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26 文化交流会2日目~三つの【信】~

お読みいただきありがとうございます(・▽・♡)

♪こちらのお話は、読了時間:約5分です♪


(Wordcount2470)


 ラフィール先生は真っ直ぐ、私の瞳を見つめて言った。


「あなたが此処へ、相談にいらっしゃるという事は、()()()なのでしょう」


 そう言われて、心臓がドクッとした。何だろう、この感覚。怖い訳じゃないのに、ちゃんとお話したいのに、声が……言葉が出てこない。


(どうやって、気持ちを話せばいいの?)


 色々と、考えていたはずなのに。順を追って説明とか、結局出来ない!


 私の頭の中には、魔力のコントロールという言葉ばかりが浮かんでくる。たぶん一番伝えたい悩みが、それなのだろう。

 人に悩みを相談するどころか、自分の事ですら、ほとんど話す事がない私は「まず、何て言って始めたらいいんだっけ?」と、相談をする前から、早くも混乱しそうになっていた。


 すると、困っている私の気持ちを察したのか、ラフィール先生は、真剣な表情を崩して、また、微笑みながら話してくれる。


(本当に、お優しい方です)


「月さん、“私の声”をよく聞いて下さい。まず、きっかけは何だったのか? その事で、今どうしてそんなに苦しいのか? 今後どのような問題が起こりそうなのか? 思っている事をそのまま教えてください……ねっ?」


「は、はい」


 声? そういえば、気持ちが楽になってきたかも……でも。それでも、なかなか言葉にならない心の中の気持ち。


 すると再度、先生は()()()()()のように私の心の中に、その【声】を響かせる。


「言葉を選ぶ必要はないのですよ。大丈夫、心配ありません。順序も気にしなくていい、悩みさえ解決できれば、それで良いのですから。あなたがどのように話をしても、全てを受け止めます」


(あれ? 心が穏やかに、ふわふわって……)


――心が軽くなった気がする。


「ありがとうございます。実は……」


 私は、ラウルド様の件から、これまでの事を簡単に説明した後、今日の大会に出る事、そうなってしまった経緯を話した。そして、魔力のコントロールについて自信がなく、どこまで力を抑えればいいのか。解らずに悩んでいる、感じている気持ちを、正直に伝えた。


 その私の話をただじっと、静かに聴いて下さっていた。


 そしてしばらくすると、先生は口を開いた。


「う~ん、そうですか」


 そう言ったラフィール先生は目を閉じて手を組み、机に肘を置いた。考え込んでいるようにも見える。やっぱりご迷惑になったのでは? と、不安が過ぎる。


 その無言の時間に私が感じていたのは、何の力も感じない【無】の状態。


 ずっと先生の考える顔を見つめていたけれど。私自身、息を止めているように苦しくなってきた。この何もない状態が逆に心への圧になってくるようで、今は空気が重くて息苦しい。


 あまりの重圧に集中していた気を逸らしてしまい、お部屋の中を見渡した。


 すると。


(ほやぁー……なに、これは?)


 突然、視界に広がった光景!


 ラフィール先生のお部屋の中で見えてきたのは、たくさんの精霊さんたちだった。幸せそうに、そして楽しそうに遊びまわっていた。


 愛に包まれた、幸せいっぱいの光。たぶん今の私に、こんなにたくさんの精霊さんが見えてきた理由。


 それはきっと、先生に集中していた自分の強い能力のまま、お部屋に意識を向けたからだと思う。瞬間の切り替えが上手くいかず、過剰に力を使っていたからだろう。 


(驚いたぁ……こんなにたくさんの精霊に囲まれている人、逢った事がない!)


 そんな事を考えていると、真剣な表情だったラフィール先生がふふっと笑いながら目を開けた。そして、ほやぁ〜っとしていた私と目が合った。


(あっ、先生の集中の邪魔しちゃった?!)


「ふふっ、そうですね。月さん、これはあなたにとって本当に重要な事です。よく相談に来てくれましたね」


「いえ、私は」


(私はただ、魔法をコントロール出来ずに全力で使ってしまうのではないか? また人に迷惑をかけてしまうではないか? と、不安だったから)


「結論から申し上げましょう。月さん――【(key)】の使用を許可します。ただし、レベルⅡまで……に、しておきましょうか」


「えっ?!」


 私は信じられない思いで何度も瞬きをする程、驚いてしまった。


「ご不満ですか?」


 ラフィール先生が少し首をかしげて聞いてくる。その表情を見た私は慌てて「いえいえいえっ!」と、一生懸命に両手を振って否定した。


 先生はそんな私の姿を見て、クスクスと小さく笑い、お話を続ける。


「私が魔法指導を始めて一年三ヵ月。どのような状況であろうと、あなたを甘やかした時間はただの一度もありません」


(ハイ、身に染みております)


「あなたはもう十分、自分をコントロールする力を持っています。自信を持って」


「……はい」


 私は作り笑いのまま、まだ不安だという顔で返事をしてしまう。するとラフィール先生は少し溜息をつき、言葉を追加した。


「いつも一緒に訓練をしている私が『あなたを認めている』のです。それとも、この私の言葉が信用なりませんか?」


「いえ! そんな事は決してありません!」


 それを聞いた先生はにっこりと笑って、ちょっと悪戯な表情に戻る。


「デスヨネ! だーいじょうぶですよぉ月さん♪ 内気なあなたが、やっと表に出る大会……そうそう! せっかくの()()()()なのですから! 見に行かせていただきますよ~ん」


 真剣にお話していると思ったら、すぐにお茶目さんモードに入るラフィール先生。


(うぅ、悔しいけれど。私はとても信頼しています)


「安心なさい。私の責任において、あなたの力が暴走した場合はちゃんと、止めに入ります」


 またすぐに、空気が変わった。


(心強いお言葉で、すごくホッとします)


「ありがとうございます! 先生にご相談出来て、本当に良かったです」


「そうですか! それはそれは、良かった良かった♪」


――そうだ! 自信を持って、自分を“信じて”。


「ラフィール先生。私、頑張ります!」


「いいですねぇ、その意気その意気~」


 先生はいつも寛容で、前向きに頑張ろうとする心を褒めて伸ばし、育ててくれる。何かをやり遂げようとする人をとても応援してくれる方だなぁと、改めて思った。


「そういえば……」


(心が穏やかに、ふわふわってなったのは。先生の魔力込み? の【声】のおかげだったのかな?)


いつもお読みいただきありがとうございます☆


次話で、【(key)】のご説明書きます♪ φ(..)

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