45 文化交流会2日目~アイスクリーム~
お読みいただきありがとうございます(*ノωノ)
♪こちらのお話は、読了時間:約10分です♪
ここだけ、ながぁ~~い(笑)
(Wordcount4700)
「んで? アイスはどうするよ?」
「えっ……あ~……」
はぁう~どうしようと、こんな夢のように素敵な氷菓子の世界で、大好きなアイスの誘惑に負けてしまいそうな三日月。
(誘惑と言っても、アイスが悪いことをする訳ではないのですよ!)
「でも……」
「月、どうした?」
太陽が心配そうに声をかける。
「うにゅー」
(だって、だってぇ!)
その少しだけ、うるるっとした瞳で太陽を見る三日月に。
――ドキッ。
「な……ん?」と、いつもと違う表情に見えたことに、太陽が戸惑う。
そんな太陽の心にも気付かず。
三日月はついさっき食べたスイーツビュッフェのことで頭がいっぱいだった。あんなにたくさんカフェデザートを食べて満足していたというのに! なぜか、心の声が聞こえてくる。
(私のですね、お腹さんが『アイスですって?! ぽんぽん余裕余裕♪ まだまだ食べれますヨ~!』と、言っているのです!)
アイスクリームや甘いもの、自分の好きなモノは、入るところが違う。
そこでハッ! と気付いた。
(まさか、これが噂に聞く、あの!)
「別腹……というものかしら?」
ポツリと、呟いた。
そうだぁ、きっとそうなんだぁ! だから、食べれそうな気がするんだよぉ~! なるほど、なるほど~♪ 三日月は、うんうんと頷きながら一人納得。「いや、待って!」と、そこでまた我に返る。
「いーやっ! ダメダメッ」
パタパタしながら何やら悩んでいる三日月の姿に「一体、どうしたんだ?」と、不思議そうな顔で見ている太陽。その視線に気付き顔を上げると、ぱちりっ!! 二人は目が合った。
三日月の気持ち(あー、いけないイケナイ!! 食べたい気持ちが見つかっちゃう。ここは落ち着いて、冷静に!)に対して。
太陽の気持ちは――。
(うん、なんだ? 今日は月の瞳がキラキラしてんな、色が違う……髪のブロンドの輝きも)
と、少し見惚れていた。
そして三日月は、食べたい気持ちを隠し隠しでフフンッと答える。
「い、いくら何でも、食べ過ぎかなぁ~と思ってぇ」
なぜか得意気な表情で答えた三日月(自分でも何で得意気なのか? 意味不明であった)。
そして右手のひらを前に出すと「もうやめときます!!」の気持ちを、猛アピールする。
「へぇ、そうなのか~……」
すると太陽は「そうか、いらんのか~月にしちゃ珍しいこったなぁ……」と呟き、メルルとティルの所へ行く。そして「うまいかぁ? そうかそうか」ヨシヨシ~と頭を撫で、喜んでいる。
本当は食べたい気持ちが三日月の心には今、渦巻いていた。
(でも! 我慢だよ、三日月ぃ……)
――これは、かなりの強敵です!!
頭の中で、いくつか現れた三日月の感情が『アイスクリーム』という素敵な食べ物を巡り「食べるか、食べないか」で争っていた。自分で自分にストップをかけ、心の中では相反する気持ちが戦う!
(うっはぁ、この葛藤は! とてもツライよぉ!)
「はぁぁ……」
思わず零れた、ふか~い溜息。
アイスクリームへの想いが溢れてしまった三日月。慌てて両手で口を押さえ、しまった! という表情。すると、それを見逃さなかった太陽は――。
「つ~き~、やっぱりお前って、ぶはっはは! おっもしろいよなぁ!!」
と、大笑いをされる。
「うにゅ~」
「あっはは、欲しいの顔に出てんぞ! 月ちゃんよぉ」
(で、でしょうねぇ……えへへ)
「だ、だって、だってね――」
「隠し事できねぇよなぁ、月はすぐ顔にでるからなっ」
お腹抱えて笑う太陽。つられてメルルとティルまで笑っている。
(もぉ! すっごい、笑われてるじゃん)
「む、昔からだもん。顔にでちゃうんだもんっ! しょうがないじゃん!!」
そして三日月は密かに、心の中で抗議していた。
顔は隠せない、思った事がすぐに口から出てしまう(そうだ! これはお母様譲りの性格なんだ!)と。
そんな気持ちのままプンプンな表情で太陽の方をチラッと、見る。すると「はいは~い」と優しく笑いながら頭をポンッ、宥められた。しかしまだ迷っている三日月の心に、甘~い言葉で最後の留目をさす。
「ほぉ~らほら、月ちゃん♪ 見てみろ、この店にあるアイスクリームはすごいんだぞ~」
「うぅ~……わぁ~はぁうっ♪」
(な、な、なんて美味しそうなのぉ!)
すると太陽は、店先のブラックボードに書いてあるメニュー表を見ながら、いくつか読み上げ始める。
「えーっとなになに? フムフム……契約農園で作られた特別な果物使用、んで~? こだわりのカカオで作ったチョコレート……おぉ!! 王国内では滅多に食べられない『高級アイス』だとよ~」
「えっ?! ホント?」
(文化交流会だから、特別ってことなの!?)
「ぷっ……あっはは!!」
「あっ、しまったぁうぅ」
(また私ったら、気持ちが顔に出てしまったぁ)
「やっぱりお前は、隠し事できねぇな~」
可愛い奴だ! と頭をポンポンされながら、ボードの方を見る様に言われる。
「ぷにゅー……」
少しだけプンプンしながらも言われるがまま。そのアイスクリーム店のブラックボードを見た。そこに書いてある説明には、とても高級な材料を使用していること、本格的な味が楽しめる‥‥‥などなど。興味をそそるキャッチコピーばかりだった。
当然、三日月のおめめは釘付けだ。
そして、そのお店のおすすめアイスクリーム、それは。
(にゃ、にゃんと! 濃厚ミルクいちごぉ~♪)
「い……ちごぉ♡」
その瞬間、私の瞳には、アイスクリームが輝いて見えた。
(んんーッもぉ! 食べちゃお!)
三日月の決意に満ちた顔に太陽は、にんまり。
「おぉ~よしよしっ! んじゃあ、決まりだな」
「うん!! ……って?」
――エッ、何っ?!
気付いて振り返った時には、もう太陽はお店の前にいた。
「これこれ……よぉお疲れ、すまんが濃厚ミルクにいちご、で頼む」
「かしこまりました、ありがとうございます~」
ちょっとカッコいめ~な店員が、にこにこと笑顔で注文を受けているのが見える。
「あ、あれっ、買おうとしてるの?!」
(たぁ~いへんッ!)
驚いた三日月は「待ってー」と走り、止めに入った。
「太陽君、私アイス、自分で買えるよぉ!」
すると「いやいや、気にすんな」と言いながらまた頭を、ポンっ。優しくトントンする太陽はもっと、驚きの言葉をくれた。
――「いや、これな。俺からの『バースディプレゼント』ってことで」
「えっ、そう……」
(そうだったの?)
「いいよなっ!」
そう言うと太陽は白い歯を見せてニカッと笑い、いつものように力強くグッドポーズをした。
「……あ、ありがとぉ」
(覚えていてくれた? 入学して間もない頃ちょっと話したことなのに)
「いやいや、しかし安いもんですまんな」
「そ、そんな――」
(安くなんてないよ、すごい嬉しい)
「月は、食べ物好きだからいいだろうと思ってな」
「えぇ? 何それ~、まぁそうだけど。えへへ」
(そんな気持ちが、すっごく嬉しいよ)
「みかじゅき~も買ってもらったのぉ?」
「どれどれどれみにゃ~? どれぇ~?」
「え、えっとねぇ」
「「にゃっはぁ! キャキャ~ん♪♪」」
メルルとティル、いつものように新しいものが大好き!! キャッキャと喜びおめめキラキラ~興味津々♪ で見ていた。三日月自身も「高級アイスが食べられるなんて」と、ドキドキわくわくしながら待っていた。
「へ~いっ、お待ちど~さん!」
「えっ?! これ……す、すごい」
――せぇ~のっ!!
「「「三日月、お誕生日おめでとう!」」」
メルルとティル、そして太陽から突然の『おめでとう』の言葉。
三日月は感激と同時に、置かれたアイスクリームを見て驚く。その豪華さと美しさ、三人からの愛情に心が熱くなっていった。
「嬉し……すぎて、声……ならな……」
そして嬉しくて、嬉しすぎて。涙がいっぱい溢れていく。
「おーう!! 泣かすために買ったんじゃないぞ」
「「つきたんはいつまでも泣き虫ちゃんちゃん♪」」
「ホント、グスン、泣き虫。ごめんごめん」
そう言いながら三日月は、頬を伝う嬉し涙を拭った。
それを見たメルルとティルは三日月の頭をヨシヨシ。それからすぐにテンションが上がって、いつものように大はしゃぎだ。まるで、三日月の喜びを受け継いだかのように、やったぁ~!! と言いながら走り回っている。
「な、なんで二人が? あっはは」
そして四人で、大笑いしたのだった。
(だって……だってネ。こんなに素敵なプレゼントもらっちゃったら。絶対泣いちゃうよ)
プレゼントされたアイスクリームはとても美味しそうで、素敵な仕上がり。メニュー表の写真とは違い『金色の氷の粒』がミルクアイスの上に降り注ぎまるで踊っているかのようにキラキラとしていた。
なんと言っても三日月の胸を高鳴らせたのは『ハートの苺』。そして――『三日月おめでとう』と書かれたチョコプレートが真ん中に、乗せられているのであった。
(こんなサプライズは、生まれて初めてだったから)
「ゴメンネ、すぐ泣いちゃうから。えへっ。ビックリして感動した!! 太陽君、このアイスって。デコレーションが――」
「おぉ~よしよし、いい出来だな! ありがとよぉ」
太陽はアイスクリーム屋の店員に手を挙げ、お礼を言っている。
「いえいえ。お誕生日とお聞きしましたので、オリジナルでデコレーションさせていただきました。太陽様のお役に立てて光栄でございます」
そう返事をした店員は近くまで来ると、三日月に話しかけた。
「三日月様、本日はお誕生日おめでとうございます。貴女様のご健康と、さらなる飛躍をお祈りし、そして素晴らしい一年になりますよう心より願っております」
――キャ、恥ずかしい!! こんな丁寧にお祝いを言われたのも、初めてだ。
(あぁ~何だろう、この気持ち。くすぐったぁーい)
「えーっと。ありがとうございます、アイスとっても嬉しいです♪」
お礼の言葉に笑顔で応える、アイスクリーム店員。
それから三日月は喜びと期待で頬をピンク色に染めドキドキしながら“未知のアイスクリーム”を、頬張る。
「いただきまぁ~す」
あむっ……ほぉ♡
「食べたことない。こんな、こんなに! トロケル……溶ける? 何だろう、表現が難しいけれど! すっご~く、おいしぃ♡」
「そっかそっか、良かったなッ! はーっはっはぁ」
(うっふふ。なんだろう? 太陽君の笑い方が面白い)
「う、うん!!」
――本当に素敵な、バースディプレゼント。
「「つき~のあいすッ、やったったぁ♪」」
「え~? メル・ティル、何にやったったぁなの?」
――メル・ティルって、本当に不思議な双子ちゃんだぁ。
あんなに葛藤して我慢しようとしていたアイスクリームだったが、食べれて良かったと、三日月は満面の笑みだ。
「はぁぅ♡ 幸せだぁ……」
と、いつもの台詞を言ってしまう。そしてまた「あむ」っと食べながら、ふと視線を太陽に向け感じたことがあった。
アイスクリームを食べて幸せに浸っている間、太陽はアイスクリーム店員とすごく親し気に話している。その店員の言葉はなぜか? とても丁寧な……丁寧過ぎるくらいの敬語を、使っているように聞こえたのだ。
(でも『王国内では滅多に食べられないアイス』ってことは他国のお店? だとすると、二人が知り合いというのは)
「ないよねぇ。うんうん、あむっ……ほぉ♡」
いつも気にもならないようなことが、このドームに入ってからは色々と気になってくる。
そして改めて、少し離れた場所から太陽を見てみると――。
「太陽君、背たかーい!!」
(そっか。二十二歳って――“大人”なんだよね)
太陽は一般クラス、普通の民間人である。
(しかしそれにしては高貴さが溢れ出ているような……)
そんな気がしてしまう、三日月だったが――。
「う~ん。大人だからかな?」
アイスクリーム店員と楽し気に話すその姿。
いつもとは違う変わった雰囲気を、太陽から感じたのであった。
今回は長~くなりましたが……。
最後までお読みいただきありがとうございます!
『また読みに来てくださいまし~(*´▽`*)』




