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月世界の願いごと~奇跡の花は煌めく三日月の夜に咲いて~  作者: 菜乃ひめ可
第二・五章 文化交流会(魔法勝負後)
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48 文化交流会2日目~気持ち~

お読みいただきありがとうございます(*´▽`*)


♪こちらのお話は、読了時間:約7分です♪


(Wordcount3060)


「本当!! 理解できませんわっ!」


 はいはい、お嬢様のお気持ちはよ~く分かりましたから、と言いながら、太陽は笑ってユイリアの攻撃をかわす。


(そしてまた、よせばいいのにぃ……)


「しっかしなぁ〜ユイリア様は、すごい気迫だな! はっはっは」


(そんなことを、笑いながら言っちゃう太陽君が)


「はぁ~……」


 面白がっているのか? 大人なのか子供なのか、と三日月は少々呆れ顔。


「あなたねーッ!!」


(ほらっ! また怒らせちゃったぁ)


「ハイッ!! ユイリア、そこまでだ!」


 見かねたカイリが、止めに入る。すると、大人しく言うことを聞いている様子だった。


(ユイリアのことは、カイリ様にお任せするのが一番良いのかもしれないですねぇ)


 それにしても優しくユイリアを(なだ)め、落ち着いて対応しているカイリ。それを見た三日月は意外だ〜カイリ様も冷静な時があるのですね~と、心の中で呟き驚く。


(この出来事でちょっぴり、カイリ様の印象が変わりましたぁ)


「あのッ! ユイリア、違うのです。(わたくし)が勝手にぃ……」


 すると太陽とユイリア、二人の会話が途切れるのを待っていたかのように突然、ユキトナが懸命に説明をと話し始めた。


 が、しかし。


 慣れない大きな声を絞り出そうとしたせいか声が裏返ってしまい「んキャぅッ」と言葉が詰まってしまう。


 鈴の音(ユキトナ様の声)は静まり……辺りも静まり。数秒後「恥ずかしい~」と顔をうずめたユキトナは、その場に座り込んでしまった。


「ユキトナ様! だ、大丈夫ですか?」


 三日月、そしてメルルとティルは「頑張ったのに〜」という表情で泣きそうなユキトナのそばへ、急いで駆け寄る。


「「ゆきゆきぃ~だいじょぶぅ?」」


 ヨシヨシだよぉ~♪ と、メルルとティルが介抱し始めユキトナは顔を上げた。


「あ、ありがとうござい……ぅぅ。お恥ずかしい……皆様、すみません」


(きゃわい~♡)



「――ユイリアお嬢さん」


 するとなぜか急に真剣な表情になった太陽が、ユイリアの近くへ寄ると、話を切り出す。


(ねえ)さんを大切に想う気持ちは、よく分かった。確かにユキトナ様は、初めてお見掛けした瞬間から、目を奪われた。とても気品があり、お美しい方だ。普段、このような事はしないのだが……私が思わず()()()()()()()()()程だ。そして、今夜の舞踏会に()()()()()()()()()。存じ上げなかったとはいえ、王国の王女様に大変無礼な事を」


「さ、『誘った』ですってぇぇ?!」


 と、ユイリアの悲鳴にも近い大声が、噴水広場に響き渡る。


「ああ。本当に申し訳ない」



――太陽は、深く深く頭を下げ謝罪をし、この事態の収拾を自ら(太陽)が付けようとしていたのである。


 今回の件、ユキトナは王女としての自覚がない、感心しない行動と言われてしまっても仕方のないこと。そんな彼女が勇気を出してユイリアに言おうとした、真実。


 その気持ちを汲み取った太陽は、ユキトナに恥をかかせぬようにと、自分から『声をかけた』ことにしたのだ。


 恐らく彼女をかばおうとしているのだろうということに、三日月は直感していた。



「ちょっと、いくら何でも知らないからって……いえ! いいえッ!! あなたのようなふざけている人に言い訳されても、信じられなくってよ。ユキお姉様を誘うって……これはお母様にご報告よッ!」


 ただじゃ済まないですわよ! と、ユイリアの怒りは頂点に達し、爆発。


――これは……穏やかではなくなってきたなぁ。


「ちょ、ちょっと待って、ユイリア様」


 慌てて止めに入る三日月の頭の中は真っ白。結局どう説明したらいいのか? 分からない。


 こんなことになるなんて――。


(一体どうしたら、どの方向に話をもっていけばいいの?)


 もし本当のことを言ってしまえば、ユキトナの品格や信頼を失うことにもなり兼ねない。それでは太陽の気遣いが無駄になる。


 しかしこの状況では太陽が誤解されたままになってしまう……下手したら何らかの処分を受け兼ねない。


 そう考える三日月は、苦しくなってくる。


――誰も傷付かず平穏に。皆が幸せになるようにするには?


「でも、どうしたら……」


 ――ポンッ。


 勢い良く、優しく。頭に大きく温かな手が置かれた。


「月、おまえまた泣きそうじゃね〜のか? みんなに笑われるぞ! 心配すんな。俺は大丈夫だから」


「太陽君……」

(どうして、そんなに余裕なの?)


 いつものように、ニカっと笑いながら三日月を安心させると次に太陽は、ユキトナのいる所に向かって、歩き出した。


 そして優しい声で、話しかける。


「ユキトナ様。この度は私のとんだ御無礼を、どうかお許しください」


 うずくまって座っている、彼女の目線よりも下げるためか、片膝をつき謝罪をしていた。


(けーれーどーもー! 私には、見えていました!)


 その下を向いた太陽の表情。それは笑いをこらえながらユキトナへ『大丈夫だ』と、こっそりウィンクしている姿。


――どんな時でも誰に対しても変わらない、その優しさ。


 人の感情の変化を感じ取る能力、周りの状況をよく見ていて、瞬時に把握する事の出来る観察眼。そして問題を解決へと導く、その力と頭脳――。


(やっぱり、太陽君ってスゴイ!)


 それからそれから……と、三日月は心の中で太陽の良いところを言う。


(でも、太陽君の一番の良いところ! それは)


――思いやりの心が熱〜いところです♪



 太陽と話すユキトナ。その熱い〜思いやりの気持ちが伝わったのか、また少しだけ頬を赤らめ微笑みながら口を開いた。


「いえ……その、太陽様」



「【唯莉愛(ユイリア)】!!」


「うっわーっ?!」


 心臓が飛び出る! そのくらい驚く三日月。体中に響き渡るようなその声は、遠くから……いやこれは近距離だと思ってしまう程の迫力で、聞こえてきた。


(今日はビックリする出来事があり過ぎるよぉ)


「お、お母様!」


「また、あなたは! 皆様にご迷惑をお掛けしていたのではありませんの?!」


「そんな、()()()していませんわ! そんなことより、お母様!!」


 ()()()、と正直過ぎる答えをするユイリア。その様子にあはは~と小さく笑う三日月。いつも何かしら問題を起こしているような感じのユイリア。


(あぁ~でもまぁ確かにです。今回の私への魔法勝負も、問題と言えば……そうでしたけれど)


 「ん? えっと今、()()()()()って?」


(えぇぇー!!!)


 これまた驚き、大変だぁ! と、自分の耳を疑う三日月は「もぉ無理」と、身体の力がフーッと抜けていくようであった。


「王妃様!!」


 すると声で気付いた噴水広場に集まる全員が、皆一斉に、ご挨拶の姿勢をとる。


「あぁ~皆様、いいのですよ! お忍びですわ。オホホ……ですから、そんなにかしこまらないで。(わたくし)のことは()()()()()()()で、日常をお過ごしになって。文化交流会をた~くさん楽しんでくださいませ」


 その王妃の一声(ひとこえ)で、周りにいた全ての人々が、ホッと胸を撫でおろし伝えられた言葉通り、日常に戻る。


 それは王妃の『気になさらないで』は『プライベートである』ということだと皆、知っており分かっていたからであった。


(思っていたよりも? ざっくばらんで親近感の持てるお方なのかなぁ……なんちゃって)


――いくら心の中とはいえ、私ったら王妃様になんて失礼な事を!


「思うだけなら……いや。良くないよね」


 小さく独り言のように呟いている三日月は「王妃様、すみません」と両手で顔を隠す。



「それで。何かしら、ユイリア? ……と、いうよりもちょっと! なに?! どういうことかしら? 雪兎名(ユキトナ)あなたまで、どうして此処にいるのですかッ」


「えっ……と〜」



 これは内輪もめ? ……なのだろうか。


「やれやれ、だな」

 太陽が笑いながら一言。


「もぉ太陽君!」


 三日月たちは黙って、姿勢良く見守るしかないのであった。


いつもお読み下さりありがとうございます(u u)

感謝なのなの〜でございまする♪

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