47 文化交流会2日目~王女様~
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♪こちらのお話は、読了時間:約8分です♪
(Wordcount3610)
「ルナガディア=雪兎名でございます」
「「「「えぇぇー?!」」」」
四人は「まさか!!」と大きな声を出す。
「あ、あの……そのルナガディア、って?」
「あ、はい。その~……」
驚愕の新事実であった。
三日月たちの目の前に美しい花のように立つ、栗色のくるりんと巻いた髪の可愛らしいご令嬢。なんとルナガディア王国の第二王女様だというのだ。
そんなこととは全く知らなかった太陽はふと、舞踏会へのお誘いをオッケーしたことに気付く。
「んっ? これって」
(いやいやぁ、違うよね〜)
「こりゃあ、えらいなこった……」
太陽はまいったなぁ〜の、お決まりポーズ。首の後ろに手を置くいつもの姿勢で、気抜けしてしまっていた。そして不機嫌そうな細い目で、チラッと三日月の顔を見ている。
「あ〜? え〜?」
視線を感じた三日月は惚けた顔で目をそらす。
(エーン!! 背中をおしてしまったのは私?! ごめんなちゃーい)
三日月は勇気を出して、そらした目をもう一度戻し向き直る。そして太陽の顔色を恐る恐る窺う。
「え、エヘッ?」
するとやはり予想通り、すごい引きつった笑顔で三日月を見ていた。
ゆっくりと後ろを向いて両頬を手のひらで押さえた。
(えぇーん! どうしよぉぉ)
三日月は「なんとかしないと!」そう焦りながら案を考えていると、後ろから聞き覚えのある声に嫌ぁ~な気配がしてきた。
「あら? 三日月じゃな~い♡」
「ゆ、ユ、ユイリア様」
予感的中。相変わらずの雰囲気でやってきたユイリアお嬢様である。
(あ、あれ? 今ユイリア様って私のことみかづきって言ったような気が)
「呼びすてぇ? うぅわ〜何だかコワい」
ボソッと呟く三日月。すると陽気な声でユイリアが近付いてきた。
「やぁ~ねぇ、ユイリアで良いのですのよ。だって三日月は私の命を救ってくれた、恩人ですものぉ。いいえ、違うわ! もう最高の『親友』ですわ〜♪」
――エッ……今なんと。
「ユイリア様、落ち着いて下さい。三日月様が驚いておられます」
「メイリ様」
(あはは〜、今日も絶好調でプンプンしていますねぇ)
「あ〜ら私ったら。ごめんあそばせ~♪」
ユイリアは「怒られても、怖くなどないですものね~」と、言わんばかりの表情でルンルン♪ メイリの周りをスキップして回っている。
(ダンス好きは、本当だったようですネ)
「ユイリア様ッ!!」
「メイリったらそんなに怒んないでよぉ。だって信じられる? こんなにすぐに三日月に会えるなんて! メイリもそう思うでしょ〜私、嬉し過ぎて」
興奮気味にはしゃぎながら、その気持ちを全身で表現していた。
「は、はぁ……」
ついさっきまで「おほほ~」と戦いを挑んできていたユイリア。あまりの変わり様に三日月の心はついていけない。しかも今『親友』とまで呼ばれたのだ。
そしてもう一つ気になったことがある。
ユイリアの楽しそうな姿を、後ろで幸せそうに微笑んで見ている人がいたのだ。
(そうです、私の苦手な……)
「あぁ、カイリ様だ」
反射的に、怪訝な表情になってしまう。
遠慮なくグイグイと三日月に近寄ってきたユイリアを、静止したメイリは一度深い溜息をついた。そして大きく深呼吸をしたかと思うといきなり「いいですかッ! ユイリアお嬢様!!」と、周りが振り向きびっくりする程の声が響き渡る。
「ま、待って! 許してメイリィ〜」
そんな抵抗もお構いなし。メイリはユイリアへ『王女たるもののあり方』についての、厳しい指導を始めたのだった。
(あんなに華奢な体から発せられる声とはおもえませんが)
「お嬢様付きって、大変なのですネェ」
指導が終わったメイリは、三日月の方へ向き直ると手と足を揃え、話し始めた。
「月様。この度は何とお礼を申し上げたら良いか……ユイリア様との魔法勝負を、お約束通りお受けいただいただけでなく、ユイリア様のお命までも助けて下さいました。そして、カイリ様との仲までも元通りに」
ううぅぅぅ……グスッ……。
メイリは話の途中で感極まり、泣き出してしまった。
「メ、メイリ様?!」
◇
それもそうだろう。
二年以上もおしゃべりしない、頑固でわがままなお坊ちゃまとお嬢様、二人の喧嘩をずっと陰ながら見守ってきた彼女。これは先の見えない問題を抱えているのと同じであった。
落ち込むユイリアをずっとそばで支えてきたメイリにとって、この件は一番の心配事。日々悩み解決の方法を模索していた中で、今回無事に仲直りできたという報告は、涙が出るほど嬉しかったのだという。
しかし当の二人はあっという間に心のわだかまりなどなくなり、喧嘩をしていたことがまるで嘘だったかのように、幸せな顔で見つめ合っている。
◇
「あっ……」
――俺らでその誤解の全てを、解決してやろうじゃんか!!
三日月はふと思う。
――――あの日。“メイリ様のお願い”を聞いた日に、太陽君が言った『言葉』を思い出していた。
私は問題を解決できたこと。メイリ様の願いを叶えられたことが今本当に嬉しかった。
「良かったね。あの二人、仲良しに戻れて」
そう小さな声呟き隣を見た三日月は、太陽と目が合う。
んっ? と、不思議そうな声を出した太陽だったが、すぐにあの話かと思い出し、笑って賛同した。
「あぁ、誤解。解けたみたいだな!」
(なんだろう。今あの時みたいにしんみり~とした空気が漂っている)
なにはともあれ「良かった良かった」と安心した三日月は、お茶でも飲みたいなぁとほんわか気分に浸っていると突然! ユイリアが驚いた表情で、話し始めた。
「えぇっ! ユキお姉様?!」
(んっ? ユキトナ様の事かな?)
「えぇ、ユイリア。あの……御機嫌よう」
「ユキトナ様! 驚きました。このような場所に、お見えになられるなんて。それにお付きの者がいないではないですか! どうなさったのですか?!」
メイリも驚き心配そうな顔でユキトナを見ている。「そっかー王女様だものね〜」と納得して眺めていた三日月は何かが引っかかった。
(なかなか出ていらっしゃるはず……ないのかな? あれ、今ユイリア様が“ユキお姉様”って言った気がぁ)
「ねぇ、太陽君……」
「おぉ、どうした?」
「今、ユイリア様が“お姉様”と言ってた気がしたけれど」
「ん~あぁ~、い……ってたなぁ、たぶん」
――何でしょう? その歯切れの悪い感じ。
「えっとユイリア様って、まさか?」
そう三日月は、ユイリアが『ルナガディア王国』の王女様だということに気付いたのだ。
「あっれ〜? 月、気付いてなかったんか? あぁ! そうかそうか。自分が参加する大会の時は、それどころじゃないもんな! 参加者が順番に名を呼ばれるだろ? それで俺も気付いたんだが。だからそれ知ったのは、さっきと言や~さっきだな!」
「太陽さ~ん?」
「わっはっはっはー」
(笑って誤魔化して……言わないでおこうみたいな感じが、すご〜く伝わってくるのですが。何故でしょうかぁ?)
「先に教えてくれてたら良かったのにぃ」
「あぁ~すまんな、タイミングが」
「ユイリア王女……様かぁ」
(ということは、星様も知っているのかな?)
大会の後、ラフィールの指示でロイズの元へ報告に向かったセルク。魔力を使い果たし気絶していた三日月は当然そのことを知らない。
――星様だけいない……どうしたのかなぁ。
(はっ、私ったらまた何考えてるんだろ!)
「いやぁ俺もまさかと思ったがな、はっは!」
「「そうなのだよぉ~わっはっはぁ~♪」」
三日月がぼーっとセルクのことを考えている間、いつもの調子で大声で笑った太陽。その真似をして「コラーっ!!」と怒られているメルルとティルは「「キャッキャー♡」」と楽しそうに逃げていた。
そしていつもの追いかけっこを始める三人。
――平和だぁ~。
「ちょっと、そういえばあなた!」
ユイリアが突然声を荒げ、毛嫌いするように太陽へ話しかける。
「はい、なんでしょうか~? お嬢様~?」
そしてまたよせばいいのに、ユイリアを揶揄うような口調で言葉を返す、太陽。
「うぅぅ!! ほんっと嫌な人ですわねッ。どうしてあなたのような方が、三日月といつも一緒に居るのかしら?」
「何かと思えば、それですかい? まぁ、クラス一緒でな。最初から四人で仲良くしてる友達だからなぁ♪ あっはは」
(普通に返している……うんうん、大人だ!)
「それに、どうしてユキお姉様の近くにいらっしゃるの? お姉様はね、一般クラスの方が簡単にお近づきになれるような方ではないわ! 妹である私にとっても尊い……なかなかお話しすることも出来ない、高貴な存在なのですよ!」
何やら大変な状況になってきた。
ユイリアはすごい剣幕で太陽を責め立てている。しかし怒られるようなことをしていない太陽は余裕の表情、「そうかそうか~」とユイリアの怒りの全てを受け止め、優しく笑う。
二人の様子にユキトナは慌てふためき、どうしたら良いか分からずあわあわと両手を振っている。
三日月は「あ〜また始まったぁ」と諦めモードに入り。
メイリとカイリは、一緒に頭を抱えていた。
メルルとティルより。
「「みんな仲良しネェん♪」」
いつもお読みいただき、ありがとうございます♪




