表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月世界の願いごと~奇跡の花は煌めく三日月の夜に咲いて~  作者: 菜乃ひめ可
第二・五章 文化交流会(魔法勝負後)
64/181

54 文化交流会2日目~考え事~

お読みいただきありがとうございます(^-^)

♪こちらのお話は、読了時間:約4分です♪


(Wordcount1960)


 時刻は、午後五時半。

 まだ外は明るく、綺麗な夕日が見えている。


 噴水のすぐ近くにある、天蓋とカーテン付きの可愛いプリンセスベンチで、うたた寝をしてしまった三日月。


 その眠りの中で見たいつもとは違う夢。そして突然聞こえた、あの声。


 二つの謎は、急いでこの噴水広場を出ようとしていた、三日月の足を止めさせ、悩ませていた。



 

 今なら忘れているような気がしている、大切な事が何だったのか? 思い出せそうな気がしていたのだけれど……。


「やっぱり、ダメだぁー」

 思い出そうとすればする程、解らなくなってきちゃう。


(それに、あの声は?)


 夢に出てくる声に似ていて月の加護って、言ってた気がする。


「どういう事なのかなぁ?」


 うーんうーん。

 様々な考えが、頭の中を回っている。

 しかし、考えても考えても答えは見つからない。もう、どうしようもない諦め気分になってきていた。

 だって夢は起きたらすぐに忘れちゃうし、声が聞こえたと思って、振り返ったのに誰もいないし。


(『空耳』だったのかな?) 

 うんうん、そうだ! きっとそうだよ!!


 そんなはずはない事くらい、一番わかっている。

 声はハッキリと聞こえていたから。


 でも私は無理やり納得をするように、自分に言い聞かせた。頭では分かっていても気持ちはモヤモヤしたまま。とても気になりながらも結局、広場から出ることにした。


「【神秘の水精霊】様。素敵な時間(とき)を、ありがとうございました」


 精霊さんが遊びまわる水面に触れ、美しい水の音楽を奏でて下さった噴水さんに感謝の言葉を告げると、来る時に通ったひまわりのアーチの前に戻った。


 すると広場を出る間際、入口の受付の方からにっこりと笑顔を向けられ、話しかけられた。


「ここは、夜十一時まで開いております。暗くなると噴水周りのライトアップがなされ、これもまた神秘的で綺麗ですよ。どうぞ、お時間ありましたら、ぜひ! またお越しくださいませ」


「あぁ、はい。ありがとうございます」


 私は何となくお礼を言うと、再びアーチをくぐり抜け、噴水広場を後にした。


 外に出ると、人の動きが少し、早くなっている気がした。

 きっと、これから行われる()()()()の準備の為だろうなぁと、横目で見ながら、歩いて通り過ぎる。


(そういえば、そうだったなぁ~)


 そう、私は心の中で、夜限定の素敵な催し“噴水の周りのライトアップ”の話を、思い出していた。


 三日月にとって、今日(7月7日)という日は、気にかかる事が多すぎて。考え込みながら、ぼーっと歩いていた。


 てくてくてくてく…………ドンっ!


「おっと!」


「す、すみませんっ」

(あぁぁ私ったら! た、たいへんだぁ!)


 考え事に集中するあまり、ちゃんと前を見らずにぼーっと歩いていた私は、思いっきり人にぶつかってしまった。


「お怪我はないですかぁ?!」

(どうしよう、前ちゃんと見ていなかったよぉ)


「あぁ、大丈夫だよ」


「本当に、申し訳ありませんでした」


 私は深く頭を下げ、お詫びをする。


「いや、君こそ大丈夫かな?」


「は、はい」


――エッ。


 頭を上げる時に目に入った『記章(バッジ)』。その瞬間、私の身体と表情は固まってしまった。


「考え事かい?」


「えぇ~とぉ……」


 心配して話しかけて下さっているのに、私は緊張しすぎて自然と答える声が小さくなってしまった。


「おや、どうしたのかな?」


 その方は学園の中でも偉い方とされる【最高位紋章】の記章(バッチ)を付けており、すさまじく強い独特の“オーラ”を放っていた。


「いえ、あの」


 すると、しどろもどろになっている私を見て、緊張が伝わったのか。お話を切り上げて下さった。


「よそ見をしないで、気を付けて歩きなさい。僕も可愛い生徒に、怪我をしてほしくないですからね」


「はい、気を付けます」


「私はこの学園の理事を務める者だ。何か悩みや困ったことがあれば、遠慮なく相談にきたまえ。君の顔は覚えておこう」


「いえ! め、滅相もございません!」


――さ、最高位……理事様……。


(ひょ~、ひょえぇぇ!!)

 大変な方にぶつかってしまった。


 するとフフッと笑みを浮かべ、遠慮なさるな、とおっしゃる。


「今宵の“月”はとても美しく輝くだろうね」


「は……ぃ」


「そう、綺麗な“三日月”だそうだよ」


 意味深な言葉を言い残し「では、また」と、去って行かれた。


「今宵の、月?」


 え~っとぉ。

 どういうお話だったのだろう?

 ただの閑談だったのかな?

 それとも何か意味ある事??


「あぁぁ、ダメだぁ」


 ますます考え悩むことが、増えた気がした。



 そうこうしているうちに、周りの雰囲気が慌ただしくなってきた。そろそろ、夜に開催される舞踏会の準備が始まるようだ。


「舞踏会って、中央広場であるんだったよね~」


 何としても舞踏会への参加を避けたい三日月は、人目につかない裏道を通り、どこか安全な所に、身を隠すことにした。


 しかし、その『道』の選択が、

 思わぬ結果を招くことに、なってしまうとは……。


いつもお読みいただきありがとうございます☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ