気持ちを見透かしたかのような笑顔で、話し始める。
「メルティはね、僕の父と、とても深い関わりを持っているんだ」
「星様の、お父様と?」
(どういうことなのだろう?)
セルクは静かに頷いた。そして、夜空に光輝く星を見上げ、微笑むように穏やかな表情で、話を続ける。
「その縁で、今は中心の都にある【アスカリエス家】、つまり僕の家で一緒に暮らしている。ただ僕自身、屋敷にいる時間がほとんどないからあまり会わないが。顔を合わせる機会があるとすれば……たまにだけど、朝食の時ぐらいかな」
フフッと少し寂しそうに、笑いながらそう答えた。
「そう、なのですね」
アスカリエス家、そしてメルルとティル。三日月は内心、まさかセルクの父との繋がりがあったなんてと、驚いていた。
「月、聞きたかった答えにはなったのかな?」
その包み込まれるような優しい声に、三日月はホッと心が落ち着く。。
「……はい。ありがとうございました」
しかし少しだけ、ぎこちなく答えてしまった。三日月は気持ちの切り替えをしようとすぐに表情を取り繕う。嘘がつけない――動揺を隠せないバレバレの笑顔である。
「ごめん、三日月……」
悲しそうな顔で、セルクが言った。
「え? どうして、星様が謝るのですか?!」
(言えない事情があるのだろうと感じた。なのに私がおかしな質問しちゃったり、返事がぎこちなかったから!)
「いや、さっきも言ったけれど。もうすぐ、僕の父に会うことになるだろう。その時にすべて……うん、ね?」
そう言うとセルクは、優しい顔がまたさらに優しくなる程、眉を下げて三日月に笑いかけた。
――まただ。星様の流暢なしゃべりが……お話が途切れてしまった。
(私が、何か困らせているみたい?)
「星様……ごめんなさい」
(だからお願いです。そんな悲しそうな顔しないで)
「ふふ。月こそ、どうして謝るの?」
力なく微笑むセルクに、今の三日月にはその優しさが苦しく感じた。
いつもは平和で柔らかな雰囲気に余裕のある落ち着いた感じのセルク。
(でも、そんなに辛そうな顔をしているのを見たら)
――どうしたらいいのか、分からなくなるの。
三日月はこの時、あの日の言葉を思い出していた。
『“モノクロの景色”――「時が来たら話す」』
少しだけ強く吹いた風。
艶のあるセルクの黒髪がふわりと靡いた。
いつもお読み下さりありがとうございます(u u)
感謝なのなのデシュ♪




