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必話02 消したい記憶 (事件)

今回は、主人公のトラウマについてのお話です(。u.u。)


お読みいただきありがとうございます☆

♪こちらのお話は、読了時間:約6分です♪


(Wordcount2530)


 私の力は、普通に使うと大変……。

 いや過去、大変なことになったのだ。


「幼い頃の記憶(トラウマ)の原因は、この強さのせいだから……」





 ルナガディア王国の中心の都、その周りの一つに位置する美しい光の森【キラリ】。ここは三日月(みかづき)が生まれ育ち、十三歳まで過ごした場所である。


『月の御加護』を受けた奇跡の子と言われ大切に護られながら育つ。しかしその能力や魔力、どれだけの(パワー)があるのかは分かっておらず、未知数とされていた。


 森の中でその強大な力となる可能性を知る者は、一部の関係者のみ。その『力の存在』の意味を認識する誰もが、三日月に期待と希望ある未来を夢見ていたのだった。


 キラリの森で守人(もりと)の役目を担うのは、上級魔法師の【望月(もちづき)】――三日月の母である。その愛ある厳しい指導により、わずか三歳で精霊との会話や、全属性の簡単な魔法を習得する。そして四歳になる頃、自己流の治癒魔法までも開発してしまう程の力を発揮した。しかし当の本人はまるで、遊びの延長のように楽しく力をつけていった。


 その時、一緒に訓練を受け学んでいたのがメルルとティルである。二人は三日月が生まれた時から傍に寄り添い、同じ屋根の下で暮らしてきた。今ではもう家族同然だ(いつも三日月が言うメル・ティルとは、二人を呼ぶ時の愛称として付けたものである)。



 森の皆に大切にされ愛されて育っていく三日月。その楽しく穏やかな日々を送っていた、ある日のこと。


 三日月の母、キラリの守人である望月が、森近くで不穏な動きをする生き物を察知した。


「何か、良くないことが起こる気配がするわ」


 そう言うと望月は青ざめた表情で、寒気を感じ上着を羽織った。


「承知した、森の警戒を強めよう。応援も要請しておく」


 そう答えたのは、王国の騎士でもある三日月の父【雷伊都(ライト)】。



――この時に感じた望月の予感は、ライトが王国に応援を要請依頼する前。予想をはるかに超える速さで、的中してしまうのだった。



 ライトは応援要請のため、中心の都へ向かい不在。せっかく中心の都まで行くので三日月の誕生日プレゼントを買って帰る約束をして、朝から出かけていった。

 夕方には帰る予定だったが、この日は天候不良もあり雨の中の移動。予定よりも少し帰りが遅くなっていた。



――そして事件は、ライトが戻る少し前に起こってしまう。



 三日月が五歳の誕生日を迎える日(七月七日)の前日、六日の夜に事件は起こった。


「望月様ぁ~、た、大変です! 月様が」


 三日月の家近くで、見張り役として望月に仕える剣術師【ロゼ】が、血相を変えて駆け込んできた。


「申し訳ありません、何者かが、うぅぐぅっ……」


 腕の立つあの剣術師ロゼが、膝をつくほどの酷い怪我をしている。


「ロゼ、どうしたというの?! その傷はまさか……大丈夫なの?」


「私は大丈夫、それより望月様! 何者かが侵入、襲ってきたのです。数人で戦っておりますが、我々で(かな)う相手ではない。お早く……お急ぎください! 月様の元へ」


「――そんな!?」


(こんなに早く、なんてことなの! 気配を感じながら侵入に気付けなかった……こんな事になるなんて)


 望月は不穏な動きに気付きながらも、自分の行動が遅れた事を後悔し、悪い考えばかりが()ぎっていた。


「月! 三日月ッ!!」


 倒れている我が愛娘を見つけると、望月は抱きしめすぐに鼓動を確認した。


「「「望月様!!」」」


「……だ、大丈夫よ。よかった、気を失っているだけだわ」


 ひとまず安堵した望月は、すぐに“母”の顔から“守人”である自分に気持ちを切り替えた。


「皆さん、無事ですか!?」


「大丈夫でございます! 実は、ロゼが望月様の元へ報告へ向かってすぐに、この方々が現れ助けて下さいまして……」


 そこには、身なりのしっかりした旅の者が五人、そしてその中心で守られるように顔を隠した男の子が一人、立っていた。


「旅の途中で近くを通りがかり、襲いかかっていたのが【悪】の気配でしたので。つい手が出てしまいました」


 旅人の一人が、何があったのか簡潔に状況を話した。


「あ、いえ。とても助かりました。あなた方は、皆の命の恩人です。感謝致します」


 そのすぐ後に、ライトと応援に連れてきた数人の騎士が帰宅した。


 助けてくれた旅の者たちの協力を得て、詳しく状況を聞いた後、周辺の調査や対策をすることとなった。





 私の記憶は少し曖昧で、パニックで覚えていない部分も多くある。


 後で聞いた話で【悪】と呼ばれる敵たちが狙っていたのは、私の髪とその存在そのものだったらしい。


 珍しい“ホワイトブロンド”の髪色。そして、どこから情報が漏れたのか? 私の存在を知った者たちが、その力欲しさに襲ってきたのだという。


 しかし連れ去られそうになった瞬間、私がありったけの魔法を一人の悪人にぶつけてしまったらしいのだ。


 幼い私は襲われたその瞬間、どうすればいいのかが判断できずに、自分の身を守る行動として自分の持つ魔力のほぼ全開放をしてしまった。

 相手になった悪人の一人は、そのまま他時空に飛ばされ、しばらくの間帰ってこれずに訳の分からない空間で、漂っていたという。


 いくら悪人でも、そんなところに飛ばしてしまったままだと空間の歪みに関係してくる。そのすぐ後に、こちらの空間に引き戻し捕まったそうなので、ホッとひと安心をした。


 この事件がきっかけで、より厳しい護りが森全体に張られたという。





「「三日月~♪ 五歳のお誕生日おめでとう!」」


 パチパチパチ♪


「あ、ありがとうございましゅ……」


 無事に五歳の誕生日を迎えた、七月七日の夜に。


 森の皆はもちろんのこと、なぜか初めて会う旅の者たちや王宮から応援に来たという強そうな騎士たちに囲まれ、誕生日を祝ってもらった。


 怖い思いをしたが、たくさんの人たちの愛を受け、三日月五歳の誕生日は楽しい思い出となった。


「でも、事件があってからの私は」


 自身の心が信頼できると判断した者以外から、触れられることが怖くなり、またあんなに好きだった魔法も、コントロールが上手くできなくなってしまった。


 そして。


――消したい記憶(トラウマ)? しかし必要かもしれない記憶(キオク)


 人並みならぬ力(能力・魔力)の証である月の紋章を持つ三日月は、今後その力を狙う者が現れぬようにと。その力、浮かぶ紋章。そして。三日月の存在すら。静かに隠されたのだった。


いつもお読みいただきありがとうございます(o_ _)o))

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