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月世界の願いごと~奇跡の花は煌めく三日月の夜に咲いて~  作者: 菜乃ひめ可
第二・五章 文化交流会(魔法勝負後)
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51 文化交流会2日目~大親友?~

お読みいただきありがとうございます(*ノωノ)

♪こちらのお話は、読了時間:約6分です♪


※2022/1/27 修正完了(Wordcount2750)


 

「さて、(たの)しいお話はここまでにして」


 そろそろ本題に戻りましょう、と、王妃は真剣な表情に戻り、話を切り出した。


「さて、ユイリア王女。大会で事故の件もありますし、今夜の舞踏会まで、お屋敷からは()()()()()()ように! と、(わたくし)は言ったはずですが?」


 厳しい口調で、ユイリアを叱った。


◇◆


『魔法アーチェリー大会』が行われた後、参加者を含め、先生方や関係者たちも、奇々怪々、予測できないようなこの出来事に皆、青ざめていた。


――そう、あの【迷矢】事件。


 その迷矢……魔力の矢が当たる寸前で、奇跡的に助かったユイリア。その王女を崇めるかのように、その現場を見ていた者は口を揃えて言った。


「やはり、ルナガディア王国の王女様である、ユイリア様だからこそ助かった! 月の()()による『幸運がもたらした力』としか思えない!」


 と、ユイリアは持て(はや)されていた。


 さらに月の事についても。


「あの強い魔力を持つ迷矢を、瞬時に冷静な判断で攻撃し、見事に対処した、あの少女! ()()()()()()()を持つ、ホワイトブロンド色をした髪の子は一体?!」


 三日月の存在は、謎の少女として囁かれ、どこの誰だったのか? と、ちょっとした噂になっていた。


 今回の事件、攻撃を回避出来たのには、奇跡的な偶然がいくつかあった。


********************


【ひとつ】

 ユイリアと三日月が、大会の順番で偶然『隣で挑戦していた』事。


 もしも、二人が離れた場所で挑戦していたとしたら、三日月の迷矢攻撃は恐らく間に合わなかったものと思われる。


【ふたつ】

 三日月の能力が【(key)】による魔力解除によって、いつもの何倍、何百倍もの魔力が上昇しており、強力な(パワー)を目覚めさせていた事。


【みっつ】

 挑戦後も、月の〔三日月の弓(クレセント ムーン)〕が発動したままだったおかげで、瞬時に弓を使用できる状態だった事。


********************


 様々な条件が、良い方向に重なっていた事が功を奏し、こうして迷矢の消滅を、実現出来たのだった。


――もしも、あの時。


 一つでも“奇跡のピース”が欠け、失敗していたとしたら……。


『ユイリアは、どうなっていたか分からない』


◇◆


 王妃の発する声は、心の奥深くまで静かに響いていった。


「あの大きな魔力を帯びた迷矢。あれは事故だったと報告を受けていますが、まだ調査中ですのよ。――さぁ、もう言わなくても分かっているわね? お願いだからユイリア。これ以上、(わたくし)に……お父様に、心配をかけないでちょうだい」


 そう言うと、少しだけ。ほんの少しだけ、悲しそうな表情を見せた王妃は、話を締めくくる。


「ハイ。……申し訳ございませんでした、お母様」


 ユイリアは、心から素直に謝罪の気持ちを“母”に伝えた。その言葉を聞いた王妃は、ひと安心。この話は終了した。


 その様子を、ずっと見つめて聞いていた三日月は、なぜか寂しい気持ちになり、ふと……心の声が、言葉となって漏れた。


「――いいなぁ」


「「「 えっ?? 」」」

 後方にいた月の一言に、そばにいる皆が、一斉に振り向いた。そして、少し心配そうに、月の様子を(うかが)っている。


「あ~、いや~その……」

(また、心の声が出てしまったぁ)。


 月は、寂しい気持ちを悟られないように元気いっぱいで、取り繕う様に一生懸命しゃべり始める。


「あぁ~! あのですね。ユイリア様は、お母様にいつも見守られていて、幸せそうだなーって。それに、いつも一緒に居られて、素敵な家族だなぁ、いいなぁ~! と、思いまして……」


 言っている途中から、急に恥ずかしくなってきた。


(これってまるで、ホームシックじゃない?)


 赤くなっていく顔を、両手で隠しながら背を向けた。すると、微かに聞き取れるくらいの小さな声が、月の耳に聞こえてきた。


「も……ちづ……き?」


――えっ??

(王妃様? 今、なんて……?)


 声のする方向を見た月は、とても驚いた様子で、自分の事を見ている王妃と目が合った。しかしすぐに、ユイリアの訂正の声が入る。


「お母様、違います! この子は三日月(みかづき)ですわ! 例の『魔法アーチェリー大会』で、(わたくし)の命を助けて下さった……恩人ですのよ」


「あっ、えぇ、そうね。えっと……ごめんなさいね、三日月さん?」


「い、いえ。気になさらないでください」


(と、いいますか。なんとお名前を間違われたのか? 実は、聞こえませんでしたので……えへへ)。


「そして、(わたくし)達は、今や『大親友』ですわッ♪」


 そう言うとユイリア様は、嬉しそうに私の腕を掴みギューッと巻きついてきた。


「んにゃっ! ユイリア様ぁ?!」


(大親友???)


 私は、突然ユイリア様からの急接近な距離感にタジタジになっていた。そんな、仲良さそうな(?)姿をご覧になっていた王妃様は、「微笑ましいわねぇ~」と言い、目を細めながら、私たちを眺めお話しを始めた。


「しかし……ユイリアに()()()ですって? それは、今までにない大変喜ばしい事なのですが……うーん、ユイリア。お母さんは信じられないわぁ」


「ごめんなさいねぇ」と言いながら、私をちらちらと見て、心配して下さっているようだった。


「三日月さん。ご迷惑しているのではなくて?」


「ほぇ? あ~いえ、私の方が、な、仲良くして頂いております」


(…………あっ)。


 失礼な事を言ってはいけない!! そう思うあまり、気付くと私は……ついついこんな返事をしてしまっていた。


「もぉ~、お母様!」

 そんな迷惑などありませんわ! と、ユイリア様はプンプン少し怒り気味。


 それに対して「あら~、そう?」と、王妃様。


「そうですよっ! ねぇ~♡ みっかづきー♪」


(えぇぇー?! そこで私にパスを投げないでぇー)。

「あ、いや~。はい……です……」


 ()()()()()()、という王妃様のお言葉が……なぜか? とても気になる。

(はぅ。これは今夜も、ゆっくり眠れなさそうですネ)。


 私の、少し困惑気味の返事を聞いた後、王妃様はにっこりと笑顔で、ユイリア様に優しい言葉をおかけになった。


「それでは、改めてユイリア。こんなに素敵なお友達に巡り合えた、あなたの奇跡に免じて。そして(わたくし)自身も。本日皆様にお会い出来た事へ、感謝の意を込めて。今回の件、許しましょう」


「エッ!! あ、ありがとうございますっ」

 ユイリア様の周りの雰囲気が、一気に明るくなる。その姿はあどけなく無邪気で。よかったぁ♪ と、私に満面の笑みを向けている。


「ただし! 今回限りですわよ、【ユイリア王女】!!」


「ひょっ! は、ハイッ! おかあ……王妃さまぁ!」


 やっぱり……最後はちゃんと厳しい、王妃様でした。


 私たちは「あはは~」と、その様子を少し引きつった笑顔で見ていた。


(でもやっぱり……家族っていいなぁ)

 そう、心から思うのでした。


◇◆


『喜怒哀楽……』

 ユイリア様は本当に、表現や表情が豊か過ぎて。彼女は私より年上なので、失礼な言葉なのですが。


 だんだん、可愛らしく見えてきちゃいました。


いつもお読みいただきありがとうございます♪

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