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月世界の願いごと~奇跡の花は煌めく三日月の夜に咲いて~  作者: 菜乃ひめ可
第二・五章 文化交流会(魔法勝負後)
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62 文化交流会2日目~地図~

お読みいただきありがとうございます(◍•ᴗ•◍)

♪こちらのお話は、読了時間:約5分です♪


(Wordcount2200)


 ちょっぴり揶揄い口調で『内緒』と言った後、彼はまた、ゆっくりと歩き出し、屋上の奥にある、白いベンチへ座った。


 私は? と、いうと。

 本当は、星様とベンチまでご一緒したかったのですが。目の前に広がる、見た事のない『魔法展開図』。しかも!! それは、星様の“お父様”がお創りになられたという“ルナガディア王国全体”を表していて。()()な地図だって……おっしゃってましたよねぇ。


≪ そんな貴重な【地図】の上を歩くなんて! ≫


 恐れ多くて、出来ませんよぉ!


 私は、両親の影響もあって、人よりも多く、様々な【力】の使い方。【魔法】について学び、出来ない“術や技”は、見たり聞いたりして、覚えてきた。いつかは、自分の【力】を、自由に“魔力開放”できる日が来る事を、克服出来る日が来る事を、信じて……。


――それでも、私は。

 この『魔法展開図』、今までに感じた事のない大きな【力】を持つ。その創造に圧倒され、経験した事のない驚きの“感情”で、正直私は足がすくみ……その場から動けなくなってしまっていた。


 その足はまだ、扉から()()、踏み出したくらいの位置で、止まっていて。屋上に出たとは言えない場所に立っている。


 どうしたらいいのか? 分からずに“どぎまぎ”して、困ってしまって(たたず)んでいると、奥のベンチに座っている星様の手が“スッ”と、夜空に向かって伸びた。


≪ ふにゃ? ≫


 その手は、

『おいでおいで~♪』……そう、見える。


 そして、

“ゆらゆら”と、手招きしているみたい。


「えっ……でもぉ」

【地図】の上を歩いてしまうのは?!


≪ ちょっと気が引けます ≫


――それに、ちょっと()()事がぁ……。


 私の、戸惑う様子を見て、笑う星様。

「月、歩いても大丈夫。()()()()()()()しないから。怖がらなくてもいいから♪」


 この()()()()()()というのは、昔話にある{魔法陣}のお話の事で。偶然にも、ついさっき昔話を思い出し、連想してしまい、“()()”と思っているお話だった。


≪ ほ、星様って ≫

 どうして私が、心の中で考えている事が、いつも分かってしまうのだろう?


「怖くなんて……ないですよぉ!」


 この言葉で、ますます笑われているー!!


 私の、()()()()“怖い”心が、見え見えのようです。


 次の言葉、星様の声が、私の背中を押してくれる。

「もしも、()()()()()()()になったとしても、月には僕がついているから大丈夫。心配する事はないから」


『ねっ♪』

 笑顔でウィンクされたぁー!!


≪ また、星様はぁ! ≫


 単純な私。いつも星様が“サラッ”と言う、恥ずかしくなるような“言葉”ひとつで、“怖い”という気持ちが和らぐ。


 そして、私は歩き出した。


 魔法が見せる“幻想的な空間”とはいえ……。

 戸惑いの中、まるで迷路を彷徨うかのように“キョロキョロ”と周りを見渡して、足元の『図』を確認しながら歩く。


 ()()()()

 歩くたびに『魔法展開図』の輝く光は“水たまり”のように波紋が広がり、地図を辿る線は、まるで楽器のように弾く綺麗な音。そして、余韻を残しながら、元の【地図】に戻っていく。


≪ 何だろう? この感覚 ≫

 不思議な……何か違う【魔力】を感じる。


 私は緊張の中でも、やっとの思いでベンチに着くと、両手を揃えて真っ直ぐに。静かに立ち止まって落ち着いた。


 その横には、美しい姿勢でベンチに腰掛ける、星様がいる。


≪ 一緒に座っても、いいのかな? ≫


 私は、恥ずかしさで余裕がなくて。でも!

 気持ち一杯一杯で、頑張って話しかけた。


「お隣……失礼しますです」


≪ はぅ! 緊張で、また変な言葉にぃ! ≫


「はーい、どうぞ~♪」

 そんな事は気にもしない、と、ニッコリ笑顔で、彼は迎えてくれる。


――そう……どんな状況でも。

 いつもこうして、大きな心で受け止めてくれる。


(( ちょこん…… ))

 もう一人、座れるかな? ぐらいの『間』をあけて。

 私はそっと、星様の隣に座った。


 何だか恥ずかしい。

 でも……


――心地良い緊張感。


 私の『お気に入り』のこの場所で。

 星様と過ごす、穏やかなひと時は、いつだって楽しくて。

 黙っていても、そばにいるだけで『落ち着くなぁ』って想える。


 そして……

『自然体』。この言葉が、今の私を表現するのに、一番よく合っている。


 静かで、涼しい風がそよそよと、髪を撫でるように吹いて。そんな、ふんわりとした時間が、ゆっくりと私達の『間』に流れていた。


「いい風だ……」

 星様が“ふわっ”と、微笑みながら言った。


 その時、私はふと、思い出す。

≪ あっ、そうだった! ≫


 そういえば、“気になる事”は、()()()()()()()()()事を、思い出した。


 屋上の、“魔法管理”している、星様の“お父様”の事は『内緒』で終わっちゃったけれど。他にも、ずっと気になっている事があって。


≪ 今日は聞けそうな気がする! ≫


 私は、星様の顔色を、少しだけ(うかが)う。


≪ 勇気を出して! 三日月! ≫ 


 よ、よぉしっ!

「あの……星様!!」


「――ん? なぁに~?」

 彼は、夜空を見上げたまま、“甘く優しい声”で、お返事をする。


≪ 今日の星様の声は、いつもと違う気がする ≫


「ずっと……星様に、聞きたい事がありまして」


 それを聞いて、夜空を向いていた星様の蒼い瞳は、私の顔を映し、細めた。


「うん? いいよ、何なりと」


 そして“ニコッ”と、優しく笑う。


『答えられる範囲で、お答えするよ。お姫様~』と、冗談交じりに言ってくれた。たぶん、私の緊張が伝わり過ぎて、お話をしやすいように、場を和ませてくれたのだと思う。


 私は「ありがとうございます」と、お礼を言って、質問を始めた。


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