48 文化交流会2日目~気持ち~
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「本当!! 理解できませんわっ!」
はいはい、お嬢様のお気持ちはよ~く分かりましたから、と言いながら、太陽は笑ってユイリアの攻撃をかわす。
(そしてまた、よせばいいのにぃ……)
「しっかしなぁ〜ユイリア様は、すごい気迫だな! はっはっは」
(そんなことを、笑いながら言っちゃう太陽君が)
「はぁ~……」
面白がっているのか? 大人なのか子供なのか、と三日月は少々呆れ顔。
「あなたねーッ!!」
(ほらっ! また怒らせちゃったぁ)
「ハイッ!! ユイリア、そこまでだ!」
見かねたカイリが、止めに入る。すると、大人しく言うことを聞いている様子だった。
(ユイリアのことは、カイリ様にお任せするのが一番良いのかもしれないですねぇ)
それにしても優しくユイリアを宥め、落ち着いて対応しているカイリ。それを見た三日月は意外だ〜カイリ様も冷静な時があるのですね~と、心の中で呟き驚く。
(この出来事でちょっぴり、カイリ様の印象が変わりましたぁ)
「あのッ! ユイリア、違うのです。私が勝手にぃ……」
すると太陽とユイリア、二人の会話が途切れるのを待っていたかのように突然、ユキトナが懸命に説明をと話し始めた。
が、しかし。
慣れない大きな声を絞り出そうとしたせいか声が裏返ってしまい「んキャぅッ」と言葉が詰まってしまう。
鈴の音は静まり……辺りも静まり。数秒後「恥ずかしい~」と顔をうずめたユキトナは、その場に座り込んでしまった。
「ユキトナ様! だ、大丈夫ですか?」
三日月、そしてメルルとティルは「頑張ったのに〜」という表情で泣きそうなユキトナのそばへ、急いで駆け寄る。
「「ゆきゆきぃ~だいじょぶぅ?」」
ヨシヨシだよぉ~♪ と、メルルとティルが介抱し始めユキトナは顔を上げた。
「あ、ありがとうござい……ぅぅ。お恥ずかしい……皆様、すみません」
(きゃわい~♡)
「――ユイリアお嬢さん」
するとなぜか急に真剣な表情になった太陽が、ユイリアの近くへ寄ると、話を切り出す。
「姉さんを大切に想う気持ちは、よく分かった。確かにユキトナ様は、初めてお見掛けした瞬間から、目を奪われた。とても気品があり、お美しい方だ。普段、このような事はしないのだが……私が思わず声をかけてしまった程だ。そして、今夜の舞踏会にお誘いしてしまった。存じ上げなかったとはいえ、王国の王女様に大変無礼な事を」
「さ、『誘った』ですってぇぇ?!」
と、ユイリアの悲鳴にも近い大声が、噴水広場に響き渡る。
「ああ。本当に申し訳ない」
――太陽は、深く深く頭を下げ謝罪をし、この事態の収拾を自らが付けようとしていたのである。
今回の件、ユキトナは王女としての自覚がない、感心しない行動と言われてしまっても仕方のないこと。そんな彼女が勇気を出してユイリアに言おうとした、真実。
その気持ちを汲み取った太陽は、ユキトナに恥をかかせぬようにと、自分から『声をかけた』ことにしたのだ。
恐らく彼女をかばおうとしているのだろうということに、三日月は直感していた。
「ちょっと、いくら何でも知らないからって……いえ! いいえッ!! あなたのようなふざけている人に言い訳されても、信じられなくってよ。ユキお姉様を誘うって……これはお母様にご報告よッ!」
ただじゃ済まないですわよ! と、ユイリアの怒りは頂点に達し、爆発。
――これは……穏やかではなくなってきたなぁ。
「ちょ、ちょっと待って、ユイリア様」
慌てて止めに入る三日月の頭の中は真っ白。結局どう説明したらいいのか? 分からない。
こんなことになるなんて――。
(一体どうしたら、どの方向に話をもっていけばいいの?)
もし本当のことを言ってしまえば、ユキトナの品格や信頼を失うことにもなり兼ねない。それでは太陽の気遣いが無駄になる。
しかしこの状況では太陽が誤解されたままになってしまう……下手したら何らかの処分を受け兼ねない。
そう考える三日月は、苦しくなってくる。
――誰も傷付かず平穏に。皆が幸せになるようにするには?
「でも、どうしたら……」
――ポンッ。
勢い良く、優しく。頭に大きく温かな手が置かれた。
「月、おまえまた泣きそうじゃね〜のか? みんなに笑われるぞ! 心配すんな。俺は大丈夫だから」
「太陽君……」
(どうして、そんなに余裕なの?)
いつものように、ニカっと笑いながら三日月を安心させると次に太陽は、ユキトナのいる所に向かって、歩き出した。
そして優しい声で、話しかける。
「ユキトナ様。この度は私のとんだ御無礼を、どうかお許しください」
うずくまって座っている、彼女の目線よりも下げるためか、片膝をつき謝罪をしていた。
(けーれーどーもー! 私には、見えていました!)
その下を向いた太陽の表情。それは笑いをこらえながらユキトナへ『大丈夫だ』と、こっそりウィンクしている姿。
――どんな時でも誰に対しても変わらない、その優しさ。
人の感情の変化を感じ取る能力、周りの状況をよく見ていて、瞬時に把握する事の出来る観察眼。そして問題を解決へと導く、その力と頭脳――。
(やっぱり、太陽君ってスゴイ!)
それからそれから……と、三日月は心の中で太陽の良いところを言う。
(でも、太陽君の一番の良いところ! それは)
――思いやりの心が熱〜いところです♪
太陽と話すユキトナ。その熱い〜思いやりの気持ちが伝わったのか、また少しだけ頬を赤らめ微笑みながら口を開いた。
「いえ……その、太陽様」
「【唯莉愛】!!」
「うっわーっ?!」
心臓が飛び出る! そのくらい驚く三日月。体中に響き渡るようなその声は、遠くから……いやこれは近距離だと思ってしまう程の迫力で、聞こえてきた。
(今日はビックリする出来事があり過ぎるよぉ)
「お、お母様!」
「また、あなたは! 皆様にご迷惑をお掛けしていたのではありませんの?!」
「そんな、今日はしていませんわ! そんなことより、お母様!!」
今日は、と正直過ぎる答えをするユイリア。その様子にあはは~と小さく笑う三日月。いつも何かしら問題を起こしているような感じのユイリア。
(あぁ~でもまぁ確かにです。今回の私への魔法勝負も、問題と言えば……そうでしたけれど)
「ん? えっと今、おかあさまって?」
(えぇぇー!!!)
これまた驚き、大変だぁ! と、自分の耳を疑う三日月は「もぉ無理」と、身体の力がフーッと抜けていくようであった。
「王妃様!!」
すると声で気付いた噴水広場に集まる全員が、皆一斉に、ご挨拶の姿勢をとる。
「あぁ~皆様、いいのですよ! お忍びですわ。オホホ……ですから、そんなにかしこまらないで。私のことは気になさらないで、日常をお過ごしになって。文化交流会をた~くさん楽しんでくださいませ」
その王妃の一声で、周りにいた全ての人々が、ホッと胸を撫でおろし伝えられた言葉通り、日常に戻る。
それは王妃の『気になさらないで』は『プライベートである』ということだと皆、知っており分かっていたからであった。
(思っていたよりも? ざっくばらんで親近感の持てるお方なのかなぁ……なんちゃって)
――いくら心の中とはいえ、私ったら王妃様になんて失礼な事を!
「思うだけなら……いや。良くないよね」
小さく独り言のように呟いている三日月は「王妃様、すみません」と両手で顔を隠す。
「それで。何かしら、ユイリア? ……と、いうよりもちょっと! なに?! どういうことかしら? 雪兎名あなたまで、どうして此処にいるのですかッ」
「えっ……と〜」
これは内輪もめ? ……なのだろうか。
「やれやれ、だな」
太陽が笑いながら一言。
「もぉ太陽君!」
三日月たちは黙って、姿勢良く見守るしかないのであった。
いつもお読み下さりありがとうございます(u u)
感謝なのなの〜でございまする♪




