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月世界の願いごと~奇跡の花は煌めく三日月の夜に咲いて~  作者: 菜乃ひめ可
第二・五章 文化交流会(魔法勝負後)
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58 文化交流会2日目~世界~

お読みいただきありがとうございます(*uωu*)

♪こちらのお話は、読了時間:約5分です♪


(Wordcount2200)


「では月さん、くれぐれも気をつけて」


「はい! ありがとうございました」

 元気いっぱい笑顔で、私は手を振った。


 笑って下さったとはいえ、夜に裏道を通った事については「危ないですよ!!」 と、厳しく注意を受けた。

 ラフィール先生は、とっても優しい上に、かなりの『過保護』です。

 今も、よほど心配だったのか、わざわざ明るい場所まで送ってくださった。

 お忙しいだろうに、本当に申し訳なかったです(反省)。


「えーっとぉ……」

 ずっと賑やかだったから、一人になると寂しいかなって思ったけれど、そんな事はなくて。むしろ、“ルンルン気分♪”で、私の足取りは軽かった。


「やっぱり“ひとりの時間”も大事」


 そう独りごとを言いながら、すっかり暗くなった【空】を見上げた。


――今宵の“月”はとても美しく輝くだろうね


 あの時、【最高位紋章】の記章(バッジ)を付けた、理事様が言っていた通り。今日の月、とっても綺麗……そして、


「とてもキラキラな“三日月”だぁ」


 いつも以上に輝いて見えるのは、気のせい? いや、あんな風に話題になさっておっしゃるぐらいだから、本当に“月”の、()()が違う日なのかなぁ。 


「理事様は、お月様が好きなのかな♪」


【三日月】かぁ……私も、あんなにキラキラ輝く“三日月”のように、綺麗な人間に成長したいなぁ。なぁんて、心の中で呟いて、少し恥ずかしくなった。


「よしっ!!」

≪ ()()()()場所へ、行こうかなっ! ≫


 目指したのは、屋上扉に向かう階段。

 その長い階段を上った先にある【屋上前の六階】()()()()“お気に入りの場所”。


(( タン、タン、タン…… ))


 すごく、静か……。


 階段の一段一段を上がる、自分の“足音”が、とても響いて返ってくる。 明るい時間に来る時とは【違う世界】にいるみたい。

 灯りは、精霊さんの光で、照らしてもらっている。夜だからかな? ちょっぴり寂しい気もする。


「……よぃっしょ!」屋上扉前の、定位置に着く。


 今日準備してきたシートは「夜だから♪」と、思って『お月様柄』にした。

 それをいつも通り、上から三段目に敷いて、ゆっくりと座る。


――静か……だにゃ。


 ふと、気分が落ちていくように感じたけれど、ついさっきの、“ルンルン”していた自分との矛盾に気付き、すぐに思い直して、

「はぁ~!! 賑やかな所は楽しいけれど、やっぱり苦手だなぁ……此処が一番、落ち着くよぉ」


 寂しく感じた気持ちは、『勘違いだよ』と、自分に言い聞かせるように、小さく呟いた。そして、思いっきり羽根を広げるように(うーーん!)と、大きく伸びをした。


 気持ちよく、後ろにのけぞった姿勢のままで。

【逆さの世界】を楽しむため、ゆーっくりと開けた視界。その瞳で、屋上扉を見つめる。

 差し込む“月”の光から“力”を受けているかのように、温かく心に沁み込んでくる『月光』。しばらく、ぼーっと眺めていた。すると、見た事のある光景に、私は目を疑った。


「おや? 偶然だね」


 月の光は、三日月とは思えないほどに、明るかった。おかげで、逆光のように、人影しか分からないけれど、よく見える。


≪ あの時みたい ≫


 あの日と同じだ。


 聞き覚えのある声。

 落ち着いたトーンで、少し高めの『優しい声』。


≪ 私の心が、ポカポカする声 ≫


「あ、あれ……? 星様??」

 まるで。

“寂しい”と思った『心の声』が聞こえたかのように、彼は目の前に現れた。

 私は、星様を見た瞬間、自分でも分かるほどに顔が火照ってしまい、鼓動が聞こえるくらい“ドキッ”とした。


「ふふっ……そんなにビックリしなくても」

 いつものように、彼は微笑んでくれている。


「ごめんなさい! でも、どうして此処に?」


 こんな私にいつも親切にしてくれて。そして楽しくおしゃべりをしたり、仲良くして下さる【星様】だけれども『上流階級のお坊ちゃま』だという事には、変わりないのだ。

 文化交流会二日目の夜、一年の中でも大きなイベントの一つである『舞踏会』。参加しない方は、きっといないのでは? と、思っていた。


 だから、此処に彼がいた事が、私にとっては信じられない出来事で。

 驚きと、不思議な気持ちでいっぱいだったのです。


 その私の気持ちに気付いたのか、彼は真剣な表情で語ってくれた。

「僕は、賑やかな所や、人が集まるイベントは、昔からあまり得意ではなくてね。ましてやダンスなんて! 大の苦手で。よく子供の頃から叱られていたよ」


「そう、僕は……」いつもは、流暢に話す彼が一瞬、言葉に詰まった。初めての事に、少し心配になって顔を見つめると、優しく瞳を細め、お話を続けた。


「僕はずっと、幼い頃から特殊な訓練を受けてきた。だからかもしれないが――【戦い】に関連のない事には“全く興味がなかった”」


 たまに感じる暗い表情が、垣間見えた。


 けれども、すぐに笑いながら、いつものなめらかな口調で「それで此処に、逃げてきたよ」と、話してくれた。


「そう……だったのですね」


≪ 逃げてきたのは、一緒だけれど ≫


 星様は……。


 私みたいな子供っぽい理由とは、違う。

 もっと【重い】【深い】、意味がある気がする。


 私が珍しく、考え込むように、難しい表情になる。


 急に、彼の周りから温かい“力”、{柔らかな魔法}が発動した。そして、少し重くなった空気が、一気に変わる。


「さぁ~。では、改めて……」


「ほえっ?」


 この後、星様は“クスッ”と、笑いながら。私が頬を真っ赤にしてしまうような、慣れない! 恥ずかしい!! 言葉を……。


“サラッ”と、いつものようにおっしゃったのでした。


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