23 文化交流会1日目~終わりに~
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ユイリア様との勝負を受けることになった私。
メイリ様に、参加予定の大会についての説明を聞き、ひとまず今日のところは、ご挨拶をして、お別れをした。
「では月様、明日はよろしくお願い致します。ユイリア様には私からお伝えしておきますので」
メイリ様、お会いしたばかりの時からは想像もつかないほど、柔らかい表情になった。にっこり笑顔でとても嬉しそう。
「え、あっ、承知しました」
「良かったです。この度は本当にありがとうございました、感謝致します! ではまた明日」
「は、はい。また、明日」
――とは、いったものの。
私は悩んでいた。実は魔法を使うのがあまり好きではない。
なぜかというと、私は“魔力コントロール”がとても苦手で、安定しない。そのため両親には魔法を無暗に使用することを、止められている(正しくは、魔法を使う際の制限をかけてもらっている、というところでしょうか)。
授業ではロイズ先生の指示で、別メニューの講義がある。上級魔法能力をお持ちの【ラフィール先生】がついて、訓練をしてくれる(先生はとっても優しくて、生徒の間では密かに『癒しの神』と呼ばれている! 回復魔法を使うことが出来て、相手が気付かないうちに魔力や体力の回復をしてくださる、すごーい、すっごーい先生です)。
私の魔力はというと、能力に続いて通常よりもかなり高い(一部の関係者にのみ、公表されていることなので、自分の魔力・能力については周りに言わないように! と厳しく指導されています)。
そのため、私の授業は、力を伸ばす訓練ではなく、力を出し過ぎないようにするための訓練、なのです。
――私の力は、普通に使うと大変。いや過去に、大変なことになったのだ。
幼い頃の記憶の原因は、自分のこの強さのせいで。だからこそ、この学園でなんとか魔力コントロールを完璧にマスターして、自分の記憶に向き合いたい。
そして何とかして乗り越えたい、克服したいと、今は強く、強くそう思っている。
たくさん訓練してきた。入学当初に比べたら十分に魔力コントロール出来る様になった。
「でも……」
昔の記憶が原因なのか? やはり、不安は残る。
まだ、魔法を使うのは怖い。しかし幸いな事に、文化交流会での大会は全て、敵に見立てたレプリカに攻撃する。先生たちの作った、魔法壁などが主である。
どの大会も、参加者の周りは必ず“守りの魔法線”が張られ、観客への配慮もバッチリなのだ。
「あとは自分の力を、信じられるかどうか」
ぼそっと、小さく呟いた。
「さて~! 俺たちまだ大会見て回るんだが、月はどうするよ?」
「どうするる~ん?」「くるくる回るよぉ♪」
太陽君たちはすごいなぁ、元気いっぱい。
「私、少し休んで帰る」
「そうか? じゃあまた明日、気を付けて帰れよ~」
「うん、ありがとう」
「「たいよ-にゃんにゃーん♪ ジュース飲みたぁーい!」」
「にゃんは、やめーいッ!」
じゃあね~、と手を振って、歩き出してすぐにまた、太陽君が一言。
「あっ!!」と言うので、私は、振り返って「えっ? どしたの~?」と聞く。
「三日月、あまり考えすぎるなよ! 気負うな気負うな〜」
「エヘヘ……」
私の緊張を感じ取ったのか、笑いながらそう言ってくれた。
太陽君はいつもそうだ、気付かないふりして、人の感情の変化や、周りをよく見ている。
(鋭い“観察眼”ってやつです!! うん、きっと)
「ありがと! それじゃまた明日ね〜」
改めて手を振り、私は学園内に作られた花のお散歩コースを歩くことにした。この日のために生徒が頑張ってデザインして作り上げたという、素晴らしい花園。
「わぁ……すっごく綺麗」
そういえば、中央広場での打ち合わせで、ラウルド様にお誘いを受けた日。
あの日「交流会の花飾り準備をしている」と、星様が言っていた事を思い出した。
「ここも、星様たちが作ったのかな? 素敵♪ もうずっと此処にいたいなぁ」
「ずっと、いてもいいよ」
(えっ? まさかとは思うけど、この声)
「ほ、星様!?」
「やぁ、ようこそ僕らの『フラワーガーデン』へ♪」
何故だろう? 今、花園で彼に会えたことが、とても嬉しくてホッと安心してしまう。
「星様……」
「うん、どうしたの? 大丈夫かな、具合でも悪い?」
ハッ! と我に返った。私は、深い蒼色の彼の瞳に、またまた吸い込まれてしまいそうになっていた。
「いえいえ、何でもないのです! とっても元気ですよぉ。ここのお花、とても綺麗ですね〜見入ってしまいます」
「お褒めいただき光栄です、お姫様」
そう言いながら彼は、悪戯な笑みを浮かべ、左手を前に当ててお辞儀をした。
「えぇ! 星様、揶揄うのはやめて下さい」
「ふっふふふ」
彼が、いつも以上に笑って楽しそうなのを見ると、私はまた自分の心の凍った部分が溶けるような、そんな不思議な感覚を感じながら、一緒に笑った。
――彼が今この瞬間、此処にいてくれて良かった。
(あんなに一人でいる事が好きだった私が、こんな風に思えるなんて)
明日の大会の事ばかり考え緊張していた私は、この花園で彼とお散歩して、いつの間にか落ち着いていった。
どれくらい歩いただろう。彼と話していると、笑顔が絶えなくて、いつも時間があっという間に過ぎていく。とても穏やかな、優しい気持ちになれる。
「少し、暑くなってきましたね」
「そう? では、近くの木陰で一緒に休もうか? きっと涼しい風が吹いてくると思うよ」
ニコッと笑いかけてくれる。その笑顔に、私も答え、笑顔になる。
(終わり良ければって、よく言うけれど)
色々と大変だった文化交流会一日目は、最後こんなに素敵な花園に勇気づけられ、穏やかな気持ちで終わることが出来た。
「星様のおかげです」
三日月は聞こえないくらい小さな声で、そう呟いた。
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