42 文化交流会2日目~謎~
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「「ぷっは~う!!」」
「おいしかったにゅー」「次はおやつたべるん♪」
美味しい食べ物を頂いた後の、メルルとティルはとってもご機嫌♪
「「ルンルン、はっやく行こうぉ~♪」」
二人は、部屋の前に置いてある水晶猫の頭や耳をヨシヨシしながら待っていた。
「妖精様……本日は本当にありがとうございます。ラフィール先生にも、宜しくお伝え下さい!」
そう言うと太陽は、深々とお辞儀をしていた。
(太陽君の言う妖精様とは、バスティアートさんの事かな)
綺麗に背筋を伸ばし、腰から頭にかけて一直線に腰を曲げ直角。その、あまりにも美しい最敬礼を見てふと、三日月は思う。
――礼儀作法やマナーが、完璧過ぎる。
三日月も一般の民間人だが、両親が王国任命【守人】の役目を担っているせいか、上流階級と同じくらいの作法を学んでいる(そもそもある程度は出来ていないと、この学園には入れないのだ)。
(入学の為? いやいや、それを考慮したとしても太陽君はそのへんのお坊ちゃまよりも、しっかりしていて……。
「何ていうか、恰好が良すぎるのだよ〜」
歳上だからだろうか? そういう感じでもないか、と色々考えつくことを頭に浮かべてみる。
――太陽君のご両親が、厳格な方なのかな?
一年と少し、この学園で太陽と一緒に学んできた三日月が、今更ながら気付いたこと。
(そういえば、お互いの生まれ故郷のお話とか、家族のお話とかした事ないなぁ)
そこで初めて思う。
「太陽君って、本当はどういう人なんだろう?」
この謎に、少し興味が湧いてきてしまった三日月。無意識に太陽の顔をじーっと見つめていた。
そこで部屋を出て頭を上げた太陽と目が合う。
「んっ? どうした」と言い、気付かれる。
「えっ、エヘ? えっへへ~」
「んんっ?!」
(不思議な顔をされてしまった……あはは)
部屋を出る際に見た太陽の真剣な姿と、誠心誠意の言葉を聞いた、バスティアートも丁寧なお辞儀をし、ニコニコしながら太陽の気持ちに応えていた。
――その太陽の“精霊感知能力”レベル。
精霊の姿(光)は見えるが、話をする事が出来ない。バスティアートは妖精であるため、人の姿としてはちゃんと見える。しかし残念なことに、今の太陽が持つレベルでは、妖精の声も聞こえない。
太陽は今回そのことに気付かされ、がっくりと肩を落としてしまっていた。
せっかくのお茶会。太陽とバスティアートが会話をする時は、三日月が間に入って通訳のように話した。それで結果的に楽しく仲良く、皆で一緒に話すことが出来たのだった。
その後、太陽はラフィールの部屋の入り口にある水晶猫を、メルル、ティルと一緒になって「可愛いなぁ~♪ 水晶かぁ、癒されるよなぁ……」と言いながら撫でていた。
(みなさ~ん、その水晶猫さんはバスティアートさんが光に戻った時のお家なんですよぉ♪)
と、三日月は自分だけが知る秘密のように、心の中で自慢気に呟きながら、ウフッと笑った。
そして三日月も、バスティアートに今日のお礼とご挨拶をし、部屋を出る。
「バスティアートさん。大会前の応援、本当にありがとうございました。きっとあの時の癒しの力が、最後の攻撃を助けてくれたのだと思います」
三日月からの感謝の気持ちを受け取ったバスティアートは瞳をキラキラさせ答えた。
『身に余るお言葉、光栄に存じます』
固い挨拶に慣れない三日月は、慌ててバスティアートに伝える。
「そんな! 私なんかにかしこまらないでください」
身振り手振りを加え、全身伝える。
すると三日月の言葉に、笑顔でこう話した。
『いえ、そういう訳には参りません。月様は、私共にとって大切なお方ですので』
――そんな、『大切』だなんて。
「いえ、あのえっと~ありがとうございます。何だか恥ずかしいのですが、バスティアートさん。今日は何度もお邪魔してすみません。ありがとうございました! また会いに来ますね♪」
『はいっ、お待ち申し上げております』
部屋を出た三日月だったが、実はもう一つ伝えたいことがあった。もう一度振り返り、バスティアートと向かい合う。
「あの、もし良かったら」
『はい、どうなさいましたか?』
笑顔で返事をしたバスティアート。三日月は一度深呼吸をすると、勇気を出して伝えた。
「私とお友達になってもらえませんかっ?!」
するとそれを聞いた彼女は、可愛いおめめをまぁるくして、三日月のことをしばらく見つめていた。淡いベビーピンクの長い髪がキラキラと金色の光を放ちながら、周りの精霊たちと舞い上がる。それは彼女なりの喜びの表れだった。
『なんと言えば良いのか……感激です』
ふにゃ~っとした表情で、嬉しそうにニッコリと笑うバスティアートの周りは眩い光で包まれていた。
「いえ、そんな大げさですッ」
『ありがとうございます。でも、とても嬉しかったので』
(あぁ~勇気を出して、言って良かった!)
そう思いながら「ありがとう」と、もう一度挨拶の一礼をした三日月は、それではまたと、行こうとした。すると、彼女が小さな声で話しかける。
『あの、私のことはよろしければ【ティア】とお呼び下さいませ』
「えっ、いいのですか?!」
『ぜひ、月様にはラフィール様と同じように、私を愛称で呼んでいただきたいのです』
恥ずかしそうに、気持ちを伝えるバスティアートの頬は、桃のように可愛くピンク色だった。
(それは私も同じで、仲良くなりたい!)
「私のことも……よければ【月】って呼んでほしいです!」
『えっ!! 私などが……よろしいのですか?』
「はい! ぜひ愛称で」
二人では見合わせると、手を取り合い笑った。お互い頬を赤く染めながら「よろしくね」と。
「ティア、また会いに来ます!」
『えぇ月、また! お待ちしています』
そう言ってティアは、真っ白な美しい手のひらを、ふわふわっと振り、三日月たちを見送った。
三日月が部屋を出ると、明るい笑顔で待っていてくれたメルルとティル、そして太陽。
――みんなの顔を見ると、ホッとする。
「お待たせ~♪」
「まってないにょ~ん」「お話もいいにょ?」
(『にょ~』なのね。毎回違う語尾に、笑っちゃうよぉ)
「もう、いいのか?」
太陽も珍しく、真面目な顔で聞いていた。
「うん! 大丈夫」
楽しそうに笑顔で答える三日月に、太陽は安心した顔で頭をクシャクシャと撫でた。
「うーにゃー! もぉ」
と、いつものように頬をぷぅーっとする。
「ウッシッシー♪」と、いつもの太陽。
(心配してくれていたのかな……)
「よぉし♪ まだまだ文化交流会、楽しもぉ! 美味しいスウィーツ、食べにいこぉ~」
「「ふにゃああ♪ いこぉー!!」」
「キャッキャ~」と言っている三人と、兄のように見守る太陽。
仲良し四人は、文化交流会の会場へ戻っていった。




