28 文化交流会2日目~護衛~
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♪こちらのお話は、読了時間:約5分です♪
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「えっ? お客様……ですか?」
(私、いてもいいのかな?)
――ガチャッ。
ゆっくりと、扉が開いた。
そして私は、お目めまんまるで、驚きを隠せなかった。
「さてさて、月さん。またまたご紹介しますね♪ 本日、あなたが参加なさる大会の会場まで、あなたの護衛を務めてもらう、【星守空】君です」
えっ、 どうして?!
「星様……?!」
「こんにちは、月」
「おやおや? 彼とはお知り合いでしたか?」
「あ、あの、はい。ラウルド様との騒動の際に、助けて下さいまして」
「あぁ~なるほど! それで、なのですね」
何やら、ラフィール先生が、含みのある言い方をしているのが、私はとても気になった。すると、先生はニコッと笑いながら、茶化した口調で星様に話しかける。
「いや~そうだったのですねぇ。セルク君、いつもは依頼内容を細かく聞いて、検討なさる時もあるというのに。何故か今回、お名前と要件を言っただけで、二つ返事でこの護衛をOKしてくれたので、どうしてかなぁ? と不思議に思っていたのですが……。それはそれは! お相手が、月さんだったから、ですネ~??」
先生の言葉を聞いた星様は、少し不機嫌そうに答えた。
「違います。私でお力になれるのであれば、どのような状況でも、可能な限りお受け致します。先生からのご依頼ですので」
何だろう、ちょっとだけむきになっている。揶揄われた事が、気に入らない! というような、その怒った感? あまり見た事のない星様の表情が、子供みたいだ。
「ウッフフフッフ!」
あっ、笑ってしまった……。
「いえ、あの、ごめんなさい! えーと、ふふ。でもやっぱり、何だかちょっぴり。うふっ、ダメだぁ! 可笑しくってぇ~」
「ちょっと、月まで、そんな!」
頬を少し赤らめて恥ずかしそうにしている。星様って、いつもクールな感じだから、本当に新鮮な感じ。
「ご、ごめん~……フフッ!」
一緒になって笑っていたラフィール先生が、さてさて、と仕切りなおす。
「はいは~い♪ まぁまぁまぁまッ! でも、良かったですよ。私は本当に安心、安心ですよ~」
そう言うと、先生は星様の頭をくしゃくしゃナデナデして「ご機嫌直して~♡」と言って、私の方を見た。
「月さんも、知らない方に護られるのは、お嫌だったでしょうし。お二人がお友達という事で、問題ないですねっ!」
(何故か、とても嬉しそうですネ?)
そう、先生は私の性格を良くご存じで。慣れない方との会話は、まだまだ苦手だから。今は特に「初めまして」というのは、極力避けたかった。
あっ、あと、そうそう。そうだった!
――私の“護衛”とは? そもそもどういうことなのかしら?
「えっと? ラフィール先生、その“護衛”というのは……?」
すると先生は突然、大好きな“飛躍魔法”を使い浮いた。舞うように、ふわふわしながら楽しそうに。
「あらあら、お伝えしていませんでした? 私ったら、ごめんなさ~い?」
ウソっぽい。
明らかに、笑みを浮かべている。
きっと、護衛だなんて言ったら、私が「大丈夫です!」と、全力で断って走り去るって分かっていて、敢えて言わなかったのだろう。
(ラフィール先生、かなり過保護ですよぉ)
でも……。
――そこまで心配して下さるなんて、ちょっと嬉しい。
「んっ? でも、どうやって」
私が相談に来たのは、ほんの一時間程前。先生はずっと目の前にいて、どこかに行った様子はなかった。だとしたら、何時、どうやって?
――星様に『護衛依頼』の連絡をしたのだろう。
あぁ~。今日は、此処に来てからと言うもの、謎が多すぎてついていけない。
「さてさて、お話も終わった事ですし、気を取り直してっ♪」
そう、ラフィール先生は陽気に話しながら、私たちに近づいてきた。
「ではでは~、お二人とも、目を閉じてください」
また、何か企んでいる?! 怪しい! と、疑いの目でじーーーっと、先生を見つめる。
「もぉ、月さんたら~、大丈夫ですよッ! 悪いようにはしませんから♡」
「本当ですかぁ?」
うんうん、と頷く先生を信じて、星様も、私も、目を閉じた。すると、目を閉じていても分かるくらいに、眩しい光が目の前に起こる。
ぱぁぁっ!!!!!
「さぁ~、目を開けていいですよぉ♪」
ラフィール先生の優しい声を合図に、目を開けると。
「わぁぁぁ♡」
目の前には、先程とは全く違う光景があった。
見ただけで分かる、フカフカのソファに、おしゃれで真っ白なテーブル。その上には、淡い緑色の生地に金色の糸で、猫が刺繡された、テーブルクロスが敷かれていた。
「さぁ、お疲れでしょう? 午前中のティータイムにしましょう♪ ちょうど十一時になりますので――イレブンジスティーですねぇ」
先生の手のひらが案内した、お部屋の窓近くにある置き時計は、ちょっと不思議で、とっても綺麗。
『金の砂』がキラキラと、ガラスの瓶の中を自由に舞っていて、それで多分動いている。窓から差し込む光に反応して、砂の輝きが増す。
(こんなに美しい時計、見たことがない!)
先生が魔法で作った、オリジナルの時計なのだろうと思った。
その時計に見とれていると「月さん、お茶にしますよ~こちらへいらっしゃい」と呼ばれた。
「はい、ありがとうござ……」
返事の途中で、言葉が出なくなった。あまりに慣れない高級感のあるお茶会に。
「どぉ~ぞ~」と言われ、フカフカソファにちょこんと座った。ん? 座りましたよ? でも、このソファは、まるで!
「浮いてるみたいで、心地良すぎです!!」
「そうですか? それは良かったです」
先生がにこやかに答えて下さった。そして、隣に座った星様も、無邪気に喜ぶ私を見て、優しくて、落ち着くいつもの声で、「良かったね。」と微笑んでくれた。
そして、先生お手製のクッキーと、ダージリンティーが運ばれてきた。ラフィール先生の手作りお菓子に高級お紅茶。
(私みたいな一般生徒が、頂いて良い訳がないのに!!)
「贅沢すぎて……何だか申し訳ないです」
はぅ~。また心の声が……。
この後、先生と星様、お二人にクスッと笑われたことは、言うまでもない。




