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月世界の願いごと~奇跡の花は煌めく三日月の夜に咲いて~  作者: 菜乃ひめ可
第二・五章 文化交流会(魔法勝負後)
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57 文化交流会2日目~癒しの木~

お読みいただきありがとうございます(*^-^*)

♪こちらのお話は、読了時間:約7分です♪


(Wordcount3100)


「何よ! きっと月ちゃんだって、あなたが『上級能力講師』だから、()()()()! 教えてもらっているだけですわ!!」


 それを聞いた先生は、非常に怪訝な表情になった。

「おやおや、アイリさん。それは聞き捨てなりませんねぇ」


 そして、少し左上瞼を上げて、眼光鋭く言い返す。

 すると、その圧に一瞬、アイリ様の身はすくんだように見えた。しかし、すぐに怒りモードに戻る。


「あら、そうですの? では、どうなさいます?」


 あ、あのぉ~……。喧嘩は収まるどころか、どんどん激しく過熱していってますけれど。一体、どうなっているのでしょうか?


「メイリ様……あのぉ~」

「月様。いつもの事とはいえ、ここまでいくと、説得のしようがございません」

「あ……あぁ。そうなのですか。でも、どうして」

 ラフィール先生のあんな姿、初めて見たぁ。


「なんでも、姉とラフィール先生は、スカイスクール時代に同じクラスだったそうです。が、どうも仲がよろしくないようで……」


「なるほど~納得です。それで今回の“言い合い”も、ここまで(こじ)れてしまっているのですねぇ……」


 私たち二人は、顔を見合わせた。そして、


「「 はあぁぁ…… 」」

 大きな溜息をついてしまった。


≪ もう見てられない!! ≫


「あっ、あのぉぉぉっ!」

 私は、頑張って勇気を出して。両手を“グッ”と握り締め、少し大きめの声で、お二人の言い合いの止めに入った。それを見た、ラフィール先生が我に返り、私のそばに戻ってきた。


「アイリ。ここは一旦、引かせていただきます」


「そう、そうね。いいわ! 今日はせっかくの『文化交流会』。あなたと()()するくらいは、いつでも出来ますわっ」

 ふんっ!! と、言いながらも、アイリ様は、しぶしぶ了承なさった。


≪ はぁ~良かった。とりあえず収まった ≫


 で~もっ! と、アイリ様が話す。

「最後に月ちゃん、ひとつだけ♡」


「はい?」ラフィール先生のお顔が怖いですぅー。


「ラフィールのお部屋の前にある、水晶で出来た“猫の置物”。あの水晶猫(クリスタルキャット)に宿る妖精様、あの方が【バステト】様で…………」


≪ エーッ! それってティアの事?! ≫


「アイリ。不確かな情報を、()()の記憶に与えないで下さい」


≪ にゃ? ……()()? ≫


 私の耳、今日は特におかしいかも。

“空耳”も聞こえるし、聞き間違いかなぁ?


「やーねぇ、ラフィールはホント怖い、こわぁい」

 そう言うと、最後のお話を遮られて、ちょっぴり“ムスッ”としながらも、アイリ様は、私へのおしゃべりを完結させた。


「では月ちゃん♪ 今日(7月7日)という素晴らしい日に、貴女に出会えた事、そしてユイリアちゃんとの大会での魔法。力の全て……思った通り♡ とっても素敵で“運命”を感じる日でしたわ」


「あ……りがとうございます」


「では、またねぇ」と、アイリ様は言いながら、去って行かれた。

 その後ろをついて行く、メイリ様と目が合い、お互いお辞儀をする。


「本日は、『力』の消耗が激しかったとお見受け致しました。月様、どうかお身体ご自愛くださいませ」


「ありがとうございます。あ、あの、メイリ様!」

 行こうとしたメイリ様を、私は引き留めた。


「どうなさいましたか?」

 メイリ様は少し驚いた顔でこちらを見ている。


 よ、よしっ!! 勇気を出して。

「よ、良かったら私と……」


 その様子を、不思議そうに、でも、何かを頑張ろうとしている私を、優しい眼差しで、ラフィール先生は見守って下さっている。


 そして、私は思いきって気持ちを伝える。

「私と“お友達”になってもらえませんかっ?!」


 少しだけ間が空いた後、メイリ様は恥ずかしそうに頬を赤らめて、はにかみながら、お返事してくれた。

「……喜んで! ありがとうございます」


「本当ですか?! よかったぁ~」


 そして私たちは、改めて自己紹介をし合った。

「【セレネフォス=三日月(みかづき)】です。私の事、よかったら“月”とお呼び下さい」


「【ラウルド=芽衣里(メイリ)】です。私も“メイリ”って呼んで下さい」


 お互い慣れない出来事に、恥ずかし笑いをして、名を呼び合った。

「では月、また会いましょうね」

「はいっ! メイリまた……次はゆっくりと」


“コクッ”と、頷いてくれた。

 次に会える日を楽しみにするように、お互いに笑顔で手を振り合って、さよならをした。


「良かったですね、月さん♪」

 ラフィール先生、何だか嬉しそう。


「ハイ! お友達……増えましたぁ♪」

 私は本当に嬉しくって、心がポッカポカ。お顔の表情は今までにないくらい“ゆるゆる”です!


 そんな私と一緒に、先生は喜んで下さった。



――あ、そういえば……。


「ラフィール先生?」


「はい? 月さん、どうしましたか?」


「どうして……此処に?」

 本日、最後の“謎”(たぶん)。


≪ ぜひとも! 『解いておきたいっ』 ≫


 すると先生は、私の思っている事を見透かしているかのように“クスクス”と笑いながら、揶揄う。


「さぁて? どうしてでしょうねぇ」

 不思議、不思議~♪ うふふふ~と、笑っていらっしゃる……。もぉ! 私は、真剣に、真面目に聞いているのに!!


 ぷくーーーっと、頬を膨らます私を見て、満足したのか、ラフィール先生は、本当の事を話し始めた。


「はいはい、よしよ~し♪ ではお答えしましょう。学園内の数か所に設置されたこの小さな公園は、なぜあるのかはご存知ですか?」


「えっと、過酷な授業もあったりしますので、能力や魔力などを回復できるよう、『癒しの木』を設置して……その場所を皆がゆっくりと休めるように、公園にした? と、聞いています」


 学園入学時の、説明文がそのまま答えになってしまっている私は、ちょっぴり恥ずかしい……。実際まだ、『癒しの木』を利用したことがなくて、その恩恵を受けていないので、自分の“感じた言葉”でお話しする事が、出来なかったのだ。


「そう、正解です。その『癒しの木』ですが、私が皆の幸せのために創った“創造樹”なのですよ♪」


≪ な、なんですとぉーーー?? ≫


「月さんの反応、お話のし甲斐がありますねぇ」

 楽しそうに笑い、ラフィール先生は、次の言葉を続けられた。


「なので、全て私の【力】が宿り、私の監視下にあります。問題が起これば修正しますし、『癒しの木』で追いつかないほど消耗した方を感じれば、すぐに私がかけつけられるように、施してあります」


≪ さ、さすが『癒しの神』 ≫


「まぁ、簡単にご説明すると、このような感じでしょうか。月さん、何かご質問はありますか?」


「あ、いえ!! ありがとうございました」


 そうですか? と、にっこり笑ってくれる。


 じゃあ、やっぱり。今あった出来事が、問題とみなして助けに来て下さった、という事?


――『“ラウルド家”とは、関わらない方が』


 あの【警告】通りに……。


≪ 先生に謝らないと ≫


「あの、ラフィール先生」

「は~い♡ なぁに?」


 う”っ。真面目な事言おうとすると、なぜか先生は『ゆるふわ』キャラに

なってしまっているぅ……。

 流されないで!! こういう事は……気持ちはきちんと、言葉にして伝えないと!!


「【警告】を下さっていたのに、此処で偶然、アイリ様にお会いしてしまいまして……」


「あらあら! そんな事ですか?」

「えっ……」


「大丈夫ですよ、心配いりません」


 たったひとつ。その“言葉”だけで、なぜか私の心は『軽く』、そして『穏やか』になっていった。


「さぁ~行きましょう♪」

 いつもの明るくて優しい、ラフィール先生。

 先程の、アイリ様との“言い合い”の時とは、大違いだぁ。


 そんな事を考えていると、突然! 先生が立ち止まり、私を見て質問をなさった。

「ところで、月さん? どうして、こんな夜の裏道に?」


 あっ、そうでしたぁ。

「じ、実は……」


 私がこの裏道を通った、最大の理由を聞いたラフィール先生は、少し驚きながらも


『月さんらしい』と、笑って、許して下さった。


いつもお読みいただきありがとうございます♪

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