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必話04 不穏な空気

お読みいただきありがとうございます( ..)

♪こちらのお話は、読了時間:約3分です♪


(Wordcount1570)


『パーンッ!!!!』


 

「「「――うおおぉぉぉぉぉ」」」



「「「キャ〜ッ!! 頑張ってぇ!!」」



「おやおや! 随分、訓練の森で開催中の大会はぁ〜……盛り上がっていますねぇ?」


 そう話すのは、この学園の最高責任者である、理事長だ。


 理事長は数人の交流会担当者たちを連れて、学園内の高台にあるお洒落なカフェテリア風テラスで素敵なガーデンパラソルを差し、思い思いの飲み物を片手に皆くつろでいた。そして月の参加している魔法アーチェリー大会の盛り上がる(さま)を見下ろし、上機嫌である。


――すると突然、理事長の目の色が変わった。


 その場にいる交流会担当者たちは嫌な予感がした。良くも悪くも理事長のいつもの“癖”が出る、そう思ったからだ。


「おやっ? あの足元に浮かんで見える、丸くて〜? つよぉ〜く(きら)めく魔力の光がひと〜つ」


 一番近くにいた一人が、その言葉にギョッとすると、目を合わせぬようにしながら後ずさり始める。


「あれはまるで……そう! 満月!! まんまるお〜つき様ぁ♪ の、ようだねぇ。う~んあぁ〜とても美しいよ」


 そう言うと理事長はいきなり振り向き、後ずさっていた者の肩を掴み、強めの声で話す。


「おい、君。あのブロンドの髪色の生徒、誰だか分かるかい?」


(恐ろしい、恐ろしすぎる!!)


 皆、聞こえずとも心の中は同じ気持ちであった。


「ハッ、ハイッ! えーはい、すぐにお調べします……え、え」


 ここにいる者は理事長が怖いのだ。随分慌てた様子で、事務局担当者はパラパラと名簿ファイルをめくり探す。


「少々、お待ちくだ……さ……」

 顔色が変わる担当者。驚き、動揺し始めた。


「んっ? 何だ、どうした?」

 黙る担当者に、怪訝な表情を向ける理事長。


「あっ、いえいえいえ!! その〜……」

 とても言いにくそうに、口籠っている。


「なんだ?! 気持ちの悪い態度を取るなっ! 早く言わないか」


 少し怒った様子で詰め寄ると、恐ろしい形相になっていく。


 はっはい! と、担当者は話し始めた。恐怖で震える手に持つ名簿を、落とさないようにと必死に抱えながら。


「こ、この生徒ですが、あの、一般クラスの……民間人の生徒です」

 

 まさか、()()()()の興味を惹いた生徒が、民間人である『一般生徒』だとは、とても言いにくそうに伝えていた。


「ほぉ~……」


 気に触ったのではないか? このまま何かが起こるのではないか? 固唾をのんで見守る交流会担当者たち。


「は、あ、理事長様!! 申し訳あ……」


 とりあえず謝っておこうと口を開くが、すぐに遮られ重い空気が流れる。


「一般クラス生徒にしては、珍しい魔力? いや魔法の持ち主だ。名は?」


 理事長は、詰め寄った体制を直すと、少し()()そうに、顎に手を当てながら言葉を返す。


「はい! 名簿には――【()()()()()()=三日月】と書いてあります」


「“セレネ……”はぁ~!! なるほどねぇ、フフッ」


(((う、うわ~恐ろしい含み笑いがぁ)))


 背筋が凍るほどの不気味な笑みを浮かべる理事長。そばにいた(みな)が恐怖を感じる。


――このままでは危険だ!


 そう思った担当者の一人が、勇気を出し恐る恐る声をかけた。


「あ、あのぉ〜、理事長?」


 すると一瞬で、我に返り何事もなかったかのように、いつもの余裕で品のある表情に戻る。それを見た周りにいる全員がホッと、胸を撫でおろした。


「あ~いや、気にしないでくれ。手数をかけたな、ご苦労」


 薄笑いで返事をすると、手に持っていた白いティーカップをソーサーに戻した。


「い、い、いいえ!! 私にはもったいない(ねぎら)いのお言葉。ありがとうございます」


 担当者はとても、とても丁寧に。そして深々と、お辞儀をする。


――まさか? とは思っていたが。


「ついに見つけた。私はこの未来(とき)をずっと待っていた」


 理事長は口元を緩め、ニヤリ。



(まぁ、まずはユイリアに勝てるかどうか。話はそれからだが)


「お手並み拝見と、いこうじゃないか」


 理事長は、小さな声でボソッと呟いた。


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