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37 文化交流会2日目~光の矢~

お読みいただきありがとうございます(*´▽`*)

♪こちらのお話は、読了時間:約6分です♪


(Wordcount2530)


 魔法アーチェリー大会も、攻撃残り時間一分半を切った。


 訓練の森中に響き渡るほどの盛り上がりで、観客の応援する声も参加者の攻撃も、最高潮に達していく。


 攻撃の終わっていない参加者たちが焦りを感じる中、三日月はまだ一本も攻撃を終えていなかった。


「ねぇ、どうしたのかしら」

「あ~あの綺麗な弓を発動した子?」

「本当、動きが無いわ」

「あれ、慣れてないんじゃないかしら?」

「だって見て! グローブも()()()()()に着けているわ」


「ふっふふ、それって見掛け倒し?」



 ひそひそと話す周りの声に、メルルとティルが気付く。


「ねぇねぇ~めるん」「うんうん~てぃるん」

「「な~んか、やーやー! プンプンねぇ」」


 勝手な想像で三日月のことを色々と言っているお嬢様方に対して、二人はぶぅー! と、ピンク色の頬を膨らまし「何にも知らないじゃん!!」と、ちょっぴりご機嫌斜めだ。



 攻撃(挑戦)を終えた他の参加者たちは、さっき開始前に『頑張ろうの応援を送ってくれた子』という認識で、まだ一本も射っていない三日月のことを、遠くから心配と応援の眼差しで見守っていた。


 唯一、厳しい目で見ているのは他でもない。隣にいるユイリアだけ。


 そんな周りの心配やざわめきに気付くことなく、自分の世界に入り込んでいる三日月は、ゆっくりとマイペースに、矢を射る準備に集中していた。


 この瞬間、魔力を使用する恐怖を上回るくらいのドキドキと、自分の魔法が試せるチャンスが出来たことに、三日月は今までにないわくわくを感じていた。


 せっかくなら「素敵な魔法にしよう♪」と考え、自分にどれだけの力があるのか? 楽しみになっていた。


(そろそろ魔力、溜まったかな~)


「よしっ! いい感じ」


 三日月は自分の腕や手のひらを確認し、気持ちを入れる。


 しかしなぜ? 三日月の準備は、こんなに時間がかかってしまったのか。


 それは大会で使用する高魔力の矢は、()()創り出すのに時間がかかる。しかし三日月にとってこの()()()の魔法を使うこと自体が初めてのようなもので、「一本ずつでないと無理」という考えがなかった。


「左手の魔力は十分。なるべく短い間隔で三本射れば、同じ場所に当てられる気がする。最初……そう! 最初の一本目さえ高得点に当てられれば」


 と、呟く三日月――そういう訳である。()()()()を一気に飛ばすために、力を溜めていたのだった。


 その表情は自信に満ち溢れ、喜んでいるようにも見える。



 魔力の準備が整い、いよいよ矢を創り出すためのオリジナル魔法を唱えた。


『ライトアロー!!』


 キラキラと光輝く矢が、左手に現れ三日月の手に握られた。そして一瞬でそれは消え去っていく。


「うん! イメージ通り」



――――キラッ! シュッシュッシュッ……。



 誰も予想できないくらいの、早いスピード。


 その矢は美しい光のラインを描きながら、ほとんど音もなく、的へ向かって真っ直ぐに【光矢(ライトアロー)】は射られた。


 狙い通り、三本とも同じ場所。そして一番高い得点の的へ当たっていた。


 三日月のオリジナル魔法。

弓魔法(クレセント ムーン)】、そして【光矢(ライトアロー)】は、見ていた全ての観客に感動を与えていた。


「やったぁぁ!! 綺麗に飛んで行ったよぉ。成功したかな?!」


 その時ふと空の上からの視線を感じた三日月。その正体は、魔力暴走の監視という名目で、上空から優しく見守っていたラフィールだった。三日月は両手を広げ、見上げる。


 すると、ラフィールは「大丈夫」と言うように、そっと頷いた。


(良かった! こんなに達成感もあって、こんなにわくわくして)


「魔法ってすご~く、楽しい♪」


 三日月は嬉しすぎて表現しきれないその気持ちを喜色満面、両手で自分の頬を包んで感じていた。



 その頃、太陽は当然のごとく驚いていた。


「あれが月なのか? 凄すぎるだろ。なぁ~セルク」


「えぇ、これは予想以上でした。正直僕もさすがに少し驚いています」


「マジか? 少しってお前」


「本当に見惚れるような、美しい光でしたね」


「あ、いやそれは分かるんだが。セルクの驚きってそっちかよ」


 今日は太陽にとって、驚くことばかりが続いている。今は目の前で起こった三日月の成す魔法に、心を打たれていた。


 その高揚した気分に浸っていると突然、三日月のいる会場から叫び声が聞こえてきた。


「早くッ! ()けてー!! 逃げてぇ」

「あぶない!!」

「きゃあああ……」


――「ユ、ユイリア様ぁ!!!!」


「んなっ、何だ?!」


 激しい悲鳴。


 太陽たちがその叫び声に気付き会場の方へ目を向けた時には、もうすでに何が起こっているのか? 全く分からない状態だった。


「セルク、何が起こった?!」


「こんなこと……いや、すまない。僕にもよく見えなかった」


 セルクには何が起こったのか? 心当たりはあった。が、確実ではない情報を太陽に伝えるわけにはいかない。それはセルクが動揺するほど信じられないことだった。


(会場が少しずつパニックになりかけてきている)


 このままでは危険が……そうセルクが焦り始め、三日月の元へ行こうとした、その時――。


「待ちなさい、セルク」


 三日月の攻撃が終わりすぐに地上で待機していたラフィールが、険しい表情でセルクの元へ降り立ち、命じた。


「詳細は後程。君は先にロイズ先生へ報告を。場所は分かるね?」


 三日月のことが気がかりで仕方がない。しかしセルクは平常心を保とうと、目を閉じた。


「……承知しました」


 その返事を聞くとラフィールは、三日月のいる会場へと急いで向かった。


「おい、セルク大丈夫か?」


 さっきまでとは違う“()”の様子(オーラ)を感じ取った太陽が、心配そうに話しかける。

 すると急にセルクは、冷たい空気を身にまといながらも笑顔で答えた。


「太陽。僕がこんなことを言うのは大変おこがましいのですが。三日月のこと、頼みます」


 それを聞いた太陽は、少し怒り気味。


「セルクお前、何言ってんだよ! そんな俺たちの前で、無理して笑わんでいい」


――本当に、なんて自分に正直な人なんだ。


「うん、そうだね」


 そして太陽は「俺に任せとけ!」と言いながら、セルクのことも気にかけていた。


「その~何だ。よく解らんが、気を付けて行って来いっ!」


 セルクはフフッと微かに笑いながら「あぁ、ありがとう」と言った。


 そして同じく、心配しているメルルとティルの頭をヨシヨシと撫でると、セルクは足早にその場を立ち去ったのだった。


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