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23 文化交流会1日目~終わりに~

お読みいただきありがとうございます(*uωu*)

♪こちらのお話は、読了時間:約5分です♪


(Wordcount2300)


 ユイリア様との勝負を受けることになった私。

メイリ様に、参加予定の大会についての説明を聞き、ひとまず今日のところは、ご挨拶をして、お別れをした。


「では月様、明日はよろしくお願い致します。ユイリア様には私からお伝えしておきますので」

 メイリ様、お会いしたばかりの時からは想像もつかないほど、柔らかい表情になった。にっこり笑顔でとても嬉しそう。


「え、あっ、承知しました」


「良かったです。この度は本当にありがとうございました、感謝致します! ではまた明日」


「は、はい。また、明日」


――とは、いったものの。


 私は悩んでいた。実は魔法を使うのがあまり好きではない。

 なぜかというと、私は“魔力コントロール”がとても苦手で、安定しない。そのため両親には魔法を無暗(むやみ)に使用することを、止められている(正しくは、魔法を使う際の制限をかけてもらっている、というところでしょうか)。


 授業ではロイズ先生の指示で、別メニューの講義がある。上級魔法能力をお持ちの【ラフィール先生】がついて、訓練をしてくれる(先生はとっても優しくて、生徒の間では密かに『癒しの神』と呼ばれている! 回復魔法を使うことが出来て、相手が気付かないうちに魔力や体力の回復をしてくださる、すごーい、すっごーい先生です)。


 私の魔力はというと、能力に続いて通常よりもかなり高い(一部の関係者にのみ、公表されていることなので、自分の魔力・能力については周りに言わないように! と厳しく指導されています)。

 そのため、私の授業は、力を伸ばす訓練ではなく、力を()()()()()()()()()()()()()の訓練、なのです。


――私の力は、普通に使うと大変。いや過去に、大変なことになったのだ。


 幼い頃の記憶(トラウマ)の原因は、自分のこの強さのせいで。だからこそ、この学園でなんとか魔力コントロールを完璧にマスターして、自分の記憶に向き合いたい。


 そして何とかして乗り越えたい、克服したいと、今は強く、強くそう思っている。


 たくさん訓練してきた。入学当初に比べたら十分に魔力コントロール出来る様になった。


「でも……」


 昔の記憶が原因なのか? やはり、不安は残る。


 まだ、魔法を使うのは怖い。しかし幸いな事に、文化交流会での大会は全て、敵に見立てたレプリカに攻撃する。先生たちの作った、魔法壁などが主である。


 どの大会も、参加者の周りは必ず“守りの魔法線”が張られ、観客への配慮もバッチリなのだ。


「あとは自分の力を、信じられるかどうか」


 ぼそっと、小さく呟いた。


「さて~! 俺たちまだ大会見て回るんだが、月はどうするよ?」


「どうするる~ん?」「くるくる回るよぉ♪」


 太陽君たちはすごいなぁ、元気いっぱい。


「私、少し休んで帰る」


「そうか? じゃあまた明日、気を付けて帰れよ~」


「うん、ありがとう」


「「たいよ-にゃんにゃーん♪ ジュース飲みたぁーい!」」


「にゃんは、やめーいッ!」


 じゃあね~、と手を振って、歩き出してすぐにまた、太陽君が一言。


「あっ!!」と言うので、私は、振り返って「えっ? どしたの~?」と聞く。


「三日月、あまり考えすぎるなよ! 気負うな気負うな〜」


「エヘヘ……」


 私の緊張を感じ取ったのか、笑いながらそう言ってくれた。


 太陽君はいつもそうだ、気付かないふりして、人の感情の変化や、周りをよく見ている。


(鋭い“観察眼”ってやつです!! うん、きっと)


「ありがと! それじゃまた明日ね〜」


 改めて手を振り、私は学園内に作られた花のお散歩コースを歩くことにした。この日のために生徒が頑張ってデザインして作り上げたという、素晴らしい花園。


「わぁ……すっごく綺麗」


 そういえば、中央広場での打ち合わせで、ラウルド様にお誘いを受けた日。


あの日「交流会の花飾り準備をしている」と、星様が言っていた事を思い出した。


「ここも、星様たちが作ったのかな? 素敵♪ もうずっと此処にいたいなぁ」


「ずっと、いてもいいよ」


(えっ? まさかとは思うけど、この声)


「ほ、星様!?」


「やぁ、ようこそ僕らの『フラワーガーデン』へ♪」


 何故だろう? 今、花園(ここ)で彼に会えたことが、とても嬉しくてホッと安心してしまう。


「星様……」


「うん、どうしたの? 大丈夫かな、具合でも悪い?」


 ハッ! と我に返った。私は、深い蒼色の彼の瞳に、またまた吸い込まれてしまいそうになっていた。


「いえいえ、何でもないのです! とっても元気ですよぉ。ここのお花、とても綺麗ですね〜見入ってしまいます」


「お褒めいただき光栄です、()()()


 そう言いながら彼は、悪戯な笑みを浮かべ、左手を前に当ててお辞儀をした。


「えぇ! 星様、揶揄うのはやめて下さい」


「ふっふふふ」


 彼が、いつも以上に笑って楽しそうなのを見ると、私はまた自分の心の凍った部分が溶けるような、そんな不思議な感覚を感じながら、一緒に笑った。


――彼が今この瞬間、此処にいてくれて良かった。


(あんなに一人でいる事が好きだった私が、こんな風に思えるなんて)


 明日の大会の事ばかり考え緊張していた私は、この花園で彼とお散歩して、いつの間にか落ち着いていった。


 どれくらい歩いただろう。彼と話していると、笑顔が絶えなくて、いつも時間があっという間に過ぎていく。とても穏やかな、優しい気持ちになれる。


「少し、暑くなってきましたね」


「そう? では、近くの木陰で一緒に休もうか? きっと涼しい風が吹いてくると思うよ」


 ニコッと笑いかけてくれる。その笑顔に、私も答え、笑顔になる。


(終わり良ければって、よく言うけれど)


 色々と大変だった文化交流会一日目は、最後こんなに素敵な花園(フラワーガーデン)に勇気づけられ、穏やかな気持ちで終わることが出来た。


「星様のおかげです」


 三日月は聞こえないくらい小さな声で、そう呟いた。


お読みいただきありがとうございます♪

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