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月世界の願いごと~奇跡の花は煌めく三日月の夜に咲いて~  作者: 菜乃ひめ可
第二・五章 文化交流会(魔法勝負後)
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60 文化交流会2日目~扉~

お読みいただきありがとうございます(*'▽')

♪こちらのお話は、読了時間:約6分です♪


(Wordcount2600)


――『 【 開錠(かいじょう) 】 』


≪ えぇっ? どうして?! ≫


“最高上級魔法”で、厳重に施錠されているはずの『屋上扉』。なんと! それを、いとも簡単に開けてしまうなんて!!


 私は、念願の屋上へ出られる『喜び』の気持ちと、先生に“内緒”で、勝手に出てもいいのだろうか? という、『不安』な気持ちと。目の前で起こった一瞬の魔法に『驚き』の気持ちと……。


 様々な『気持ち』が折り重なって、私の心は、すごく複雑な心境になっていた。どうする事が“正解”なのか? 判らなくなっていた。


「あのぉ~星様?」私は不安げな表情で聞く。


「ん? なぁに?」と、彼は笑顔で答える。


「屋上へ出たい気持ちは、山々なのですが。魔法施錠されていた場所への、侵入は……勝手に出てしまうのは、怒られるのでは?」


『はっ!! 今、気付いた!』と、言わんばかりに目を丸くして、私を見つめ返している……けれど。

 星様のその表情、全く驚いているようには、見えないのですが。


「そうだね! 怒られちゃうかもしれないね!」


 どうしようかぁ~? と、真面目に言っているように見える。けれども! 口元は笑っていて、今にも吹き出しそうな、そんなお顔をしています。


「え、もぉ~!!」


 ずっと行きたかった『屋上』。どんな景色が見えるのだろう……と、いつも色々と想像を膨らませていた。正直な気持ち、今すぐにでも、あの扉の向こうへ……


「――出てみたいっ!!!」


 ◇◆


 私の生まれ故郷である『“光”の森【キラリ】』。

 その森の、奥深くに広がる場所……そこには{星域(せいいき)}と呼ばれる草原があった。幼い頃から、高い場所が大好きだった私は、その中心にある“()()()()”に登っては、精霊さんたちと魔法で絵を描いたり、お歌を歌ったり、音楽を奏で作ったりして、遊んでいた。


「あのお空に届くように、飛んでみたいの!」


 いつも、そう言って両手を広げて、飛ぶ真似をしていたなぁ。

『いつか飛べるようになるっ!』って、あの時は本気で思っていましたよ~。


≪ ()()()の私は『夢』を見ていた ≫


 『きっと、何でも出来る!!』


 そう、自分を信じて疑わなかった。

 でも、あの事件が起こってしまって……。


 ◇◆


 はぁ~。でも、本当に。


≪ “羽根”があったらいいのに ≫


 なぁ~んてネ。えへへ。


 そうそう! ((ふわふわり~))のラフィール先生がお得意の“飛躍魔法”♪ 本当はいつも、羨ましくてしょうがないのです。実は私も、いつかは習得したい! と思って、()()()に『夢』を見ているのです!


 でも、この“飛躍魔法”。とても難しい魔法で。

 一筋縄ではいかない、そうなのです。努力と技術だけでは、どうしようもない。生まれつきの【才能】と【センス】が、非常に関係するらしいので、もしかしたら……いやぁ~もしかしなくても。私には、無理かもしれませんねぇ、シュン。


 一人で『ぼーっ』と頭の中で、あれやこれや考え始めると止まらない。周りの事が見えなくなってしまって。これ、私の『()()()()癖』ですねぇ。


 それを見ていた星様が“フフッ”と小さく笑った声で、「はっ!」と我に返った。あぁー、また『ぼーっとちゃん』を、やってしまったぁ!!


「ご、ごめんなさい。考え事を……」

  

 すると、彼は案内するように、手のひらを上にして、「どうぞ、こちらへ」と、その手を屋上扉へ向けた。


「『月、安心して』。大丈夫だよ」


≪ 不思議…… ≫

 私の心に【言葉】を響かせ、伝わってくる。

( こ と ば ? )えーっと。うーん??


 珍しく少し大きめの声で「ねっ♪」と、言いながら、楽しそうに、嬉しそうに、ニコニコ笑う星様。

 その姿を見ていたら、何だか私まで嬉しくなってきちゃって。顔を見合わせて、一緒に声を出して笑った。


 一頻(ひとしき)り笑った後。

≪ 再度! 星様へ、確認しましょお! ≫


 でも、でもね。

 さっきまで感じていた“複雑な気持ち”は、どこか遠くへ飛んでいったみたいに、いつの間にか、私の心の中から“消えて”なくなっていた。これも不思議……かな?


「本当に、出てもいいの??」


 笑いながら確認の言葉を発したその瞬間、ふと……気が付いた。

 私は彼に、すっかり“信頼”を寄せているのだと。そして、その『笑顔』にいつも癒され、助けられて、たくさん元気をもらっている。


≪ 心の声。たくさん溢れてきちゃう ≫


 星様もニッコリと笑うと、

「フフッ。月は本当に心配性だね」

 と、言いながら、屋上扉の入口に手を伸ばした。


――なんだか、星様って。


 私をちょっとだけ()()()()、クスクスと笑っている所とか、とっても楽しそうにお返事して、お話をしてくれたりする時とか……あと! 手を振る時の()()とか。


――やっぱり、()()に似ている気がする。


 でも、何だろう? 最近は……

≪ この時間が、一番『幸せ』かも? ≫


 いやいや!! あの『幸せ』と言っても、楽しいなぁとか、そういう事でして。そんな深い『意味』はないのですよ!!

 と、また! ひとりツッコミをしているワタシ。


 そういえば、星様の表情がとても豊かになって、(ほころ)ばせて笑う、柔らかなお顔を見るようになったのは、ここ最近のような気がする。


 出逢った頃の彼は、瞳の奥に何だか違う世界があって。

 そこにある、()()()()を見ているみたいで……うまく表現? が、出来ないのだけれど。彼の心の中にある()()が、閉ざされているような? そんな印象だった。でも! もちろん、会話は弾んで楽しかったし♪ 人見知りな私が、彼とは自然体でいられたのは、紛れもない事実だ。


 なので、初対面で“心許せる存在”と感じた事には『変わりない』。


≪ 星様も、そうだといいなぁ…… ≫



〔〔 キィー―……カチャ  〕〕



『『 開いたよ♪ 』』

 ひそひそ声で、クスッと笑いながら、彼が言う。


『『 は、はぁぃ…… 』』

 私まで、小さな声でお返事をしてしまった。


 よく見ると……

 あれれ? イタズラっ子な“表情”をしてます。


 いつも違う“表情”。

 一瞬だったけれど、お茶目な星様。

 今の私の目には、その彼の姿が可愛いらしく見えて。まるで子供のような無邪気さをも、感じてしまった。


≪ はにゃ♡ ≫

 心の奥が、ポカポカしてきた。

 

「さぁ、どうぞ~」

 扉を開けて、星様が案内してくれる。


 私の“お気に入りの場所”

 屋上前の六階の階段。


 そして。

 ずっと行ってみたかった、もう一つの“場所”。

 あの月光の先にある“七階”……屋上へ。


 胸に手を置いてみると、期待で“ドキドキ”と、強く打つ鼓動。

 私は、その胸の高鳴りを“ぎゅっ”とした手で抑えながら、星様の案内で、屋上【扉の向こう】にある“未知の世界”へ、ゆっくりと歩いて行った。


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