27 文化交流会2日目~妖精の声~
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♪こちらのお話は、読了時間:約5分です♪
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コンコン、コンコン。
先生とのお話が終わってすぐに、扉を叩く音がした。
すると「時間通りですね~」と、先生が呟いた。
「どうぞ、お入りなさい」
扉が開くと、雪のように真っ白な肌の可愛らしい女の子が立っていた。
(わたしと同じくらいの歳かな?)
淡いベビーピンクのくるぶしまである長い髪。その美しい髪は、風になびくと不思議な色に変化して、キラキラと金色に輝いて見える。
「ほわぁ……かぁ、可愛い~」
私は、思わず見とれてしまった。
(ハッ、また思ってることが口から出てしまったぁ!)
恥ずかしい私は両手で口を押さえながら、うぅぅ~と言っていると、彼女と目が合った。
澄んだ瞳、透けちゃいそうなくらい。まるでガラスのようだなぁ……そんなことを思いながら見つめていると、にっこりと微笑んでくれた。
(か、か、カワイイ~!)
すると頬を赤くしている私を見た先生が、クスクスッと笑って話し始めた。
「月さん、ご紹介します。この子の名は【バスティアート】。ぜひ、仲良くしてあげて下さい」
「あっ、はい、もちろんです! バスティアートさん、私は三日月と申します。月とお呼びください」
「…………」
(あ、あれ? なにか気に障った? 嫌だった??)
でもすっごい笑顔。ニコニコしてくれている。
私が不思議そうにしていると、ラフィール先生が何かに気付いたかのように話す。
「そうか。月さん、君は……」
「えっ?」
「あ~、いえいえ。ところで月さんは、私のお部屋で遊んでくれている精霊たちの姿形は見えていますか?」
とても真面目な表情で聞かれた。
「あっ、はい! み……えてますよぉ」
それはもうたくさん、た~くさん! の精霊さんたちが見える。そう『愛に包まれた、幸せいっぱいの光』の中で、遊んでいるのが。
始めは私が相談をして、先生が考え事をしているときに気が付いて。でも、私自身の能力集中で、いつもよりたくさん見えているのだと思っていた。
しかし相談も終わり、和やかに話している間もずっと見えている。それもたくさん! すごく楽しそうに、ふわふわと浮かんでいる。
これは間違いなくこのお部屋に、ラフィール先生に集まってきている! と思った。
私も幼い頃から、精霊さんたちとはずっと一緒に過ごしてきたけれど、こんなにたくさんの精霊さんが見えたこと……というよりも、一人に、一つの場所に。こんな数で好んで集まってきているのを見たことがなく、あの瞬間は本当に驚いた。
そして「見えています」と答えた私に、先生は優しく教えてくれた。
「あなたの能力はとても高い。しかし魔力をコントロールするための【鍵】魔法の影響で、恐らく能力にも影響が出ているのだと思います。だから必要以上の能力は意識しないと使えなくなっている。それで、そばに来てくれている精霊を感じるのが遅くなったり、声を聞けなかったりしたのではないかと」
ラフィール先生に言われて、思い当たる出来事がいくつかあった。
「はい、そうかもしれません」
分かってた。きっと心の奥では感じてた。
精霊さんがいなくなる瞬間があったり、能力が急に落ちたり……それはただ、調子が悪いだけだと自分に言い聞かせて、考えないようにしていた。現実を知るのが怖かっただけかもしれない。
今まで逃げてきたことを色々と思い出し落ち込んでいると、バスティアートさんがそばで手を優しく握ってくれた。
(あれ? 何だろう、この気持ち)
その手はとっても温かくて、私の不安な心を取り除いてくれているようだった。
(そうだ! 初めて会ったのに、触れられても怖くない)
そう気付き、自分で自分に驚いていた。
信頼とかそういうのじゃなくて、ただただ自然にバスティアートさんの手を受け入れていたからだ。
「ほぅ……やはり、すごいですねぇ」
「えっ?」という反応をした私に、また少し悪戯な顔で、笑う先生。
でも本当にすごいことなのです。だってまだ今も手を握ったままで、怖いどころか心地良くて。
――何より昔から知ってるような、この安心感。
(バスティアートさんて、一体?!)
ぜひ、理由を教えてもらいたい! という顔を先生に向けると、いいですよ~と言わんばかりの笑顔で、驚きの事実を話してくれた。
「この子には、実は秘密があるのですヨ」
そう言うと先生は、入口の方に手をかざした。するとバスティアートさんは光に包まれ、いなくなった。
「えっ、えぇぇ?! どういうことですか?」
「あの子は、私と一緒にいたいと願ってくれた【精霊】です。そして契約を交わして人の姿になった【妖精】なのですよ」
「お、驚きました。あっ! だから私は、バスティアートさんのことが」
――怖くないのは、彼女が精霊(妖精)だからだったんだ。
「そういうことですっ♪」
頬に右手人差し指を当てて、茶目っ気たっぷりで笑い、ラフィール先生は楽しそうにお話を続けた。
「私の部屋の入口にある水晶猫ですが。いつもあの中でティア(バスティアート)が、光の姿に変化してこの部屋を守ってくれています。この部屋には、私の癒し能力の根源とも言える、精霊たちがたくさんいますからね! 外部からの無断侵入は固~くお断りしているのです!」
あははっ。サラッとすごいことをたくさん言って下さってますが、やっと頭と心の理解を、追いつかせている私です。
「月さん、あなたは希少な存在です。ティアのような精霊を、形にする能力を持っていますから」
「いえ! 私はこのままだと。そんな大きなことは」
――本当は自信がないだけ。甘えているだけで、進むのが怖いだけ。
「向き合いなさい」
ラフィール先生の深い声が心に響いた。いつもとは違う命令にも近い、声。
「おっしゃる通りです。そう私は、自分の過去と記憶と向き合う力を持つ為に、この学園に来ました。そして母に認めてもらえるように……いつか【鍵】を解いてもらえるようにと!」
――がんばらなくちゃ!
私の決意を見て、先生はニコッと微笑んだ。そして急にお部屋の扉を開け、こちらを向いた。
「さぁ、お客様が来たようです」
そのお客様を見て、私はまた驚くのだった。
お読みいただきありがとうございます。




