53 文化交流会2日目~変わらないもの~
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「では皆さん、また……ごきげんよう」
そう王妃様がおっしゃると、二人の王女様は夜会(舞踏会)準備の為? 強そうな王室直属の警護隊の方に守られながら、お屋敷にお戻りになられた。
――そういえば王宮? じゃなくてお屋敷?
実は私、今の学園に通うまで、ほとんど森から出た事がなくて。
森のミドルスクールで、学んだ歴史はちょっとだけ。
『ルナガディアの歴史』や『他国の事』とか、あまりそういう深い知識がなく、乏しい。
えっ? じゃあ今まで“何”を学んでいたのかって?
「ハイッ! お答えしましょう♪」
◇
【三日月ちゃんのお話♪】
まず、森にあるスクールに通っていましたので、日常生活で必要なお勉強は学んできました。それどころか、私の場合は、元騎士である父、【雷伊都】による、幼い頃からの厳しい訓練で、護身術や剣術、格闘・武術と、それはそれは毎日鍛えられ……そして、攻撃や戦術までも! 全般的に教え込まれましたよぉ。
そして問題の【魔力】については――。
【鍵】による、魔力制限あり、での話ですが。
母【望月】の熱意ある指導によって、必要最低限の魔力で出来る魔法。また、理論的な座学や、今後魔法が応用できるように、イメージトレーニングをする日々。そうなのです!! 人の何倍もお勉強ばっかりで……当時の私はもっと泣き虫だったので、わぁわぁ言いながら、頑張りましたよ、うんうん。
しかし、その努力の全ては――。
おそらく父も母も、将来私が「魔法科の学校へ行きたい」と言うのでは? と、先を見据えて“厳しい指導”をしてくれていたのだと、今なら思えます。
と、まぁこのように。私の森での生活は、ほぼ『武術』と『魔法』ばかりを学ぶ事が多かったので。
ルナガディア王国の事とか、歴史? とかは、よく解らないのです。
でも、そのおかげで私は、とても強くて! 魔法に関しては、実戦応用できる力を身につけられたのだと思います!
◇
「はぁ~……今日はなんだかんだ言って」
初めてお会いする方ばかりだったし、慣れない環境にいたせいかな?
(ちょっぴり、疲れちゃった)。
そして、せっかくのアイスクリームの喜びが。今の一件で、すっかり薄れてしまいましたぁ~。
「はぁう~、アイス……」
「どうした? 月、大丈夫か?」
――あっ、いつもの太陽お兄ちゃまだ!
(でも、まさかねぇ……)。
「いやいや! 何でもないの!! それよりもねぇ、太陽君がまさか?! 王子様だったなんてネェ」
本当に驚いたよ~としみじみ言う。
「おいおい! なんだよ、その話かッ」
太陽君が「やめろー!!」と言いながら、珍しく頬を赤く染めて、恥ずかしそうにしている。
それを見て、面白い顔みっけたーと言わんばかりに、メル・ティルのおちょくり攻撃が始まった。
「びっくりネェー!」「おどろきネェー!!」
「だねぇぇぇ♪」
これ見よがしに私も。ちょっぴり、揶揄い気味に言って参加してみる。
「「「 エッヘヘヘ~♪ 」」」
(いつものお返しだぁ~い)。
私とメル・ティルの三人は、太陽君が『他国から来た』というだけでも「そうなの?」って思ったのに。加えて民間人ではなく、まさかの王子様だった! という事実に。ただただ、驚いていた。
すると、太陽君はいつもの声と表情、訛りのある口調で話す。
「こらっ! そんな目で見ちゃいかん!」
「「ひゃっひゃーい♪」」
すると可愛い双子ちゃんが、楽しそうに太陽君に飛びついて行った。
その二人を、いつものように軽~く受け止め持ち上げると、ニカっと、白い歯を見せて笑った。
「たいよーたっかぁい!」「たいよーんにゃん♪」
「はいよー、高い高いなぁ、はっはは~」
相変わらずのメル・ティルと太陽君の戯れ、日常……。
三人の姿を、ぼーっと見つめていると、太陽君が私を見て、一言。
「なぁ、月よぉ。俺は出身が違うってだけだ。この国では皆と同じ一般クラスで、魔法や技術を学ぶ同じ生徒なんだ。だからよ、な~んにも今までとは変わらんよ!」
なっ、そうだろ? そう言うと、優しく笑いかけてくれた。
(一瞬、淋しげに見えたけれど、気のせい?)
「そう、だね……そうだよね」
私は、笑顔でそう答える。
――国とか身分なんて、関係ないんだ。
(太陽君は、たいようくんだよねっ!)
しかし、この時の私は、まだ気付いていなかった。
この『噴水広場』での出来事。
ユキトナ様がいらっしゃる前に――「いい機会だ」と、すごく真面目な顔で、いつになく真剣な表情で。
何かを話そうとしていた、太陽君の事を。
――「実はー、だな……」
あの言葉の続きを、この時は考えもしなかった。
◇
【イレクトルム=太陽】
赤毛の髪と赤色の瞳。
立派に鍛えられた、ガッチリ筋肉質体型。
人の感情や変化を感じ取る力や、周りの状況をよく見て把握する『観察眼能力』に長けている。
判断力があり、リーダー的存在。
何より、とても人情深く、真面目な好青年だ。
ルナガディア王国の隣国、イレクトルム王国(別名:太陽の国)の第一王子である。国を愛しすぎた両親に名付けられた【太陽】の名に恥じぬよう、日々訓練を続け、精進している。
生まれた時から、大事に大事に育てられ、平和と情熱の溢れる王国で、愛情いっぱい! 何不自由のない幸せな生活を送っていた。しかし、自分の“王子”という恵まれた境遇に甘んじることなく、実力を身につけ、能力を高めたいと、十三歳で王宮を(すなわち両親の元を)離れる決意をする。
それから八年間、様々な国へ行き、経験を積んだ努力家である。
二十一歳になる頃「今、自分に不足しているものは何か?」と、自問自答することで、自分の考えを整理した結果……最終的に選んだ道が此処、ルナガディア王国の“最上位魔法科”のある、この学園で学ぶことだった。
十五歳からであれば、何歳でも入学可能なスカイスクールは、試験さえ通れば良い。とはいえ、太陽は他国から来た人間。入学には厳しい能力審査があったが、その力、その技術に、学園側もすぐに入学の許可を出したという。
学園側は、入学直前の書類確認で、太陽が「イレクトルム王国の王子」だという事を知り、お顔真っ青! 焦り慌てて隣国へ連絡を取った事は、いうまでもない。
しかし、当の本人はというと……。
「もう大人なのですから、自己判断で動いても、両親は何も言わないですよ~」と、笑ってサラッと話した。
「上流だの何だの、そんな事は関係ない。人間は皆一緒だ!」と、入学後もその姿勢は変わらず、生徒の間では、面倒見の良い皆のお兄ちゃん! のような存在である。特に自分の身分を隠していた訳でもなかったが、言う機会もなかった為、一般クラスでは皆と同じように名前のみを名乗り、勉学に励んでいる。
◇
「さて……俺も一度帰って、着替えだな」
――太陽くんの“いつもの癖”が出る。
首の後ろに手を置き「まいったなぁ」の姿勢。
でもいつもと違うのは。
表情が“困った”ではなくて“嬉しい”のように見えた事。
「太陽君……お洒落してくるんだ♪ 楽しみぃ」
うふふ~と、私もなんだか嬉しくなり、笑みが零れる。
「おぉー! カッコよぉなって戻ってくるぞ! 期待して待ってろ」
グッドポーズをしながら、ニカっといつものように笑う太陽。それを見て三人は……。
「「「 王子様♡ お待ちしておりまぁす 」」」
「おーい、お前ら。俺で楽しんどるな?!」
「「 キャッキャ―♪ 」」
「えぇ~そんな事ないない!!」
「いやいやいや! 絶対楽しんどるだろッ!」と、楽しそうに言いながら、太陽君はお家へと帰って行った。
(そういえば太陽くんは、どこに住んでいるのかな?)
私はそんな事を考えながら、太陽君の後ろ姿を見つめた。そして、私とメル・ティルの三人で、見えなくなるまで手を振り、見送った。
「さ、てと」
それから、仲良し三人だけになった私たち。
「メルル・ティル? これからどうする?」
「「 んにゃあー?? 」」
私の顔を、じーっと見ている二人。
「月にゃん」「分かってるよぉ」
「んにゃっ?」
「「 おつかれたんたん♪ 」」
――あっ、そうか。分かっちゃうんだね。
(やっぱり二人には、気持ち隠せないなぁ)。
「うん、ちょっとだけ……疲れてる、かな」
「きゅーけーあるよ」「やすみなされれ~」
――うふふ、可愛い~優しい~♡
「うん、そうする。いつもありがとう!」
メルルとティルの気遣いに、心はぽかぽかになる。
それから二人と「またね~」とバイバイした私は、噴水の近くで見つけた可愛いガーデンベンチで、少し休む事にしたのだった。
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次話もお楽しみに~(≧▽≦)




