43 文化交流会2日目~スイーツ~
お読みいただきありがとうございます(*^^*)
♪こちらのお話は、読了時間:約8分です♪
(Wordcount3560)
出店が並ぶメイン広場へ戻ってきた仲良し四人。
昨日から今日と色々あったが、不安だった魔法勝負の大会も無事に終わり、やっと緊張もほぐれてきた三日月。さすがに今日はちょっと疲れたなと歩くのも遅くなる。そんな身体に甘いものが「欲しいなぁ~食べたいなぁ~♪」という気分になっていた。
「「にゃっはぁ♡♡」」
「わぁ~! 美味しそぉ」
たくさんのスイーツを目の前にしたメルルとティルは大はしゃぎ、三日月も満面の笑みだ。まだ一口も食べていないのに、見ているだけでも幸せいっぱいの表情で、お店を見て回っていた。
高級フルーツを使用した、生クリームたっぷりのクレープに、気温が上がってきた今の時期にぴったりの、ひんやり冷たいジュレ。お部屋に飾っておきたいくらいに可愛いプチサイズのスイーツや様々なデザインで作られた、珍しいデコレーションケーキなどなど。
素敵なお菓子の数々に「すごいすごぉーい♪」と、目移りして困っていた。
いくつかのスイーツ店から迷いに迷ってようやく決定。
三日月たちは一般クラス生徒主催『スイーツビュッフェ』のカフェで、デザート時間を楽しむことにした。
「はぅ〜もうすでにワクワクがぁ♪」
「あぁ、良かったな……ふっ」
三日月の心の声が聞けるのは、いつものことである。太陽はその幸せそうな様子にクスッと笑う。
「どうぞ、お好きなお菓子をお好きなだけ」
店員にそう言われ取り皿を手渡された。
一枚の白く大きなビュッフェプレート。それに大好きなスイーツを、選んで取って並べていく。自分の好みで盛り付けられるのも、このお店を選んだ決め手の一つだ。思う存分楽しめるように準備された、豊富な種類のお菓子たち。
その中でも三日月は、美しい薔薇の形をした和菓子がとても気に入り、まぁるいお皿に絵を描くように綺麗に並べる。
出来上がると「芸術品だぁ!」と一人、満足して喜んでいた。
メルルとティルのプレートに目をやると、周囲にいた生徒が皆、驚いている。
「メル・ティル……それ〜大丈夫?」
さすがの三日月もビックリ!!
プレートいっぱいに溢れんばかりのお菓子をのせ、今にも落ちそうだ。「それは取りすぎでしょッ」と、見ていた皆が楽しそうに大笑いしていた。
このカフェの魅力。それは他にもチョコレートや焼き菓子、飲み物は100種類!! と、本格的。その全てのスイーツがキラキラッと輝いて見える。
「ヨシッ、と」
思い思いのスイーツを取り終えた三日月たちは、ちょっぴり気取っておしゃれなガラステーブルのテラス席に座った。
ちょうどその頃に午後四時の鐘が鳴る。するとお店の奥からテーブル挨拶に、主催者(生徒)が出てきた。
「スイーツって、見ているだけでも幸せ~♪」
そう言いながら、お菓子に見惚れ自分の世界に浸っている三日月は周りを見ておらず、テーブル挨拶に来たことに全く気付いていなかった。
「楽しんでいらっしゃいますか?」
その声で近くにいることに気が付いた。その主催者はにこやかに、そして爽やかに声をかけてきたのだった。
「ぅぅあ……えと」
スイーツをたくさんお皿にのせていて恥ずかしいやら、さらに初対面の人に話しかけられての緊張もありで、三日月の顔は真っ赤になる。しかし答えなければ失礼になる。と、やっとの思いで返事をした。
「あっと、は、はい。こんなにたくさん食べて、い、良いのかなぁ~って思いますが……とても美味しく楽しいです」
実は三日月、お昼時にちょうど大会に出ていたため昼食を食べていなかった。そのせいか? 大好きな甘いスイーツがビックリするほどお腹に入る。もちろん! とても美味しいからというのは、言うまでもない。
店の主催者は、その反応を見ると笑いながら答えた。
「たくさん食べて頂けるのは、嬉しい限りですよ」
――何だろう……何かちょっと怖いくらいに。
(その笑顔が、冷たい雰囲気に感じて)
少し気になる思いを引きずりつつ、慣れない会話と緊張で少し引きつった笑顔になっていると、突然大会の話になり魔法について聞かれる。
「三日月様……ですよね? 実は私、先程の魔法アーチェリー大会に、参加しておりまして」
「えっ! そうだったんですか?!」
「ハイ! 三日月様に私の主催するカフェでお会い出来るとは。そしてお話することが出来るだなんて……はぁ〜なんと光栄な!」
「はぁ、ありがとうござい――」
少しだけ引き気味になってしまった三日月。お礼を言っている途中でその主催者は話を続けてきた。
「忘れられないあの瞬間! いやぁ素晴らしい魔法で惚れ惚れしていまって。私は大変感動致しました。的への攻撃はもちろんですが、最後のユイリア様をお護りした時のあの魔法と言ったら、もう本当に!!」
落ち着いた雰囲気だった主催者は、だんだん距離を詰めてきて、熱く語り始める。三日月はその慣れないシチュエーションに、たじたじになっていった。すると太陽が三日月の限界を感じ話を中断。間に入り、それ以上近づけないよう椅子の横に立って話し始めた。
「やぁ~すまんな。月はその大会後で、ちょっと疲れてんだ。今はゆっくりさせてやってくれんか?」
いつもと違う、大人なトーンと口調。
≪ やっぱりお兄さんだなぁ…… ≫
今日だけでなく、いつも太陽君は側にいて、見守ってくれていて。私がピンチを感じた時には、すぐに気付いて助けてくれる。
「あぁ! そうですよねぇ、私とした事が!」
「いや、構わんが。ちょっと、な?」
(太陽君、怒ってはいないけど……)
少し警戒しているように、三日月には見えた。
「アフタヌーンティーのお邪魔をしてしまいましたね。お客様ですのに配慮が足りず、すみませんでした」
深く頭を下げ、笑顔で謝罪。三日月は慌てて、いえいえーと両手を振った。
そしてまた、チラッと太陽の様子を窺う。
――眼光鋭く、今までにない緊張感がぁ!
(うーん、どうしたのかな?)
それではごゆっくり~と、主催者生徒はお店の奥へと戻って行く。しかし去り際、三日月の後ろをわざわざ通り、聞こえるか聞こえないかという程の小さな声で一言。
「このお礼は改めて……」
そう、言ったのだった。
「えっ?」
――お礼? 私、何も感謝されることなんてしていないのだけど。
大会で一緒だったとしても、三日月は話もしていない、今が初対面だった相手。一体どういう意味なのだろうかと、不思議に思う。
「まぁ、いっか!」
一抹の不安を抱えつつ、気にしないようにと自分に言い聞かせた。そして助けてくれた太陽に話しかける。
「太陽君、ありがとう」
「あぁ~、おう」
「え、どうかしたの?」
「んっ? いや、何もないぞ~気にすんな!」
そう言うといつも通りの太陽に戻り、あっはははと笑っていた。
(うーん、やっぱり何か変だ)
少し妙な気分のまま、残りのお菓子を食べる。そして結局、三日月の心と体は幸せなお菓子の世界に戻り、モグモグと全部食べてしまったのだった。
「はぁう~♡」
――そして私、三日月は。
『心ゆくまでスイーツを堪能しました』とさ!
「うっふふ♪」
(物語風に、気持ちを表現してみました! 美味しいおやつを食べて、ご機嫌な私です)
甘いものはあまり食べない太陽は、三日月たちがキャッキャッとはしゃいでいる側で、嫌な顔一つせずに付き合い、優しく穏やかに見守っていた。
ゆっくりとデザートを楽しみ「このお店に入って良かったね」と、スイーツビュッフェのお店を出た。
結構たくさんのスイーツを食べていた双子ちゃん。その二人がこの後、驚きの言葉を口にする。
「あぁ~っ!♪」「いぃ~っ!♪」
(んっ、新作のお歌でしょうか?)
「「あい、あい、アイスックリーム~♪」」
(えっ、えー? まさかッ)
「まだ、食べるのぉー?!」
メルルとティルの食欲はいつもスゴイ。
「ちょっとお二人さん、もう食べれないです」と、そういった場面はしばしば。
しかも今、目の前にある出店のほとんどはメルルとティルの大好物、あま~いスイーツの店ばかりが並んでいる。
甘いものは美味しくて、止まらなくなる。
「それは、分かるのだけれどぉ……」
あれだけ食べたのに、すごいネェ。と他人事のような三日月。しかし、その誘惑に……。
(確かに……アイス食べたいかも♡)
さすがの太陽も、驚いた様子。
「おいおいっ、メル・ティル~。そりゃ食べ過ぎやろう?! お腹壊すぞ?!」
メルル「だいじょぶだもーん!」
太 陽「ほぉ……俺は知らんぞ~? はっはっ。」
ティル「あっかんべー!!」
可愛く反論する三日月。
「おーっと?! べー!とか、していいのか~?」
「「にゃっはーきゃっはー♪ 逃げろぉ」」
(今日もお決まり〜始まったぁ)
この三人を見ていると、本当にいつも楽しくて笑ってしまう。そんないつもの日常風景。仲良くわいわいと騒いでいる。
――こんな平和な日が、ずっと続くといいのになぁ。
そんな事を考えながら、三人の追いかけっこを、三日月は微笑みながら見ていたのだった。
最後までお読みいただきありがとうございます♪
『次話もおたのしみにぃ(・ω・)ノ』




