52 文化交流会2日目~王妃様の想い~
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「それから……ユキトナ」
(( ビクッ ))
「は、はい。お母様」
王妃様の視線。ユキトナ様は何を言われるのか? 解っているようだった。
「私もユイリア同様、危険があるかもしれないから、用心するようにと言われていましたのに、勝手に外へ出歩いてしまいました。……申し訳ありませんでした」
「えぇ、そうね。分かっているのであれば、よろしいのです」
やっぱりお姉様だからかな? 王妃様、ユイリア様を叱る時よりも、表情や言葉の厳しさが増している。次に何を言われるのか? と、周りは冷や冷やしながら、続きの言葉を待っていた。
王妃様は、一度目を閉じ、沈思黙考しておられた。
しばらくすると、ゆっくりと目を開け、何かを決心したかのように、ユキトナ様に目を合わせられた。
そして、ある事を告げられる。
「ユキトナ王女、よくお聞きなさい。今回の許可なく外出をした件ですが。国王様には……」
(あぁ、やっぱり。そのままという訳にはいかないのですね)。
ユキトナ様は、涙をグッとこらえ、王妃様の声に耳を傾けながら、真剣に聞いていらっしゃった。私は、そんなお二人の姿を見ていると、様々な考えが頭を過ぎってしまい、胸が苦しくなっていった。
しかし、王妃様のお考えは、予想に反していた。
「国王様には……ご報告致しません」
「「「 !!! 」」」
(そうなのぉー?!)
「エッ!! お、かあさま、それって……」
すると、ユキトナ様にとって、嬉しい(と、思われる)お言葉が伝えられた。
「それから、今夜開かれる、文化交流会での舞踏会ですが。ユキトナ……あなたの参加を、今回だけは特別に、認めましょう」
「え、本当ですか?! お母様」
ユキトナ様は、見る見るうちに明るい表情になると、心から喜んでいるのが分かるほどに、満面の笑みで王妃様にお辞儀をしていた。
「えぇ。舞踏会でのお相手が【太陽さん】と聞けば、認めない訳にはいきませんわよねぇ~♪ オホホ♡」
(はぁ~……良かったよぉ)。
ハラハラしながら聞いていた私も、そして周りの皆も、安堵の表情を浮かべる。
王妃様は、すっかり柔和な表情に戻り、愉快適悦!
「楽しみだわ~♪」と、おっしゃっています。
「あ……ハイ。はぁぁ~」
ユキトナ様も、ホッとしたご様子で。
王妃様はウフッと嬉しそうに笑い「そうと決まれば!」と、ユキトナ様とユイリア様。お二人に一度、お屋敷へ戻る事を“許しの条件”と、命じられた。
「では皆さん。今日はお会い出来て良かったわ。ありがとう」
王妃様のお言葉に、私たちは慌ててお辞儀をしながら、丁寧にご挨拶をした。
そうして歩き始めた王妃様……でしたが?!
突然、また振り返り「大変だわ!」と、ユイリア様にお話を始められた。
「大変だわ! そう戻る前に。ユイリア!!」
王妃様に名を呼ばれ、改めてユイリア様は、身を引き締める。
「は、はいっ?!」
「太陽さんに、『お詫び』と『ご挨拶』なさい!」
理由は、言わなくても解っているでしょう? と、またまた厳しい表情で、ユイリア様に仰っていた。
◆◇
王妃は、最近のユイリアの『心の育成』について、少し悩み、彼女の将来を心配していた。そして今回、ついに、その心配は的中してしまったのだ。
太陽が【イレクトルム王国】の王子だった、という事実を知らずに、失礼な事を言ってしまったという、今回の出来事。
しかし、それというよりも、ユイリアがいつも取っている『行動』や『言葉』や『態度』に、少々問題がある……という懸念をしていた。
そんな娘に『相手を敬う心と思いやり』を持ってほしいと願い、王妃自らが、ユイリアの心の教育に、日々励んでいる最中であった。
◆◇
「太陽様……も、も、申し訳、ありませんでした。えっとえっと、それから……」
モゴモゴと、ユイリア様は恥ずかしそうに、お話しされていて。
すると、優しい声で「ハイ!」と、太陽君が、小さく低く手を挙げ、そして……
「大丈夫ですよ、お嬢様!」と、囁きながら、太陽君はにっこりと笑い、ユイリア様に“何か”を手渡した。
「えっ? うさぎ……の?」
「可愛いでしょう? これ“チョコレート”なのですよ! ユイリア様、謝って下さってありがとうございます。さぁ、どうぞ! 召し上がれ♪」
――いつの間に準備していたのぉ??
それは、手のひらサイズの、とっても『可愛いうさぎ』の“チョコレート”。プライドの高いユイリア様。“謝罪”は相当な気力を消耗することでしょう……。
しかし!! まだまだお菓子をもらえば嬉しい年、ですので……(私も含め)。ユイリア様は嬉し恥ずかし~でお礼を言っていた。
「あ、ありがとうございます」
色々とあったけれど、これからは二人とも、仲良くなれそうな気がするよぉ。
≪ 良かったぁ♪ ≫
黙って見守っていた王妃様は、安堵の表情を浮かべた。
「では、太陽さん。ユキトナの事、宜しくお願いしますね」
王妃様からのそのお言葉は、先程までとは違い、
――【強く、重く】感じた。
「はい、お任せください。約束の時間に、ユキトナ様をお迎えにあがります」
太陽君は、全く動じる事なく“サラッ”と、いつも以上に! 落ち着いて答えていた。私は、ますます『王子様』感が上がっている! と、感じた。
ふと、ユキトナ様を見るとまた、お顔が真っ赤~! になっていますヨ。
「ふえっ? いえ、あの……お迎え……」
恥ずかしい気持ちが、こちらにまで伝わってきて。
≪ もぉぉ!! 可愛い『お姫様』♪ ≫
私まで“キュンキュン♡”しちゃいますッ!!
「ユキトナ? どうしたのです? 行きますわよ」
王妃様が呼んでいる、けれど? なかなか戻ろうとしないユキトナ様……。
≪ どうしたのかな? ≫
「あの、太陽様。舞踏会での……えっと」
その様子に気付いた太陽君が、何かに気付き、笑って語りかけた。
「そうですね、ユキトナ様。私は『カスミソウの花』が好きですよ。小さくとも美しい、白や桃色の上品さが気に入っています」
「あ…‥ハイ! 私もす、好きです」
「いやいや、すみません。気になさらないで下さい。では、お出かけまでゆっくりとなさって下さい。後ほどお迎えにあがります」
「はい! あの、ありがとうございました」
太陽君の気遣いも優しくてぇ……。
んっ? そういえば、“お花の話”ってなぁに? どういう意味なの……?? “ワカラナイ”です。
≪ まっ! いっかぁ~ ≫
「はぁ~♡ でも、ホントに」
――『お似合い』だなぁ……♡
≪ もし本当に、お二人に恋の花が咲いたら? ≫
――『異国のふたり』って、どうなるのかな?
(( はっ!! ))
やっだぁ! また私ったら……勝手に想像を膨らませて、先の事まで“心配”しちゃうなんて。
『おせっかい月ちゃん』は、まだ先に必要かも?
それまで、この想像は……。
「『心の箱』に、大事にしまっておく事にしましょう」
いつもお読みいただきありがとうございます(*´▽`*)




