39 文化交流会2日目~決着?~
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――キラキラと輝く光の粒が……。
近くで見ていた参加生徒や先生、守りの魔法線の外側にいる観客(生徒)も。何が起こったのか分からぬまま、その美しく奇跡のような光景に、心を奪われていた。
「なんて……綺麗なのかしら」
「あの子の魔法、すごかったわね」
「一体どこのクラスなの?」
「ぜひとも、お近づきになりたいもんだ!」
「おいっ、よく見ろよ! 髪の色」
「きっと良い御家柄のお嬢様なんだろうなぁ」
本当に勝手なものだ。
先程と真逆、上流クラスの者たちの態度は一変し褒め始める。
これだから……と。
「「上流の人、キライキライ!!」」
(あぁメルルさんとティルさんが、怒っていらっしゃいますな。ここはひとつ兄ちゃんが)
「まぁまぁ! メルルちゃん、ティルちゃん♪ 周りの言葉なんざ気にすんなや!」
太陽が珍しく年上らしい対応で、双子ちゃんを宥めた。
それから会場の方を見つめ、ぼそっと呟く。
「一体、何が起こってんだか……」
――太陽の本心は。
本当は何も知らない者たちが、三日月のことを軽々しく口にしているのを、メルル・ティルと同じくらい……いや、きっと二人以上に気持ちの苛立ちがあった。
しかし太陽はその感情を超えるくらい、会場にいる三日月の安否が心底心配でしょうがなかったのだ。
(本当は今すぐにでも、確認しに行きたい)
しかし「ラフィール先生が迎えに行ってくれた。信じて、此処で待って居よう。きっと大丈夫だ……」そう、自分に言い聞かせていた。
その頃、問題となっている会場では。
輝く光の粒が降る中、まるで時が止まったかのように、ほとんどの者がぼーっとその光景に見惚れていた。
そんな中ふと、ユイリアが我に返る。
「あ、あの。つ、月さん? あの……私は」
その憂慮するような震えるユイリアの声を聞いた三日月は、残り少ない体力で力を振り絞り身体を動かした。
そしてユイリアの元へ行き、両手を握り話しかけていた。少しでも安心してもらうために。
「お怪我は……ないですか? ユイリア様。ご無事……で?」
三日月は自分が思っている以上に魔力、体力ともに消耗が激しく、歩くのはもちろん声を出すのも苦しく、やっとだった。
「え、えぇ! 私は大丈夫ですのよ。それよりも、あなたの方が」
握った手が熱くなっていく。ユイリアは涙を浮かべ、三日月の顔を真っ直ぐに見ていた。
それに気付いた三日月は、ラフィールとのお茶会で聞いた話を思い出す。
――表裏の無い、良く言えば天真爛漫なお方。
三日月はクスッと少しだけ笑い「本当だぁ~。先生の言っていた通り」そう納得していた。純真そのもので、自分の思う通りに発言して、動いて……。そんなユイリアに、私のしたことでご心配をおかけしちゃいけない! と、すぐに笑顔で元気を装った。
「ご無事で……良かった。……あ~安心しましたぁ。私、この学園に入学して…………今日が一番、がんばったかもぉ……ですよ」
と、時間をかけてやっとの思いで話し終えると、最後にえっへへ~と笑った。
その三日月の健気な姿を見て、ユイリアが何かを言おうとしたその時、ラフィールがふわりと到着した。
「あー……先生だぁ、すみません……でした。結局、こんな……」
三日月は魔法使用のリスクを分かっていながら、勝手な事をしてしまったのではないかと思い、申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた。しかしラフィールはいつものように、三日月の頭をヨシヨシと撫で、労いの言葉をかけてくれる。
「よく、頑張りましたね」
ラフィールはそう言いながら、動けなくて倒れかかっている三日月の肩を支え、回復魔法による魔力・体力の回復を施し始めた。
「ラ、ラフィール先生?! えぇ? 何故ここに」
ユイリアが、信じられない!! という表情で三日月のことを見ている。
それもそうである。三日月が別メニューでの魔法訓練をしていることは、一部の関係者のみしか知らない。
三日月を助けに来た先生が、まさか! あの上級能力講師のラフィールだとは、誰も夢にも思わない。
それが今、目の前で起こっているのだ。
――驚かないわけがありません!
「ユイリア様、お怪我はございませんか?」
ラフィールは動揺しているユイリアの顔を見て、にっこり笑うと冷静に話しかけた。
「は、はい! 月さんが護って下さったので。あの本当になんとお礼を……」
(あ〜ユイリア様が泣いちゃいそう。泣かないで……)
気持ちが通じたのか、三日月のことを慕う仲良し精霊たちが、ユイリアの周りに集まり代わりに慰めに行く。
「あっ……あなたたち。うふっ、可愛い精霊ね」
――ユイリア様も精霊が見えるみたい。それに、可愛いだって♡
(良かった、笑ってくれた)
三日月はホッと胸を撫でおろし、力尽きて目を閉じそうになっていると、突然! 大きな声が聞こえてきた。
「唯莉愛ぁ!!!!」
遠くから誰かが、息を切らしながら走ってくる。そしてユイリアを抱きしめ、無事を確認していた。
「エッエッ、ちょっカイリ様……?!」
この急展開な状況に当然! ユイリアは驚き、困惑している。
そんなのはお構いなし! カイリは抱きしめる腕を緩めることなく、そして叫ぶように大きな声で話す。
「心配したぞ、一体何があったんだ? もしも、ユイリアに何かあったら……俺は」
「でも、でも! カイリ様。ずっと、ずっと私のことを、避けていらっしゃって……」
しばらく沈黙が続いた。
そして二人は気付く。周り全ての視線が自分たちに向いていることに。
「「ごめん」なさい」
二人は同じタイミングで同じ言葉、互いに謝っていた。
(あぁ~もしかしてこの二人、仲直り出来た?)
「……かった」(よかった)
「ん? 月さん、どうしました?」
ラフィールが心配そうに、不思議そうに三日月の顔を見る。
「…………♪」
三日月は言葉が出ず、にこにこしながら首を横に振りジェスチャーで気持ちを表現、何でも ないと伝えた。
そしてそのまま目を閉じ、倒れるように力尽き、三日月は眠りに落ちた。
◇
後で聞いたお話。
『癒しの神』(ラフィール先生)の優しい腕の中で、それはそれはもう! 大切に、大切に、抱きかかえられ運ばれたそうで。
その光景は、上流階級の皆様の、ざわつきを生んでいたという。
ロイズ先生同様に、ラフィール先生も生徒に大人気! そんな御方に『お姫様抱っこ』をされ運ばれた私は、お嬢様方からの突き刺さるほどの、羨ましいの視線を送られていたというのだ。
――そんな、怖い話を聞いてしまったのです。
「はぁ~、そんなこと言われても」
いつどうやって眠ったかも、覚えていないのに。
「『お姫様抱っこ』で運んでいただいた、だなんて?」
そのような記憶、私には全くないのです。
あぁますます、あの校舎にはもう行けません!
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