61 文化交流会2日目~内緒~
お読みいただきありがとうございます(◍•ᴗ•◍)
♪こちらのお話は、読了時間:約6分です♪
(Wordcount2650)
「わぁぁ~……!!」
私は感動で、しばらく言葉が出なかった。
だって……!
こんなにも星空が美しく、キラキラと輝きお話しているみたい。
透明の“魔法屋根”は、安全のためにかけられていたけれど、そんなの気にならないくらいに、綺麗な夜空はそこにあった。
私が一番、お気に入りの場所。
屋上扉前を見つけてからずっと、ず~っと、屋上へ行ってみたかった。
晴れの日は扉から差し込む、優しい光に元気づけられる。自然と笑顔が溢れてきて、笑う。
雨の日は何故か、此処に来るとどんよりした気分が癒される。扉を流れる雨粒が、ぽよん、ぽよん♪って、可愛く踊って見えて。
そんな風にいつも、ここは前向きな気持ちにさせてくれる場所で「これは何か【秘密】があるのでは?」と勝手に妄想を膨らませて、わくわくしていた。
――いつか、屋上へ出られる日が来ることを。
(夢、見ていたの)
そんな屋上へ遂に! 来ることが出来た私はあまりにも嬉しくて、両頬に両手を当てて「んっふー♪」と瞳は、うるる~きら~ん! 嬉しさでどうしようと、なってしまっていた。
(想像以上だよぉ!)
「実はここ屋上は。僕の父が魔法管理をしている特別な、【秘密】の場所なんだ」
そう言うとまた、星様は右手の人差し指を口に当てて。
(シィ~ッ)
秘密だということを、強調する仕草を見せた。
――ドキッ!!
そしてまた私の胸の音は、静かな夜空に響くぐらい、聞こえちゃうくらいに。どうしようもなくドキドキ高鳴っていた。
でもこれは、きっとこの素晴らしい景観のせいで、わくわくしているからだよ! と、思うことにした私。
「月、少しだけ能力を使えるかな?」
精霊さんと遊ぶくらいだよって言われたので「大丈夫です」と、目をつぶり集中した。
「さぁ、周りを見てごらん」
彼の少し高めの、穏やかな声が頭の中で聞こえた。
ゆっくりと目を開けて、周りを見渡すと、驚きの光景が!
「こ、これは……」
私はとても驚いて、星様の方に視線を向けた。
それは今までに見たことのない『魔法展開図』が、屋上全体に張り巡らされていたからだ。これがどういう意味のあるものなのか? 全く解らなくて。正直、動揺してしまっていた。
そのあたふたする私の様子を見て、真剣な表情で星様は話し始めた。
「月は、ルナガディア王国の【中心の都】であるここが、どのような位置で護られているか、知っているかな?」
「……すみません、存じ上げません」
(はぁー。アイリ様にも聞かれたよね)
でも、あまり知らなくて。本当にダメだぁ。
「私、お勉強不足で。申し訳ないです」
(お恥ずかしい限り)
「あぁ、ごめんね! 謝らないでほしい」
しょんぼりとした私を見て、星様が慌ててフォローして下さいました。その彼の優しさが“きゅう~っ”て、心に沁みます。
(星、さまさまぁ~でございます、ハイ)
「この『魔法展開図』には、上級魔法が施されていてね。通常は映し出すことも、極めて困難。こうして簡単に見ることは出来ないんだ。この場所は……この『図』は、大切なルナガディア王国全体を表した、いわば地図のようなものだよ」
「地図……ですか?」
はぁ、私のような者には、何が書いているのか? 全く理解、解読できない『図』です。
「うん、少しだけお話ししようかな?」
「はい! ぜひぜひ、お願いしたいですっ!」
必死な私の答えに、彼はいつものように「フフッ」と笑った。
そして、ルナガディア王国について、語ってくれた。
「そうだね、どこから話そうか……」
なんだか物思いにふけっているような、また! なかなか見られないであろう、星様の表情。
「そうだ! 月は故郷にある{星域}に行ったことは?」
おぉー! びっくりしたぁ。ついさっき考えていた、幼い頃のあの思い出を見られていたのかしら? って思って、焦っちゃったよぉ。
「は、はい……。よく遊んでました。けれど」
「うん?」
「お母様には『一人で行っちゃいけません!!』と、言われていたのに。こっそりと行ってましたので……」
「あぁ~、なるほど! う、ん~」
星様が、笑いをこらえているようです。
「ナイショ、絶対に内緒ですよっ!!」
すると、こらえきれなくなったのか、吹き出して笑い始めた。そして、
「分っているよ……フフ。月らしいね」
思った通りの優しい答えが返ってきたぁ。ありがとうございます、星様。
それからまた。本題に戻り彼は、丁寧に説明をしてくれる。
「ルナガディア王国は、星形に並ぶ『五つの森』があり、その中心になっているのがここ中心、『月の都』。都は五つの森に囲まれ、そして“護られて”いるんだ」
「星の形で、森が五つ?」
一つ一つお勉強な私の反応を見て、先生みたいに「そうそう」と、笑いながら、続けて話してくれる。
「『月の都』を【悪】の侵入から護るため、王国より役目を任され、その森に配置されている者、いわゆる【守人】と呼ばれる存在が五人いる」
(あっ! もしかして、お母様)
何かに気付いた顔をした私を見て、にっこり笑顔の星様が声をかけてくれる。
「そう、君のお母様……だよね?」
え、えぇぇ!
「母のこと、ご存知なのですか?!」
「…………♪」
彼は、ニコニコと涼しい顔で、受け流す。
(これ、星様の得意技なのですよぉ)
「その『五つの森』と、役目を与えられている【守人】。ルナガディア王国の核となる場所、中心は『月の都』。そして……」
「…………」
「……?」
「『……あぁ…………』」
「……?」
んにゃ?
「どうか……しました、か?」
星様の意識が、どこかへ行っている?
「いや、何でもないよ! そういう訳でここは、秘密の場所だねっ」
何だろう? 何かを誤魔化された気がするのは、気のせいかな?
「――どうしても」
「えっ?」
星様は再度、真剣な表情で私の瞳の中に映り込み、言った。
「夜にしか見られない、この【魔法展開図】を。どうしても、月に見せたかった。今日しかない――七月七日だからこそ、見てもらいたくて……知ってもらいたかったんだ」
少し困った顔で私を見た後、奥にある白いベンチに向かって、彼は歩きだした。
あれ? そういえば、気になることがひとつ。
「あの、えっとー、星様?」
「ん? どうしたの? 月」
不思議そうにする声が、返ってきた。
「この屋上を管理なさっているという、お父様って?」
ルナガディア王国の【地図】を作る程のお方。
(きっと計り知れない力を持っていらっしゃる方だろうなぁ)
「あぁ、まだ月は知らなかったね」
一瞬クスッと、笑った彼。
「近々、会うことになるだろう」
そう、意味深な言葉を残し「今は黙っておくよ」と、ちょっぴり揶揄い口調で『内緒』と、言ったのでした。




