62 文化交流会2日目~地図~
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ちょっぴり揶揄い口調で『内緒』と言った後、彼はまた、ゆっくりと歩き出し、屋上の奥にある、白いベンチへ座った。
私は? と、いうと。
本当は、星様とベンチまでご一緒したかったのですが。目の前に広がる、見た事のない『魔法展開図』。しかも!! それは、星様の“お父様”がお創りになられたという“ルナガディア王国全体”を表していて。大切な地図だって……おっしゃってましたよねぇ。
≪ そんな貴重な【地図】の上を歩くなんて! ≫
恐れ多くて、出来ませんよぉ!
私は、両親の影響もあって、人よりも多く、様々な【力】の使い方。【魔法】について学び、出来ない“術や技”は、見たり聞いたりして、覚えてきた。いつかは、自分の【力】を、自由に“魔力開放”できる日が来る事を、克服出来る日が来る事を、信じて……。
――それでも、私は。
この『魔法展開図』、今までに感じた事のない大きな【力】を持つ。その創造に圧倒され、経験した事のない驚きの“感情”で、正直私は足がすくみ……その場から動けなくなってしまっていた。
その足はまだ、扉から一歩、踏み出したくらいの位置で、止まっていて。屋上に出たとは言えない場所に立っている。
どうしたらいいのか? 分からずに“どぎまぎ”して、困ってしまって佇んでいると、奥のベンチに座っている星様の手が“スッ”と、夜空に向かって伸びた。
≪ ふにゃ? ≫
その手は、
『おいでおいで~♪』……そう、見える。
そして、
“ゆらゆら”と、手招きしているみたい。
「えっ……でもぉ」
【地図】の上を歩いてしまうのは?!
≪ ちょっと気が引けます ≫
――それに、ちょっと怖い事がぁ……。
私の、戸惑う様子を見て、笑う星様。
「月、歩いても大丈夫。飲み込まれたりしないから。怖がらなくてもいいから♪」
この飲み込まれるというのは、昔話にある{魔法陣}のお話の事で。偶然にも、ついさっき昔話を思い出し、連想してしまい、“怖い”と思っているお話だった。
≪ ほ、星様って ≫
どうして私が、心の中で考えている事が、いつも分かってしまうのだろう?
「怖くなんて……ないですよぉ!」
この言葉で、ますます笑われているー!!
私の、ちょっと“怖い”心が、見え見えのようです。
次の言葉、星様の声が、私の背中を押してくれる。
「もしも、飲み込まれそうになったとしても、月には僕がついているから大丈夫。心配する事はないから」
『ねっ♪』
笑顔でウィンクされたぁー!!
≪ また、星様はぁ! ≫
単純な私。いつも星様が“サラッ”と言う、恥ずかしくなるような“言葉”ひとつで、“怖い”という気持ちが和らぐ。
そして、私は歩き出した。
魔法が見せる“幻想的な空間”とはいえ……。
戸惑いの中、まるで迷路を彷徨うかのように“キョロキョロ”と周りを見渡して、足元の『図』を確認しながら歩く。
一歩一歩。
歩くたびに『魔法展開図』の輝く光は“水たまり”のように波紋が広がり、地図を辿る線は、まるで楽器のように弾く綺麗な音。そして、余韻を残しながら、元の【地図】に戻っていく。
≪ 何だろう? この感覚 ≫
不思議な……何か違う【魔力】を感じる。
私は緊張の中でも、やっとの思いでベンチに着くと、両手を揃えて真っ直ぐに。静かに立ち止まって落ち着いた。
その横には、美しい姿勢でベンチに腰掛ける、星様がいる。
≪ 一緒に座っても、いいのかな? ≫
私は、恥ずかしさで余裕がなくて。でも!
気持ち一杯一杯で、頑張って話しかけた。
「お隣……失礼しますです」
≪ はぅ! 緊張で、また変な言葉にぃ! ≫
「はーい、どうぞ~♪」
そんな事は気にもしない、と、ニッコリ笑顔で、彼は迎えてくれる。
――そう……どんな状況でも。
いつもこうして、大きな心で受け止めてくれる。
(( ちょこん…… ))
もう一人、座れるかな? ぐらいの『間』をあけて。
私はそっと、星様の隣に座った。
何だか恥ずかしい。
でも……
――心地良い緊張感。
私の『お気に入り』のこの場所で。
星様と過ごす、穏やかなひと時は、いつだって楽しくて。
黙っていても、そばにいるだけで『落ち着くなぁ』って想える。
そして……
『自然体』。この言葉が、今の私を表現するのに、一番よく合っている。
静かで、涼しい風がそよそよと、髪を撫でるように吹いて。そんな、ふんわりとした時間が、ゆっくりと私達の『間』に流れていた。
「いい風だ……」
星様が“ふわっ”と、微笑みながら言った。
その時、私はふと、思い出す。
≪ あっ、そうだった! ≫
そういえば、“気になる事”は、ひとつだけではない事を、思い出した。
屋上の、“魔法管理”している、星様の“お父様”の事は『内緒』で終わっちゃったけれど。他にも、ずっと気になっている事があって。
≪ 今日は聞けそうな気がする! ≫
私は、星様の顔色を、少しだけ窺う。
≪ 勇気を出して! 三日月! ≫
よ、よぉしっ!
「あの……星様!!」
「――ん? なぁに~?」
彼は、夜空を見上げたまま、“甘く優しい声”で、お返事をする。
≪ 今日の星様の声は、いつもと違う気がする ≫
「ずっと……星様に、聞きたい事がありまして」
それを聞いて、夜空を向いていた星様の蒼い瞳は、私の顔を映し、細めた。
「うん? いいよ、何なりと」
そして“ニコッ”と、優しく笑う。
『答えられる範囲で、お答えするよ。お姫様~』と、冗談交じりに言ってくれた。たぶん、私の緊張が伝わり過ぎて、お話をしやすいように、場を和ませてくれたのだと思う。
私は「ありがとうございます」と、お礼を言って、質問を始めた。




